2026年「ユニクロ置くだけレジ」がスーパーで開始

黒坂岳央です。

スーパーのセルフレジについて、以前筆者はトライアル式が現時点で最強という持論を述べたことがある。

その限界を超える仕組みが、いよいよスーパーにも来るかもしれない。そんな記事が日経新聞から8月7日に出た。同紙はアスタリスクがスーパーマーケット向けに「ユニクロ式」のセルフレジを開発し、2026年内にも実店舗での運用を目指していると報じた。


筆者はユニクロをよく利用するが、あの「置くだけレジ」の体験は最初に使った時に衝撃を受けた。商品を一つひとつバーコードにかざす必要がない。カゴをまとめて台に置けば、複数の商品を一括で認識してくれる。あとは会計を済ませるだけだ。

これがスーパーにも来るなら、トライアル式を超える「最強のレジ」になる可能性がある。持論を述べたい。

なぜユニクロ式レジは普及しなかった?

ユニクロの「置くだけレジ」は、単なる画像認識やAIによる商品判別ではない。商品一つひとつにRFIDという小さなICタグを付け、レジのアンテナで複数の商品を一括読み取りしている。だからこそ一個ずつスキャンする必要がない。

ならばスーパーの商品にも同じタグを付ければいい。誰もがそう考えるが、実際は簡単ではない。最大の壁は、スーパーでは商品単価が低く、商品数も膨大なことだ。

数千円のTシャツにRFIDタグを付けても、価格に占めるタグのコストは小さい。だがスーパーには100円、200円の商品が大量に並ぶ。しかもタグは使い捨てが基本で、貼り替えのたびにコストが発生する。

日経新聞によれば、年間売上高が数十億円規模のスーパーでは、RFIDタグだけで年間数千万円の費用がかかるとアスタリスクは試算している。これは売上高の1〜2%に相当する金額であり、薄利多売のスーパーにとって軽くはない。既存店舗の場合、全商品にタグを貼り付けるだけで約2カ月かかるという。

さらにスーパーには、ユニクロにはない難しさがある。商品の種類が圧倒的に多く、しかも液体、金属、生鮮食品などRFIDの読み取り条件が異なるものが一つのカゴに混在する。数十点を購入する客も珍しくなく、読み漏れが一つでもあれば「本当に全部読み取れたのか」という新たな不安が生まれる。

コスト高でも普及するか

ここまで読めば誰もが「コストが高すぎて結局普及しないのでは」という反論が浮かぶはずだ。確かにスーパーは薄利多売ビジネス、コスト高となれば商品の価格転嫁せざるを得ず、その結果、客足が離れてライバル店に流れたら本末転倒である。

そもそも論として、衣料品と食品では利益率が違う。だから単純比較でコストの重さを論じても意味がない。重要なのは、比較対象がRFIDタグの単価ではなく、人件費という不可逆トレンドだという点だ。

日本の小売業界はもう「安い人手を確保できる」時代には戻らない。いや、地方によっては高い時給の提示をしても人員の確保が難しい。レジ係の確保自体が経営のボトルネックになっている店舗は増える一方であり、この流れが逆転する見込みは薄い。

加えて、RFID方式は万引き対策としても機能する。全国万引犯罪防止機構が2023〜24年に実施したアンケートでは、セルフレジ導入後に万引き被害が「増えた」と回答した事業者が25%いた一方、「減った」と回答した事業者は0%だった。客が自分で商品を登録する構造そのものに欠陥がある以上、機械が自動で読み取るRFID方式はこの構造的欠陥を根本から潰せる。

つまりRFIDタグの導入コストは、人件費削減と万引きロス削減という二つの不可逆コストと相殺して評価すべきものだ。数年単位で見れば正当化される時期に入ったと筆者は見ている。

いよいよ今年、ユニクロ式レジが来る

アスタリスクが開発したシステムでは、買い物カゴを専用スペースに置くだけで、カゴ内のRFIDタグをアンテナが一括読み取る。日経新聞の記事では、弁当やビール、生鮮食品、スナック菓子など十数点を入れたカゴを置くと、瞬時に「12」と画面に表示されるデモが紹介されている。

すでに大手スーパーマーケットチェーンへの提案も始まっており、早ければ2026年中に実店舗での運用例が出るという。

もちろん、明日から全国のスーパーが一斉にユニクロ式に切り替わるわけではない。読み取り精度や貼り付け作業の人手確保など、実務上の課題はまだ残る。

それでも筆者が今回の報道に可能性を感じたのは、単にレジが速くなるからではない。「客が商品を一つずつ機械に読み取らせる」という、これまで当たり前だった作業そのものが消える可能性が出てきたからだ。

アスタリスクの構想はさらに先を見ている。買い物カゴそのものにアンテナを組み込み、商品を入れた瞬間に読み取る方式や、商品棚にアンテナを設置して欠品や在庫状況をリアルタイムで自動把握する仕組みだ。そうなれば変わるのはレジだけではない。商品の認識から決済、在庫管理まで、スーパーの業務全体が自動化される。

なお、レジ自動化にはRFID以外にカメラやセンサーを使う方式もある。タグ代が不要な分、コスト構造は異なるが、今のところ食品スーパーのように商品が多種多様な環境では、RFIDの一括識別精度に軍配が上がるというのが筆者の見立てだ。どちらが最終的に主流になるかは、未来的かどうかではなく、どの方式が最も安く正確に少ない人手で運用できるかで決まる。

人手不足が解消する見込みが薄い以上、レジ自動化は「便利になる」という話にとどまらない。人手をレジ打ちに大量投下し続けるより、限られた人員を他産業に振り向けられる方が、日本経済全体で見ても合理的な選択だ。

ユニクロ式レジがスーパーに定着するかどうかは、この構造的な必然性が実際のコストを上回るかにかかっている。

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Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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