
「部内トップを目指せ!」
……熱い。熱いけど、ちょっと待ってほしい。そのひと言、部下の挑戦心を全力で潰しにいってないか?
話は少し飛ぶ。ルース・バトラーという研究者が、小学生にこんなことをした。課題をやらせて、ある子たちには「点数」と「順位」だけを返す。別の子たちには「ここがよかった」「ここを直そう」と、具体的な長所と改善点を返す。
どっちが伸びたか。後者だ。しかも有意に。
点数と順位だけの子たちは、他人との比較ばかり気にして、課題そのものへの興味をなくしてしまった。いや、わかる。私だって隣の席のテストの点は気になった(たぶん今も気になる)。
で、話を戻す。
人は「他人より上だと証明する」ことに意識が向くと、失敗が怖くなる。順位が落ちるくらいなら、確実にこなせる案件だけ拾っておこう。そう考えるのは怠けているからじゃない。合理的なのだ。悲しいくらいに。
逆に「昨日の自分より上手くなる」ことに意識が向くと、やる気は長持ちする。レベル上げが楽しいのは、敵と比べているからじゃない。自分のステータスが上がるからだ。
じゃあ、どうするか。ポイントは2つしかない。
1つ目。報酬に頼りすぎるな。ボーナスで上がるやる気は、打ち上げ花火みたいなものだ。一瞬きれいで、すぐ消える。下手をすると、仕事の面白さごと燃やしてしまう。
2つ目。目標を「他人との比較」から「自分の成長」に切り替える。これはもう、リーダーの話し方の問題だ。
「部内トップ」は、本人がどれだけ頑張っても、他人の出来しだいでひっくり返る。そんなもの、目標とは呼べない。ガチャだ。
代わりに言うべきは、「先月より提案の質をどう上げる?」「次の面談で、どんな新しい問いをぶつけてみる?」。自分の手で動かせる目標なら、人はちゃんと動く。
あと、これを言わないと終われない。
失敗の扱いだ。
失敗を減点にする職場では、誰も冒険しない。当たり前だ。だから「失敗は次の改善のためのデータだ」と、リーダーが自分の言葉と態度で、毎日示し続けるしかない。
「あの企画、結果は出なかった。でも○○がわかった。でかいぞ、これ」
こう言えばいい。制度はいらない。予算もいらない。必要なのは、上司の普段の声かけだけだ。
……簡単なはずなんだけど、なぜかこれができない上司が多い。なんでだろうね。本当に。
※ここでは、本編のエピソードをラノベ調コラムに編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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『チームは「仕組み化」でうまくいく 組織力を高める行動経済学』(橋本之克 著)祥伝社
■ 採点結果
【基礎点】 41点/50点(テーマ、論理構造、完成度、訴求力)
【技術点】 20点/25点(文章技術、構成技術)
【内容点】 17点/25点(独創性、説得性)
■ 最終スコア 【78点/100点】
■ 評価ランク ★★★ 標準的な良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】
・構成の明快さ:まず広告制作会社の事例で問いを立て、次に理論と実験で原因を説明し、最後に実践策を示す流れが一貫しており、読者が迷わずに読み進められる。
・実証研究による裏付け:大学研究所の実験、デシの心理実験、保育園の罰金実験、バトラーの研究を順に示し、主張を複数の研究で支えている。
・実務への落とし込み:「前月比で提案の質をどう改善するか」という目標の置き換えや、失敗を「次の改善のためのデータ」として扱う声かけなど、管理職が翌日から使える具体策まで示している。
【課題・改善点】
・既読感の強さ:著者の既刊と重なる論点や展開が多く、既刊の読者には新しい発見が少ない。この点を独創性の減点として内容点に反映した。
・題材の定番性:アンダーマイニング効果や保育園の罰金実験は、動機づけを扱う類書で繰り返し紹介されてきた題材であり、独自の切り口が見えにくい。
・完成度の高さが新味の乏しさにつながる点:非常によくまとまっている反面、型どおりの展開に収まっており、読者の予想を超える論点や踏み込んだ考察に欠ける。
■ 総評
報酬や評価が自発性を損なうアンダーマイニング効果を、広告制作会社の事例から説き起こすものである。保育園の罰金実験やバトラーの研究で補強したうえで、目標設定と失敗の扱い方という実践策に落とし込む構成は明快で、管理職がすぐに使える内容にまとまっている。
一方で、取り上げる理論や実験はこの分野の定番であり、著者の既刊とも重なる部分が多く、既読感は否めない。完成度の高さは認めつつも新味に乏しく、標準的な良書と評価する。








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