黒坂岳央です。
以前、資産1億円ではFIREできないという記事を書いたが、最近はさらにその感覚が強まった。
というのも、近頃の東京の物価、特に住宅価格を見ていると、1億円どころか2億円、いや理想を言えば3億円くらいなければ、安心してFIREするのは難しいのではないかと思えてくるからだ。
世間では「資産〇〇万円からFIREしろ」みたいな意見が多いが、FIREに必要な資産額は、住む場所によって全く違う。単身者なら東京と地方でFIREの難易度はおおむね2倍、いや子持ち世帯なら3倍程度違ってもおかしくない。
筆者はこれまで東京を含め、さまざまな場所で生活してきた。今は仕事はしているがファットFIREできる立場であり、この経験から持論を述べたい。

東京と地方で必要資産に大きな差
東京と地方で、食料品や日用品など「全ての価格」が何倍も違うわけではない。
むしろ現在の日本では、ネット通販やチェーン店の普及、ライバル店との競争激化でこうした日常品の価格差はかなり小さくなっている。東京のドラッグストアにいけば、地方とそれほど価格差がなく、かなり安く日用品が揃う店も多い。
では冒頭に述べた、東京と地方ではFIREに必要な資産に大きな差が生まれる理由はなにか?それは生活費を構成するすべての項目が高いわけではなく、「金額の大きいもの」「継続的に支払うもの」「生活水準を左右するもの」の価格差が極端だからである。
特に差が大きいのが、住宅、高級品、教育と見栄消費だ。つまり、東京の物価そのものが地方の2倍、3倍なのではなく、「東京商品」が高額なのだ。だから「東京のスーパーは地方とそこまで変わらない」は反論はズレている。
FIREでは、この差がそのまま資産額の差になる。単身者は地方の2倍、子持ちは3倍必要になるだろう。
家
まず圧倒的なのが住宅である。
東京、とりわけ23区では住宅価格が地方とは完全に別のゲームになっている。
総務省の消費者物価指数を見ると、一般的な物価上昇率は東京の住宅価格上昇を十分に説明できない。これは当然で土地には限りがあり、人気エリアにマンションを無限に供給することはできないからだ。さらに東京は日本国内だけでなく、海外からも人と資本が集まる。グローバル規模で取り合いが起きている。
その結果、平均的な物価上昇率とは比較にならないほど住宅価格が上昇する地域が生まれる。
すべての人が家無しに生きていけないことを考えると、FIREする上でこれは致命的な差だ。だから「〇〇万円あればFIREできるか」という質問に対しては、「どこに住むのか」で答えは変わる。
高級品
東京は高級品の品揃えが抜群の街だ。
高級ホテル、高級レストラン、バー、ブランドショップ、コンサート、イベント、レジャー、タクシーなど、金を使おうと思えばいくらでも使える。
もちろん地方にも高級店はある。しかし、東京との違いは選択肢の密度である。地方では「そもそも近所に高級消費ができない」ということがある。
東京では徒歩圏や電車圏に、高い店も、高いサービスも、大量に存在する。これはFIREした人間にとって意外に大きな問題である。
FIREの本質は「収入を最大化すること」ではなく、「資産から得られる収益の範囲内で生活すること」だからだ。
東京で高いホテル、高いレストラン、高い買い物になれると生活水準を下げるのは難しい。
教育費
子供がいる家庭になると、この差はさらに広がる。
東京には私立中学、高校、大学、進学塾、英語教育、各種スクール、習い事など、教育に金をかける選択肢が大量にある。
地方では、公立中学から公立高校へ進み、大学受験をするというルートが「普通」だが、東京では、親が中学受験をしたなら、子供も同じルートを想定する。筆者の親族は親が早稲田卒なのだが、子供の進路の話題で「早稲田中学を受験させたい」といっていた。こういう親は珍しくない。
英語教育も同じで、地方なら「英語を習わせる」だけでも十分に教育熱心に見えるかもしれないが東京では、英語、プログラミング、スポーツ、音楽、塾などを組み合わせて教育する家庭が珍しくない。サマースクールなどもある。
つまり、東京では教育に金をかけるための選択肢が多く、周囲も熱心な家庭が多い。これがFIREに必要な資産を押し上げる。
見栄消費
そして、東京と地方のFIRE難易度を考える上で、意外と大きいのが「見栄消費」である。さすがにいい年になれば自慢するために消費をする人は少数派になっていくが、ここでいう「見栄」は自慢をするコストというより、平均値になるためのボトムラインが高いという意味だ。
地方なら、普通の家に住み、普通の車に乗り、公立学校に子供を通わせていても違和感はない。だが、東京ではすぐ近くに自分より上の生活をしている人が大量にいる。すると自分の中でも普通の基準が上がる。
渋谷や原宿を歩くとみんな非常におしゃれで洗練された格好をしているが、あの中に毎日歩けば周囲と自分の差を感じるようになり、「さすがにもう少ししゃれた格好をしないと恥ずかしい」という感覚に誰でもなっていく。無理に背伸びしている感覚ではなく、マイナスを打ち消す感覚での見栄消費が起きるのだ。
◇
東京が高いのは「東京商品」が高いからだ。FIREしてただ生きるだけなら東京でも築古ボロワンルームに住めば不可能ではないが、消費が旺盛な街でそれは現実的ではない。結局、そうなると東京を楽しみたいという欲が生まれて1億円FIREでは難しいということになる。
東京でFIREを堪能し、育児もするなら3億円はないと不安になるだろう。
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「Z世代を甘やかすな」(著:黒坂岳央)







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