日本のタクシーはなぜこんなに高いのか:ソウルとの公式料金比較で見えた制度差

(前回:運転手が消えてもタクシーは安くならない? 無人化で問われる「利用者の利益」

日本のタクシー料金は、本当に高いのか。

印象論ではなく、東京とソウルの公式料金を比べると、大きな差が見える。

ソウル市では、仁川空港と市内を結ぶ外国人向け「International Taxi」の定額料金を公表している。中区・鍾路区・龍山区など中心部は85,000ウォンだ。

Taxi -
The Official Website of Seoul. You can view a wealth of information about the city, including the main policies, history...

2026年9月17日時点の為替では約9,600円になる。この料金には空港までの通行料も含まれている。

一方、日本交通の成田空港定額運賃では、千代田区・中央区から26,000円、新宿区・渋谷区などから28,000円、世田谷区・杉並区などから30,000円である。

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しかも日本側は高速道路料金が別だ。

東京都心の京橋から成田空港側の新空港ICまで普通車で走る場合、NEXCO東日本の検索ではETC料金はルートにより約2,300〜2,610円、通常料金なら3,650〜3,700円程度となる。

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つまり、千代田区・中央区から成田空港までタクシーを使えば、ETC利用でも実際の負担は概ね28,000円台になる。

ソウル:約9,600円(通行料込み)
東京:約28,000円台(定額運賃+高速料金)

ほぼ3倍である。

距離を考えても差は大きい

もちろん、距離条件は完全には同じではない。

ソウル市の資料では、中心部を含む仁川空港の定額85,000ウォン区域は平均約65kmとされている。

東京都心の京橋から成田空港側の新空港ICまでは、代表的な高速ルートで約75kmである。

東京側が1割強長い。

それでも価格差は約3倍ある。

単純に1km当たりへ直せば、ソウルは約150円、東京は高速料金込みで約380円となり、距離を補正しても東京は2.5倍前後になる。

「韓国の格安タクシーと日本の高級タクシー」を比べているわけではない。

外国人向けの公式空港サービスと、日本の公式な空港定額運賃を比べても、この差である。

なぜ日本はこれほど高いのか。

日本では「安くする競争」が起きにくい

日本のタクシー料金が高い理由を、規制だけに求めることはできない。

タクシーは人件費の比率が高い労働集約産業であり、燃料費、車両費、保険、営業所などのコストもかかる。

一方、日本のタクシーは、事業者が自由に好きな運賃を設定して競争する市場でもない。

運賃は地域ごとの制度の下で認可され、二種免許、運行管理、車両管理など多くの安全規制も課される。

これには合理性がある。

観光客への法外な請求を防ぎ、安全性や事故時の責任主体を確保するためだ。

しかし、その代わり供給も価格も動きにくい。

需要が増えたからといって、一般人が「今夜3時間だけ自家用車で客を運ぼう」と参入することはできない。

日本は長年、タクシーを「安く大量に使うサービス」ではなく、安全管理された一定数の車両を一定水準の料金で提供する交通サービスとして設計してきた。

現在の高価格は、その制度とコスト構造の結果でもある。

韓国も「無規制」ではない

韓国のタクシーが安いからといって、Uber型ライドシェアを全面自由化しているわけではない。

韓国にもタクシー規制はある。

ソウルでは一般タクシーに加え、Kakao Black、Uber Black、Tadaなど複数のサービスが併存し、一部ではアプリを使った弾力運賃も認められている。

違いは「規制があるか、ないか」ではない。

既存制度の中に、どれだけ価格やサービスの競争余地を残しているかである。

日本ではアプリ化しても安くならなかった

日本でも配車アプリは急速に普及した。

タクシーは呼びやすくなり、支払いも便利になった。

しかし、安くはならなかった。

むしろ迎車料金に加え、AI予約や優先配車など、利便性への追加料金が登場した。

前回の記事では、無人タクシーの導入を前に、配車アプリが普及しても価格競争が起きにくかった日本のタクシー市場について取り上げた。

運転手が消えてもタクシーは安くならない? 無人化で問われる「利用者の利益」
2027年、東京で「運転手のいないタクシー」が走り始める。米Alphabet傘下のWaymo、日本交通、タクシー配車アプリGOの3社は9月15日、東京都内でレベル4の完全無人タクシーを商用化する方針を発表した。段階的に100台規模まで増やす...

技術が入っても、市場構造が変わらなければ価格競争は起きにくい。

配車アプリはタクシーを探しやすくした。

タクシーそのものを増やしたわけではない。

そして2027年には、東京で完全無人タクシーの商用運行が計画されている。

運転手という最大の制約までなくなる時代に、日本のタクシー料金はどうなるのだろう。

タクシーは「非常時の交通」でよいのか

日本では、終電を逃した、大きな荷物がある、高齢者を連れている——そんな「仕方がないとき」にタクシーを使う人が多い。

料金が高いからだ。

一方、ソウル中心部から仁川空港まで外国人向けタクシーでも約9,600円。3人なら1人約3,200円である。

複数人なら公共交通との差が縮まり、タクシーを選ぶ合理性が出てくる。

料金が下がれば、タクシーの役割も変わる。

高齢者、子ども連れ、夜間移動、鉄道やバスの少ない地域でも使いやすくなる。

「非常時の贅沢品」から、日常交通に近づく。

問題は「高い」から「来ない」へ

東京なら、タクシーが高くても電車、地下鉄、バスがある。

地方ではそうはいかない。

鉄道もバスも少ない。そのうえタクシーも減っている。

夜には運転代行すら来ない地域がある。宿泊施設が素泊まり客を増やしたくても、地域の飲食店まで客を運ぶ足がない。

問題はすでに、「タクシーが高い」から「タクシーが来ない」に進んでいる。

東京とソウルの料金差は、その入口にすぎない。

日本のタクシー料金の背景には、人件費だけでなく、運賃、参入、供給、安全管理、競争をどう設計するかという制度の問題がある。

次回は、その矛盾が最も厳しい形で現れている地方を見る。

タクシードライバーの高齢化、運転代行の撤退、宿泊施設の送迎規制、そして観光地で始まった日本版ライドシェア。

日本のタクシー問題は、料金の話だけでは終わらない。

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