北朝鮮、ロシアへミサイル部隊を派遣

戦争研究所(ISW)によると、ロシアが5日夜に発射した28発のミサイルに対し、ウクライナ軍は1発も迎撃することができなかった。ロシアは、ウクライナの弾道ミサイル迎撃弾の備蓄が枯渇している状況を知っている。ロシア軍が夜間に発射したミサイルはすべて、弾道ミサイル、あるいは弾道軌道を描いて飛来するミサイルであり、これらを迎撃可能なのは米国製の「パトリオット」システムや同等のシステムに限られるからだ。

「軍事同盟」を宣言したプーチン大統領と金正恩総書記、平壌で、2024年6月19日、クレムリン公式サイトから

ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、主に中東での紛争の影響により、2026年の初め以降、ウクライナが受け取る弾道ミサイル迎撃弾の数が3分の1に減少していると指摘した。ロシアは2026年7月、ウクライナに対して過去最多のミサイルを発射した。ロシア軍はここ数週間、ドローン攻撃の回数を減らす一方、ミサイル攻撃をより重視する作戦を展開しているのだ。

ところで、ロイター通信によると、北朝鮮は約90名からなるミサイル部隊の展開を開始し、ウクライナ攻撃用として120発の弾道ミサイルを移送する準備を進めている。ロシアは同部隊を自国の第112ミサイル旅団に編入し、ウクライナ攻撃用に最大120発の弾道ミサイルと6基の発射装置を配備する計画という。北朝鮮はすでに、KN-23およびKN-24ミサイル40発からなる新たな一団を納入済みだ。

ウクライナの諜報当局者は北朝鮮のミサイル部隊がロシア西部へ展開中であることを確認している。ウクライナ軍事情報局のアンドリー・チェルニャク氏は5日、「北のミサイル部隊はウクライナ攻撃用に120発の弾道ミサイルと6基の発射装置を装備している可能性がある」と述べている。

北朝鮮は2022年のウクライナ侵攻以来、ロシアの緊密な軍事同盟国だ。両国は2024年6月、安全保障・防衛分野などを網羅した「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、約12000人の兵士をロシア軍を支援するためにウクライナに派遣するなど、ロ朝両国が軍事同盟の関係を深めてきた。ウクライナ側の報告によると、北朝鮮はすでに数百万発の砲弾を供給し、1万4000人の兵士をロシアのクルスク地域に派遣している。

ウクライナのシビハ外相は「モスクワと平壌の協力関係は、ウクライナのみならずインド太平洋地域にとっても直接的な脅威となっている。国際社会は、より強力な制裁圧力と、当該政権の完全な孤立化をもって対応すべきだ」と主張している。

ISWによると、アナリストらは、「ロシアと北朝鮮は、ウクライナの限られた弾道ミサイル迎撃用弾薬を消耗させつつ、北朝鮮製ミサイルの性能を試験できる」と指摘する。ISWが指摘するように、ロシアによる北朝鮮製ミサイルの使用は、北朝鮮にとって実戦試験を行い、ミサイル改良のためのデータを収集できる機会ともなる。実戦での試験やフィードバックを通じてミサイルの性能を向上させるチャンスというわけだ。

なお、北朝鮮はロシアによるウクライナ侵攻への関与を強めてきた。北朝鮮は2024年10月下旬にクルスク州へ歩兵、工兵、建設作業員を派遣したが、今回新たにミサイル運用要員を派遣したことは注目に値する。

派遣されるミサイル運用要員は、クルスク州での戦闘や運用を通じて北朝鮮兵士が既に得たものとは異なる、新たな戦闘の教訓を本国に持ち帰ることになる。北朝鮮がなぜ今、ミサイル運用要員とミサイルをロシアに派遣することを選んだのかは不明だが、ロシアと北朝鮮は、ウクライナの弾道ミサイル迎撃弾の在庫が枯渇している現状に乗じ、北朝鮮製ミサイルの性能を試験しようとしている可能性がある。

『北朝鮮製ミサイルの命中度が向上した』(2025年2月8日参考)で報告済みだが、ウクライナでの戦闘で使われている北朝鮮製ミサイルがより正確に命中するようになっている、という情報がある。北朝鮮の部隊がウクライナに派遣された当初、西側軍事専門家は北製ミサイルの性能の悪さを嘲笑していたが、2025年に入ってミサイルの命中度が劇的に向上したというのだ。

北朝鮮製ミサイルの命中度が向上した
ドイツ民間ニュース専門局nTVによると、ウクライナでの戦闘で使われている北朝鮮製ミサイルが突然、より正確に命中するようになったという。北朝鮮の部隊がウクライナに派遣された当初、西側軍事専門家は北製ミサイルの性能の悪さを嘲笑していたが、今年に...

北のミサイル性能の向上について、北側のミサイル専門家がロシア軍からフィールドバックを受けていること、北製ミサイルにロシア製の優れたナビゲーション システムまたは改良されたステアリング機構が装備された可能性、また、ロシアは制御システム用の改良されたコンポーネントを提供したことなどが考えられている。

いずれにしても、ロシアの兵器庫に北朝鮮製ミサイルが加わることで、ロシアはS-400や「ツィルコン」ミサイルの在庫を消費することなく、近い将来ウクライナに対する弾道ミサイル攻撃を強化できるわけだ。

ちなみに、ウクライナの防衛関連情報源である「ミリタルニ(Militarnyi)」は2026年7月19日、ロシアが同年7月の最初の19日間だけで、「ツィルコン」ミサイルの年間生産計画量の最大3分の2を消費したと分析している。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年8月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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