トランプがイランに「最大限の経済制裁」を発表:市場は「また始まったか」と冷ややか

トランプ米大統領が、イランに対する経済制裁を打ち出した。19日、SNSへの投稿で「これまでどの国に対しても行われたことのない、最も強力な経済作戦」を始めると宣言した。

だが威勢のいい言葉とは裏腹に、具体的にどの国や企業を対象とし、どのような制裁を発動するのかはまだ明らかになっていない。このため市場や専門家の間では「また最大限の制裁か」と冷ややかな見方も広がっている。

米軍によるイラン基地の爆撃(8月12日)

「史上最強」の経済制裁?

トランプ氏は今回の措置について、「前例のない規模の経済戦争と孤立」を実現すると強調した。狙いはイラン産原油の密輸や資金決済をさらに締め上げ、核問題などで譲歩を迫ることにある。

しかし、「前例がない」という表現には違和感がある。トランプ政権は2025年2月の時点ですでに、イランに対する「最大限の圧力」を正式に復活させ、イラン産原油の輸出をゼロに近づける方針を掲げていた。米財務省はタンカー、貿易会社、金融ネットワーク、暗号資産などを次々と制裁対象に指定している。

ロイターによれば、米政府がすでに制裁対象としたイラン関連の個人・企業などは1000を超える。つまり今回の「史上最強の経済作戦」は、まったく新しい政策というより、これまで続けてきた制裁をさらに拡大する宣言という側面が強い。

最大の問題は中国

制裁の実効性を左右する最大の存在が中国だ。Kplerのデータによれば、現在、海上輸送されるイラン産原油の8割以上を中国が購入している。米国がイラン経済を本当に締め上げようとすれば、中国の独立系製油所だけでなく、それらの取引を支える銀行や企業まで制裁しなければならない。

しかし、大手中国銀行にまで二次制裁を広げれば、今度は米中経済関係そのものが揺らぐ。これまで米国は、制裁対象となるタンカーやダミー会社を見つけては指定し、イラン側が新たな会社や船舶を用意するという「モグラたたき」を続けてきた。ロイターも、この方法には長期的な効果に限界があると指摘している。これが「また始まったか」と受け止められる最大の理由だろう。

今回はUAEが動いた

ただし、今回には従来と違う点もある。UAE(アラブ首長国連邦)が、イランとの貿易や金融取引を全面的に停止すると発表したことだ。UAE、とりわけドバイは長年、イランにとって世界経済とつながる重要な窓口だった。そのルートが本当に遮断されれば、イランにとって打撃は小さくない。

問題は、それをどこまで徹底できるかである。イランは長年の制裁を通じて、船籍変更、仲介企業、非公式金融ネットワークなどを使った制裁回避のノウハウを蓄積してきた。ドバイ経由の資金網を完全に遮断することも容易ではないとの指摘がある。

制裁を増やせばイランは譲歩するのか

問題は制裁の「数」ではない。イラン経済を苦しくすることと、イラン政府を米国の要求に従わせることは別問題だ。すでに厳しい制裁を受けながらも、イランは原油輸出を続け、ホルムズ海峡を交渉カードとして使い続けている。追加制裁だけでイランの交渉姿勢を変えられるのかについて、専門家からは懐疑的な見方が出ている。

トランプ氏は派手な言葉で「史上最強の経済作戦」を宣言した。しかし、本当にイランを追い込むには、中国の企業や金融機関にどこまで踏み込めるかというはるかに難しい問題が待っている。

そこまでできなければ、今回も「最大限の圧力」という名前の制裁を積み増すだけに終わる可能性がある。トランプ氏の強硬策を見慣れた世界が「また始まったか」と冷ややかに眺めているのは、そのためだ。

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