中国で毎年行われている秘密会議、北戴河会議もそろそろ終わる頃でしょう。相変わらず情報はほとんどないのですが、今年は特に漏れ聞こえる話が少ないようです。ただ、話の中心は人事ですので習近平氏の4期目に向けた絶対安全な人事策を練り、引き続き、汚職摘発と称して反対派の芽をつぶしていくのを継続するのでしょう。

トランプ大統領と習近平国家主席 2026年5月14日米中首脳会談 中国共产党新闻より 2026年5月
また外交も会議の話題になっているとみられ、秋に訪米してトランプ氏と会談する件、台湾の件、日本外交の件あたりが話題の中心になっているとみられます。外交については地球儀ベースでみると「トランプ氏より習近平氏の方がいいよね」という魔訶不思議な声が出ているのも事実です。アメリカのビュー リサーチ センターが7月に調査発表した世界36か国の印象調査で「中国がアメリカより良い」と答えたのが25か国に上るのです。もちろんこの調査をどこまで信用するか、また政治と好みは違うので一概にだからどうだとは言えないのですが、習近平氏は自ら動かず、相手を動かしそれに反応するというスタンスですので行動して自爆したトランプ氏との対比にも感じます。
さてその習近平氏は国内では就任当時から「汚職追放」でそれに伴う「粛清人事」を断行してきました。おかげで中国軍の幹部の数は過去最低にまで落ち込んでいます。例えば共産党幹部の処分対象者数は習氏がトップに着任した2013年は182千人でしたが2025年は983千人、今年も1-6月で412千人に達しています。この話、よく考える必要があります。もしも習氏の体制が素晴らしく、国内が一枚岩になっているなら処分対象者数は減るべきなのです。ところが年を追うごとに増えているということは幹部に不満分子がどんどん増えている状態にあるとも言えるのです。
では粛清人事は功をなすのでしょうか?
これについては好例があります。それが「スターリンの大粛清」という歴史に残る事件です。1930年代のソ連時代、スターリンは幹部から一般市民までとにかく粛清に次ぐ粛清を行います。第一段は共産党の浄化運動でピークの1933年には党員40万人を追放します。ついでいわゆる大テロルと称する大粛清が行われ1936年から38年頃にそのピークを迎えます。銃殺刑も10万人規模で行われたとされ、旧指導グループはことごとく追放し、新指導部に入れ替えられます。旧グループで残ったのはわずか3%とする話もあります。
スターリンがなぜそこまでやったか、様々な分析がありますが、私から見るとどちらかというと氏の病的性格(パラノイア)で極度の人間不信に陥っていたことが主因と考えています。で、その後どうなったかといえばスターリンの死去後、大反動が起き、ソ連共産党そのものの弱体化の原因の一つとなります。
私は大学時代にソ連の実態を勉強しにソ連に実見に行ったわけですが、いわゆる国民と共産党指導部との距離感は地上と宇宙ぐらいの感覚があり、地上にいる国民は全くやる気をなくし、怠惰で賄賂とウォッカを好み、何ら希望を見いだせない国民であふれかえったのです。多分、これは今のロシア政権でも根本的な変化はないと思います。独裁者は国民と政権から気力や夢や希望、生きるチカラという芯を抜き去るのでそう簡単に回復できないのです。
習近平氏の粛清人事がなすところは何を意味するかといえば自己権力の絶対化であって、共産党の絶対化には結びつかないのであります。つまり中国共産党であろうと何党であろうとトップが国民に色を付け、一種の洗脳をするのです。習氏が2013年にトップに就任してから中国の思想や政治的枠組み、更に国際関係や経済、社会の構造的で基本的指針を習近平色で固め、国際社会からデカップリングをし、フリーズするということなのです。これではスターリンの時と同じ轍です。習氏が何時までトップに君臨する気かわかりませんが、仮に第4期をやって辞めるとなれば都合20年間、中国の基本指針の改革を止めてしまうことになるのです。これは20年後に国民と共産党の間に大変なギャップが招じてしまい、大きな逆回転が生じやすくなるとも言えます。
事実、長期政権だった国々で政権交代が起きた時はまず、逆回転しますが、その後、落としどころが定まらず、政治は荒れ、国民は右往左往してきたのが現実です。
習近平氏を第二の毛沢東と称する人もいます。見方によってはそうかもしれません。毛氏は文化大革命を通じて大粛清をしたわけです。が、彼の死後、中国の民主化と開放路線が進んだのもまた事実。これは中国が世界の工場と化け、経済的成長を生んだ基盤となったわけです。
ならばいやな言い方かもしれませんが、習近平体制が終われば中国は経済大国になるのかもしれませんね。
習近平氏の粛清人事が強化されればされるほど巻き戻しの力はより蓄積され、それが開放されたとき、爆発的反動が生まれる、と私は考えています。これを確認できるのはどうやら最低でも今から6-7年後になりそうですが。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年8月19日の記事より転載させていただきました。







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