「金利のある世界」が本格的に戻ってきた。日本銀行は政策金利を1.0%に引き上げ、長期金利は2.93%という30年ぶりの水準になった。
これまでの日本企業にとって「金利」は、ほとんど無視してもいいコストだったが、その時代は終わった。金利上昇が続けば、これまで超低金利によって延命されてきたゾンビ企業の淘汰がいよいよ本格化する。

日本にはまだ21万社の「ゾンビ企業」がある
帝国データバンクによると、2024年度のゾンビ企業は推計約21万社、全企業に占める割合は14.3%だった。
ここでいうゾンビ企業とは、単に赤字企業という意味ではない。BIS(国際決済銀行)の基準にならい、「3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ設立10年以上」の企業を指す。
つまり、本業などで稼いだ利益だけでは利息すら十分に払えない状態が3年以上続いている企業である。しかも、ゾンビ企業の17.2%は経営破綻の危機にあるとされる。(TDB)
ゼロ金利なら、こうした企業でも銀行が融資を借り換え続けることで生き残ることができたが、金利が3%以上に上がると、話は変わってくる。
0.5%の金利上昇でも企業には重い
帝国データバンクが約10万社を分析したところ、2024年度の平均借入金利は1.20%だった。この金利が0.25%上昇すると、1社当たりの年間利息負担は平均約64万円増える。0.5%上昇なら約128万円増える計算になる。
さらに企業へのアンケートでは、金利上昇について「マイナス影響の方が大きい」と答えた企業が44.3%に達した。
もちろん、年間100万円程度なら大企業にとって問題にならないが、問題はもともと利払い能力がほとんどない会社である。
営業利益1000万円、利払い1000万円という会社の金利負担が1200万円になれば、一気に資金繰りが苦しくなる。さらに現在の中小企業は、人件費、原材料費、電気代などの上昇にも直面している。最後の一押しになるのが金利なのだ。
倒産はすでに増えている
実際、企業倒産は増加している。帝国データバンクによると、2026年上半期の企業倒産は5335件で前年同期比6.6%増となり、4年連続で前年を上回った。上半期で5000件を超えるのも2年連続である。

帝国データバンク
2025年通年でも東京商工リサーチの集計で1万300件と、12年ぶりの高水準だった。
もちろん、現在の倒産増加をすべて金利のせいにすることはできない。物価高、人手不足、最低賃金上昇、円安など複数の要因が重なっているが、そこへ金利上昇が加わったことで、これまで「何とか生き残っていた会社」が持ちこたえられなくなっている。
企業の救済は正しいのか
企業倒産というと、一般には悪いニュースとして報道される。役所は企業を救済しようと補助金や融資をおこなう。
しかし利益を生み出せない企業が低金利と銀行融資によって何年も存続すると、そこで人材、土地、資本が固定される。特に今の日本では人手不足が深刻である。
生産性の低い会社が労働者を抱え続ける一方、生産性の高い企業が人を採用できないのであれば、経済全体としては非効率だ。これは1990年代以降、日本経済が長く抱えてきた問題でもある。
政府の中小企業政策を企業の救済から、M&Aなどを通じて生産性の高い企業へ経営資源を移す方向に転換するときだ。
金利は企業を選別する
ゼロ金利には大きな副作用があった。優良企業も問題企業も、ほとんど同じような低金利で資金を調達できたからだ。
本来、金利とは資金の価格であり、同時に企業のリスクを測る価格でもある。収益力が高く、成長性のある会社には安い資金が集まる。一方、借金を返せない会社には高い金利が要求され、最終的には市場から退出する。
それが資本主義の仕組みである。日本では長すぎる金融緩和によって、この選別機能が弱まっていた。
政策金利1%は、歴史的に見れば決して高金利ではない。それでも苦しくなる企業が大量に存在するという事実の方が、日本経済の異常な低金利依存を物語っている。
今後の日銀の利上げによって倒産件数はさらに増えるかもしれない。しかし、それを理由に再びゼロ金利へ戻れば、問題企業をもう一度延命するだけになる。
金利上昇は企業にとって痛みを伴う。しかし同時に、日本経済が30年間先送りしてきた企業の新陳代謝を進めるきっかけにもなる。
「金利のある世界」とは、単に住宅ローンや国債利回りが上がる世界ではない。稼げる企業と稼げない企業が、再び市場によって選別される世界なのだ。







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