米中間選挙に向けた左右2つの「世論調査」

米国の連邦議会と大統領の任期は4年なので、議会の中間選挙も4年毎だ。憲法修正第12条で11月の第一月曜に翌日と定められている投票日は、今年は11月3日で、すでに3カ月を切った。今年は下院の全435議席、上院100議席の3分の1に当たる35議席、39の州知事ポストが争われる。

一般に中間選挙は与党に不利とされ、下院では過去8回中与党が6回負けている。が、上院は今年の改選が共和党21-22議席に対し民主党+無所属13-14議席であるように、前回結果に伴う改選数の多寡が影響する。改選数の多い党は更に議席を増やし辛いので、下院ほど明確には勝ち負けを判断し難い。

ここへ来て報じられ始めた様々な機関の世論調査では、総じてトランプ大統領の支持率が低い、共和党は負ける、といった結果を示すものが多い。そんな中トランプ氏は3日、Truth Socialにこう書きこんだ。

私の本当の支持率は、フェイクニュースメディアが捏造したものではなく、これまでで最高の数字だ。史上最大の減税と雇用創出、世界史上最大の米国への海外からの投資、完全に安全な国境、ベネズエラでの大勝利、イランの非核化、世界中での比類なき尊敬と成功、その他多くのことを考えれば、当然のことだ。

彼がここに成果として掲げた5項目は、筆者のような米国watcherには紛れもない事実に見える。が、報道各社の高市内閣支持率に見るように、調査の対象者・方法・時期や質問の仕方などによって各社の世論調査結果に10ポイント以上も差が出ること少なくない。つまり鵜呑みにはできないのである。

そこで米国の2つの世論調査結果を紹介する。一つは『NewsWeek』日本版が8月3日に掲載した、「Civiqs」が25年1月から7月30日までの登録有権者を対象とするオンライン調査、他は『Newsmax』が8月1日に報じた、「McLaughlin」が7月15-21日に「投票する可能性のある有権者1,000人」に行った調査だ。

先に述べておくと「Civiqs」は民主党や進歩派を支持するグループブログとインターネットフォーラムである「Daily Kos」の創設者Markos Moulitsasが、18年3月に設立したオンライン世論調査とデータ分析の会社であり、一方、「McLaughlin」のJohnとJimの兄弟は長年の親トランプ世論調査員である。

「Civiqs」調査

この調査では、「トランプ2.0」の25年1月20日から26年7月30日までの12万件超の回答を分析した結果、トランプ氏が24年の大統領選で民主党のハリス候補に10ポイント以上の差をつけて勝利した州のうち、11州で支持率が不支持率を下回っている。内訳は以下のようだ。

  • アラスカ州:▲14ポイント(支持40%・不支持54%)
  • フロリダ州:▲12ポイント(支持42%・不支持54%)
  • アイオワ州:▲14ポイント(支持44%・不支持49%)
  • ケンタッキー州:▲3ポイント(支持39%・不支持53%)
  • ルイジアナ州:▲4ポイント(支持45%・不支持49%)
  • ミズーリ州:▲7ポイント(支持44%・不支持51%)
  • ミシシッピ州:▲1ポイント(支持47%・不支持48%)
  • ネブラスカ州:▲3ポイント(支持45%・不支持48%)
  • オハイオ州:▲13ポイント(支持40%・不支持53%)
  • サウスカロライナ州:▲9ポイント(支持42%・不支持51%)
  • テキサス州:▲13ポイント(支持40%・不支持54%)

またトランプ氏は、24年大統領選で勝利した7つの激戦州すべてで不支持が上回っている。

  • アリゾナ州:▲12ポイント(支持42%・不支持53%)
  • ジョージア州:▲22ポイント(支持36%・不支持58%)
  • ミシガン州:▲21ポイント(支持37%・不支持58%)
  • ネバダ州:▲21ポイント(支持37%・不支持58%)
  • ノースカロライナ州:▲15ポイント(支持40%・不支持55%)
  • ペンシルベニア州:▲18ポイント(支持38%・不支持56%)
  • ウィスコンシン州:▲16ポイント(支持40%・不支持56%)

