「ゆでガエル」はゆでると気持ちよくなって死んでしまうの?

「熱湯にカエルを入れると驚いて飛び出すが、ゆっくり温度を上げていくと、気持ちよくなってゆで上がって死んでしまう」。経営や政治の世界で、こんな話を聞いたことがある人は多いでしょう。環境が少しずつ悪化すると、人間は危機に気づかないという「ゆでガエル理論」ですが、本当でしょうか。

カエルだって熱ければ逃げる

結論からいうと、これは都市伝説です。普通のカエルは、水が危険なほど熱くなれば逃げます。気持ちよくなって死ぬわけではありません。

カエルは変温動物なので、周囲の温度によって体温が変化しますが、変温動物だから温度変化に鈍感というわけではありません。むしろ野生のカエルにとって、暑すぎる場所や寒すぎる場所から移動することは、生き残るために不可欠です。

実際、温泉地に生息するリュウキュウカジカガエルを調べた研究でも、カエルは高温の水を好むのではなく、選択肢があればより低温の場所を選ぶ傾向が確認されています。研究者は、致死的な高温を感知して避ける能力が生存に重要だと指摘しています。

オタマジャクシを使った研究でも、水温を上昇させると高温に反応した逃避行動が起きることが確認されています。要するに、「少しずつ温めればカエルは何も感じない」というほど、カエルはのんきではないのです。

「ゆでガエル」の原点は19世紀の実験

では、この都市伝説はどこから出てきたのでしょうか。ルーツの一つとされるのが、19世紀のドイツで行われたカエルの神経反射に関する実験です。

1869年、ドイツの生理学者フリードリヒ・ゴルツは、正常なカエルと脳を取り除いたカエルを水に入れて、徐々に温度を上げました。

すると正常なカエルは約25℃で不快そうな反応を示し、さらに温度が上がると逃げようとしました。一方、脳を取り除かれたカエルはほとんど動かなかったと記録されています。

つまり、この実験から素直に導かれる結論は、「カエルはゆっくり加熱すると逃げない」ではなく、「正常なカエルは熱くなると逃げようとする」だったのです。

日本人はゆでガエル状態

それでも「ゆでガエル理論」は、経営学や自己啓発、政治評論で繰り返し使われています。理由は簡単です。人間社会を説明する比喩としては非常にわかりやすいからです。

物価が少しずつ上がっても、毎年の変化が小さければ気づかない。「まだ大丈夫」と思っているうちに大きな問題になってしまう。2020年から日本の物価は15%も上がったのですが、ほとんどの人は気づかない。政府もガソリン補助金などでゆでガエルが飛び出さないようにしています。

皮肉なのは、現実のカエルは人間より早く危機に気づいて逃げることです。人間もハイパーインフレや円の暴落で一挙に加熱すると「危ない」と気づくかもしれません。

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