スパイ天国の日本にインテリジェンスは根付くか?

日本はスパイ天国とされてきた中でこれはまずいぞ、という機運は時間をかけながらも認識されてきたと考えています。スパイ論議を20年も前にすれば左派から猛烈な糾弾があり、挙句の果てに特高警察まで引き合いに出し、「あの時代に戻るのか」と。左派のすさまじいばかりの想像力ですが、最近の中国も日本のセキュリティ対策強化や保守的な展開に対して第二次大戦の反省がなっていない、と好き勝手なプロパガンダ放言し放題であります。

中国は戦後、歴史的なクラックとなるような文化大革命や天安門事件、香港民主化運動弾圧など人民の思想を共産党の独裁化、支配下に置くためならばどれだけの犠牲を払っても「我が国のことに口を出すな」であとは大国理論で押し通します。その点で中国の理屈は破綻しています。日本の左派の理論も古い考えに執着し、時代の変化や世界情勢をくみ取らない点において「お花畑」だと考えています。

その点で高市氏がインテリジェンスの重要性を意識し、旧態の内閣調査室を変えて、国家情報会議を作り、7月31日から国家情報局が発足したわけです。これは重要な一歩でありますが、形から身のあるものにどう変えていくか、これが本当の意味で最も重要なところかと思います。

先般、相手は明かせないですが、インテリジェンス関係の話をさせていただきました。思うのは海外における情報網の欠如であります。かつて、カナダで南京事変の記念日制定に大きく傾きかけた際、中国のインテリジェンスは当地やアメリカに留学している学生などを活用し、運動を加速させたことがあります。多くの若者たちは前後関係や背景すらわからずに言われたとおりにするという無知の極みのような展開をしたのですが、それでも動員力という点では目を見張るものがあったのです。

私がスパイものに興味がありすぎるからかもしれませんが、情報はあらゆるところにあり、それをパズルを組み合わせるようにしていくためにはパズルのピースを持ってくるヒューミントには一定の意味があります。ただ近年はシギント(インターネットや電話、無線、レーダー波など技術的解析を中心とする情報収集)にシフトしていますが、それは必ずしも正しくなく、ヒューミントとシギントがうまくバランスをとることが重要であります。

例えば日本の在外公館に警察出身の方が警備対策とか政務担当という名目で出向いています。その数、世界に50-60人規模だと思います。警察出身者は日系社会とのつながりすら積極的に持ちませんから、その存在すら知られていないケースが殆どです。とはいえ、逆にコミュニティの情報を取れないで損をしていることもあるのです。このあたりは難しいところですね。

第二次大戦の頃、ドイツ駐在武官に大島浩という方がいました。歴史の教科書にも出てくるかもしれません。大島氏は武官として情報収集を目的に活動していたのですが、ヒットラーに会える男としても知られており、彼の情報収集能力は高かったとされます。

大島浩 Wikipediaより

ただし、私は彼が正しい情報を掴んだのか、という点は怪しいと思うのです。情報を大島氏に漏洩する側も計算高いのです。「この情報を漏らせば日本側はこう動くだろう」という先読みはしています。ところが当時は大島氏だけではなく、多くの外交官がありのままの情報をありのままに伝えることにより取捨選択ができていないかったことはあると思います。つまりスパイがスパイに騙されるのです。騙しあいといってもよいでしょう。

その上、大島氏はそれでも優秀だったとされますが、彼がせっせと日本に送っていた情報は全部アメリカのマジックという暗号解読の手段で全部読み取られており、大島氏のインテリジェンス能力は敵方に情報を流すという間抜けな結果になってしまっています。

日本国内のインテリジェンスは警察が実行力と情報収集能力を含め、他の情報ソース(法務、外務、自衛隊)を圧倒しています。警察ドラマはたいがいが刑事もの。ところが警察組織は刑事警察と警備警察の2大組織の融合であり、警備警察は一般社会にあまりにも知られていないのです。つまり日本にインテリジェンスの基盤は当然あり、それがうまく機能しています。近年、犯罪者が全国どこに逃亡してもあっさり捕まるのも警備警察の力による部分も大きいのです。

よって高市氏の今回の努力は無から有を作り出したというより、水面下でもぞもぞ動いていたものをもうすこし形あるものにして、水面上に引き上げたということでしょう。高市氏はファイブアイズと称する5か国のインテリジェンスに加わり、シックスアイズの構成国になりたいと願望を持っているようです。ただ、日経によると英国MI6前長官がやんわりとファイブアイズに入ることが重要ではないと意見しています。

高市首相 首相官邸HPより

個人的には日本のインテリジェンスはファイブアイズの足元にも及ばないレベルにあり、情報の縦割りもあり、それが共有されにくい問題点もあります。そのあたりを解決しなければ形だけトップグループ入りしても意味はないと思います。まずは実務的に動ける組織と動員力、更に情報精度をどう上げるか、このあたりからの問題ではないかと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年8月17日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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