ここで、「Civiqs」のオンライン調査は「トランプ2.0就任以降の回答12万超」としているが、上記の数字が在院期間1年半の何時のタイミングのものなのか、あるいはどういう質問をした結果の回答なのかといった辺りの詳細が書かれておらず、結果の評価がし辛い。

「McLaughlin」調査

他方、「McLaughlin」が7月半ばに行った調査は、「中間選挙に投票する」と答えた有権者1,000人が対象なのでタイミングと対象者が明確であり、その設問もまたユニークだ。即ち、投票する候補者が共和党員か民主党員かではなく、自由市場資本主義を支持する共和党候補を選ぶか、大きな政府による社会主義を支持する民主党候補を選ぶかを問うたのである。

結果は驚くべきもので、一般にはこの中間選挙が接戦または民主党有利といわれている状況から、「共和党候補を選ぶ」が49%対36%という圧倒的な優位に立った。つまり、米国の有権者の多くが、大きな政府による社会主義と定義される政治には、はるかに消極的であると結果となった。

調査対象者のカテゴリー別の結果の変化も以下の通り興味深い。

  • 無党派層:資本主義候補40% vs. 社会主義候補31%
  • 穏健派層:37ポイント多かった民主党支持が6ポイントに減少し、31ポイントが共和党支持へ
  • 女性層:18ポイント多かった民主党支持が1ポイントに減少し、17ポイントが共和党支持へ
  • ヒスパニック系:18ポイント多かった民主党支持がほぼ互角になり、18ポイントの共和党支持へ
  • 55歳未満の有権者:僅かに民主党支持が多かったものが、共和党支持が7ポイント上回る
  • 既婚有権者:有利だった共和党のリードが、57%対30%に拡大
  • アフリカ系:民主党への支持は著しく低下し、共和党への支持が12ポイント増加し

有権者の志向について調査は、51%が経済成長を加速させるために議会が追加の減税措置を講じることを望む一方、最近の減税措置で十分だと考えているのは僅か26%とし、また現在22%-24%の所得税を支払っている中所得層の所得税率を12%に引き下げることに賛成する者は68%に上るとする。

有権者の62%は、物価上昇を理由に納税者が不利益を被らないよう、キャピタルゲイン税をインフレ率に連動させることを支持している。また60%が、中間層への減税、無駄遣いや不正の削減、市民権証明や有権者身分証明書の提示義務化(SAVE法)を支持している。

また有権者の多くは、高齢者が自宅を売却することを促し、若い家族向けの住宅供給を増やすために、住宅所有者に対する譲渡所得税の免除額を引き上げる案を強く支持している。

国家安全保障でも72%が、イランがホルムズ海峡を通る船舶の航行を妨害、攻撃、機雷敷設、または恐喝することを決して許してはならないという意見に賛成しており、また61%はイランが核兵器を保有して米国民の生命を脅かすことがないよう、米国が任務を完遂しなければならないと考えている。

更に注目すべきは、有権者の13%がトランプ氏を個人的には支持していないものの、彼の政策の多くを支持していると答えている点だ。この辺りの記述は、米国の左派メディアの翻訳機関に過ぎない日本のオールドメディアを日ごろ見聞きしている者には意外なのではなかろうか。

つまり、「McLaughlin」調査は、有権者が選択肢を自由市場資本主義と巨大政府社会主義の選択に置く場合、劇的な変化が予想し得ると述べる。そしてそれを左右する上記7つの層の有権者は、単に政党名を理由に民主党を拒否しているのではなく、政府の肥大化、増税、社会主義といった政策と結びついた政策を拒否していると結論する。

この結論は、冒頭で紹介したトランプ氏の投稿と符合する。16年の大統領選でも[Trafalgar Group」が「トランプ氏に投票しそうな人は周りにいるか?」との、「隠れトランプ」にフォーカスした質問によってトランプ当選を正確に予測した。質問の内容こそ世論調査の肝である。

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