ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、キエフ・ペチェルスカ・ラヴラ(キーウ・ペチェールシク大修道院)創建975周年記念で演説を行った。ウクライナの首都キーウにあるキリスト教正教会の聖地、キーウ・ペチェールシク大修道院は1051年の創建から今年で975年を迎えた。同大統領は「今日は祝日だ。私たちはラブラの975周年を記念する。とても象徴的な意味を持っている。ロシアのシャヘド攻撃の後、私たちのラヴラが火災から救われたとき、私たちは皆、何が救われてたのか、何が危険にさらされているのかを実感したはずだ。それは単なる建物や壁の問題ではない。ロシアの文化破壊に屈しないウクライナの精神的・文化的アイデンティティの象徴だ」と強調している。
大修道院はユネスコの世界遺産(危機遺産)に登録されているが、2026年6月にロシア軍の無人機・ミサイル攻撃により敷地内のウスペンスキー大聖堂(生神女就寝大聖堂)の屋根などが炎上する被害を受けた。ゼレンスキー大統領や国際機関(ユネスコ事務局長など)が参列し、修道院の歴史を伝える「国家の精神的至宝」と題した特別展が開幕された。また、1000周年に向けた「共同の鐘つき」という新たな伝統がスタートした。ゼレンスキー氏によれば、この975周年記念は、単なる歴史の節目にとどまらず、ウクライナ独自の歴史的ルーツ(キーウ・ルーシの伝統)を証明し、戦火から国を挙げた文化遺産を保護・アピールするための極めて重要な契機というのだ。

キエフ・ペチェルスク修道院975周年記念行事、2026年8月15日、ウクライナ大統領府公式サイトから
ところで、キーウからの情報によると、ロシア軍は16日未明にかけて、再びウクライナの首都キーウを弾道ミサイルで攻撃した。ウクライナの他の地域でも新たな攻撃が行われ、当局によると死傷者が出ている。ゼレンスキー大統領によると、同大統領の出身地である工業都市クリヴィー・リフへの弾道ミサイルとドローンによる攻撃で、2人が死亡した。また、北東部のスームィでも1人の死亡が報告されている。
ウクライナ当局によると、ザポリージャ州でもロシアのミサイル攻撃により2人が死亡した。キーウの当局は夜間に空襲警報を発令し、弾道ミサイルの脅威を警告した。キーウのヴィタリー・クリチコ市長は、住民に対し、避難所にとどまるよう呼びかけた。市内の2つの地区で火災が報告され、消防隊が出動した。3人が負傷。キーウ州のティムール・トカチェンコ知事は、周辺地域でのドローン攻撃により、子供1人を含むさらに3人が負傷したと明らかにした。ウクライナ空軍はまた、テレグラムを通じて、クリヴィー・リフに加え、工業都市クレメンチュクを含む国内の他の地域でも、ミサイル、滑空爆弾、ドローンによる攻撃があったと報告している。
開戦から4年半が経過し、ウクライナ軍のミサイル防衛用弾薬が不足する中、ロシアは最近、キーウやその他の都市に対する弾道ミサイル攻撃を強化している。米国製の「パトリオット」システムは、弾道ミサイルに対する最も有効な防衛手段だが、ウクライナ軍はこのシステムをいくつか保有しているが、迎撃ミサ弾道ミサイル迎撃弾の不足に悩まされている。
戦争研究所(ISW)によると、ロシアが5日夜に発射した28発のミサイルに対し、ウクライナ軍は1発も迎撃することができなかった。ロシアは、ウクライナの弾道ミサイル迎撃弾の備蓄が枯渇している状況を知っている。ロシア軍が夜間に発射したミサイルはすべて、弾道ミサイル、あるいは弾道軌道を描いて飛来するミサイルであり、これらを迎撃可能なのは米国製の「パトリオット」システムや同等のシステムに限られるからだ。
ゼレンスキー大統領によると、主に中東での紛争の影響により、2026年の初め以降、ウクライナが受け取る弾道ミサイル迎撃弾の数が3分の1に減少しているという。ロシアは2026年7月、ウクライナに対して過去最多のミサイルを発射した。

ゼレンスキー大統領 ウクライナ政府HPより
「キーウ・インディペンデント」紙は軍のデータを引用し、7月に発射された195発の弾道ミサイルのうち、迎撃に成功したのはわずか29発だったと報じた。また、40発は標的に命中しなかった。国防省は「7月、ウクライナの防空部隊は、弾道ミサイルによるテロ攻撃に対抗するための迎撃ミサイルが極端に不足する中で活動していた」と述べている。ウクライナは数ヶ月にわたり、米国から供与された「パトリオット」防空システム用の迎撃ミサイル不足に悩まされてきた。これは同国が保有する兵器の中で、ロシアの弾道ミサイルを撃墜できる唯一のものだ。ロシアは今年に入り前線での進撃が著しく鈍化する一方で、迎撃が困難なこれらのミサイルを用いてキーウやその他の都市への攻撃を強化している。ロシアによる全面侵攻の開始以来、ウクライナにとって大きな課題は防空ミサイルの確保だ。そのため、米国製ミサイル「パトリオット」の国内生産許可に対する期待は高まっていたが、依然不透明だ。
なお、ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、北朝鮮がロシアに3万~5万人を派兵することが決まったとの見方を示した。地元テレビによるインタビュー内容の一部をSNSに投稿した。ロイター通信によると、北朝鮮は約90名からなるミサイル部隊の展開を開始し、ウクライナ攻撃用として120発の弾道ミサイルを移送する準備を進めている。ロシアは同部隊を自国の第112ミサイル旅団に編入し、ウクライナ攻撃用に最大120発の弾道ミサイルと6基の発射装置を配備する計画という。北朝鮮は、KN-23およびKN-24ミサイル40発からなる新たな一団を納入済みだ。
ちなみに、ウクライナ軍の兵力は約88万人だが、ウクライナにも約1万6000人の外国人兵士がキーウ側で戦っている。公式統計によると、ロシアの侵略戦争に対する防衛戦において、ウクライナは72カ国から集まった1万6000人弱の外国人の支援を受けている。外国人兵士の約40%が中南米諸国の出身者で占められている。ウクライナで戦う外交人兵士は主に自国の軍隊で戦闘経験を積んだ元軍人が多く、経済的な動機(月給約3000~4000ドル、前線手当等で最大約7000ドル)から志願するケースが目立つ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年8月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。







コメント