
今年の西日本の猛暑は地球温暖化がなければ起こりえなかった、という報道があった。
西日本 7月中~下旬の気温は最高“温暖化なければ起こり得ず”

情報の発生源は「極端気象アトリビューションセンター」である。そのセンター自身がいくつかのメディア報道があったとまとめている。
では「地球温暖化がなければ起こりえなかった」とはどういうことか? 実際には、分析対象(西日本・東日本南部上空約1500メートル)において、平均で1.6℃気温が上がったことを、言い換えただけだ。
下図が、同センターの説明。現在の(温暖化した)気候条件では、気温分布は赤い線であり、今年の観測値はその高温側の裾の部分に位置する。
これが、もし「地球温暖化がなかりせば」、青い線の気温分布になるので、その場合は今年の観測値が発生する確率は極めて低く、グラフ上では殆どゼロになる(発表では0.006%となっている)。
したがって、今年の猛暑は「地球温暖化がなければ起こりえなかった」、ということだ。
だがこのやり方、いくつも問題がある※1)。
まず、単に1.6℃上がったということを、「地球温暖化がなければ起こりえなかった」と言い換えるのは針小棒大だ。
バスケットシューズで、平均として1cm余計に飛べるものを、「これまで飛べなかった大ジャンプが飛べる」と言って売ったら詐欺になるだろう。
ならばこの「地球温暖化がなければ起こりえなかった」というのも詐欺まがいだ※2)。
それから、この分析なるものは、全てシミュレーションに依存している。図で比較されているのも、シミュレーションによる現在の気候と、シミュレーションによる仮定の気候である。だがこのシミュレーション、本当に合っているのか?
今回分析対象となった上空1500メートルといった対流圏において、大抵の場合、シミュレーションによる気温上昇は、観測よりも速い。つまり温暖化しすぎのシミュレーションなのである※3)。
また今回の猛暑に関係がある海面温度についても、ほとんどのシミュレーションは過去において現実の2倍のスピードで温暖化する※4)。
つまり、シミュレーションは、大抵、過去をロクに再現できず、しかも暑くなりすぎる※5)。
そんなシミュレーションの結果を信じよというのだろうか?
なお今回のプレスリリースを見ても、シミュレーションに対する観測データによる検証は、一切、なされていない。自然科学において、こんな研究発表が許されてよいのだろうか?※6)
じつは以前、類似の研究で、シミュレーションを観測データで検証してみたら、全然合っていなかった。観測データと突き合わせると、シミュレーションのボロが沢山出てくるのである※7)。おそらく、今回もそうなのだろうと勘繰りたくなる。
平均気温が上がれば猛暑の気温もほぼ同じだけ上がる。「地球温暖化がなければ起こりえなかった」という大袈裟な研究発表や報道が言っているのはそれだけのことだ※8)。
最後にもう一つ。これは以前も書いたけれども、地球温暖化を止めるためとして日本が脱炭素しても、せいぜい0.006℃しか下がらないから、猛暑の気温もその程度しか下がらない。
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※1)杉山大志(訳)「気候変動のイベント・アトリビューション研究についての正しい理解方法」キヤノングローバル戦略研究所、2023年4月10日。/杉山大志(訳)「帰属研究は異常気象を正しく語っているか?」キヤノングローバル戦略研究所、2025年4月23日。
※2)杉山大志「熱波が30倍も起こり易くなったという気候詐欺のカラクリを教えます」キヤノングローバル戦略研究所、2025年3月6日。
※3)杉山大志「IPCC報告の論点⑫:モデルは大気の気温が熱すぎる」キヤノングローバル戦略研究所、2021年10月5日。
※4)杉山大志「気候モデルは海水も熱過ぎる」キヤノングローバル戦略研究所、2021年5月24日。
※5)杉山大志「IPCC報告の論点59:やはり過去を再現できない気候モデル」キヤノングローバル戦略研究所、2022年5月20日。/杉山大志「「トウモロコシが温暖化で被害」はモデルの中だけの話」キヤノングローバル戦略研究所、2023年6月29日。
※6)杉山大志「気象庁は気候危機だという印象操作を止めるべきだ」キヤノングローバル戦略研究所、2025年6月11日。
※7)杉山大志「【研究ノート】猛暑と豪雨のイベントアトリビューション研究について」キヤノングローバル戦略研究所、2020年11月6日。
※8)杉山大志(訳)「気候変動で熱波が30倍という欺瞞」キヤノングローバル戦略研究所、2024年9月26日。
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