迷走する中野サンプラザ再開発:要件未定で突き進む「想いなき計画」

私が所属する中野区議会自由民主党が、頓挫前の当初プロジェクト計画に対して一定の理解を示し、期待を寄せていた唯一無二の理由は、「東京都庁をも超える高さ262メートルを誇るランドマークタワーの実現」、ただこの一点と言っても過言ではない。

当時、仮にこの計画が実現していれば、都心から富士山を望む絶景を何ひとつ遮ることなく創出できるという壮大なスケール感を有し、2028年度のビル高さ順位で見ても国内第8位に入るなど、まさに「未来の中野の象徴」として区民が誇れる価値を見出していたはずだ。

それ以外の要素——例えばアリーナの規模や仕様、展望施設の運営手法など、当時提示された数々の計画内容については、正直申し上げて何ひとつ魅力を感じさせるものはなかった。

しかしながら、その唯一の魅力であった「262メートルの夢」すらも、建設費の高騰を理由にあっさりと断念・粉砕された。野村不動産による計画の練り直しは、高さを失ったばかりか住宅延べ床面積の割合を40%から60%へと大幅に跳ね上げ、貴重な区有財産で「タワマン主体の建築物」を造ろうとする実質的な劣化・縮小案に過ぎない。

魅力の根幹であった262メートルが消え去った今、それ以外の部分に魅力を見出せないのであれば、本再整備事業計画は到底認めるべきものとはなりえない。ましてや、区は令和9年2月の中野駅新北口駅前エリア再整備事業計画改定を急ぐあまり、プロポーザルを実施する上で事業者へ示すべき以下の重要事項が定まっていない。

  • 事業スキーム:区が土地を保有し続ける「定期借地」もしくは土地の所有権を失う「権利変換」
  • 住居の割合:前計画で延べ床面積60%の指針が示された際には区の土地でタワーマンション主体のビルができることへの反対の声が多かった。住宅戸数1,100戸、延べ床面積5割上限としようとしている。
  • アリーナのサイズ:前計画は7,000人の方針であったが、今回の提案では「3,000人規模を基本とし2,500~5,000人を想定」としている。
  • 中野区が目指すべき未来のため新サンプラザへ託す熱い想いなど

他の議員も口々にするようにワクワクするものがない状況下で、要件未定のまま見切り発車すれば、ただ「ひどい提案」を待つだけの絶望的なプロポーザルに成り下がってしまうのではないか。

近年の急激な物価高騰により建設工事費の変動が不透明であるにもかかわらず、2027年2月の再整備事業計画改定に向けてスケジュールを拙速に押し進める姿勢は、極めて不当かつ無謀と言わざるを得ません。

1.「売却」か「定期借地」か——要件すら決めないプロポーザルの罪

まず、区有地の処分や事業者への条件提示のあり方について質したい。一度土地を売却・権利変換してしまえば、二度と元には戻らない。本来であれば「定期借地のみ」など、土地を売却せずに済むスキームを最優先の「要件」として固めるべきである。

平成23年の区役所・サンプラザ地区整備の基本的方向に「定期借地」と「売却」が併記されてから、当時の区長が「権利変換」を議会答弁で明言するまでに実に5年を費やした。この土地処分をどうするのかということこそ、プロポーザル前に区として一番決定しなければならない最も重い要件であるはずだ。それを明確に定めることなく、令和9年2月というスケジュールありきでプロポーザルに突っ込もうとすることには大きな違和感を覚える。

現在の区の姿勢は、例えるならば「パソコンを仕入れる際に、スペックは何でもいい」と言っているようなものだ。「定期借地でも権利変換でもよい」「マンションを入れても入れなくてもよい」「アリーナのサイズもお任せする」——これでは、事業者に対し「リースでも購入でも構わない、ハードディスクの容量も画面サイズもお任せします」と注文しているようなものであり、事業者が困惑するのは当然だ。

売却したいのか保持したいのかという最重要要件すら不透明なまま提案を求めたところで、事業者は本気で参入検討を行えない。困惑した事業者が最終的に出す結論は、面白くしようという努力すら放棄した「どこにでもある標準モデルのPC」、もしくは「事業者の我田引水モデルPC」の提示でしかなくなる。

提案のクオリティを引き出すどころか、区自らがプロポーザルの質を低下させる「クオリティ・ダンピング」を招いているのだ。要件が定まっていない自由度が高すぎる条件でプロポーザルを実施しても、「こんなものなら要らない」と議会から突き返されるような、ひどい提案しか出てこないのは火を見るより明らかである。

2. 3,000人規模の限界:中野の経済を潤さない「薄い経済波及効果」の現実

さらに、アリーナ計画の迷走も、区が「プロポーザル前に定めるべき要件」を放棄している最たる例だ。

区は当初目指していた7,000人規模の構想を突如撤回し、「3,000人規模が妥当」と大幅にスケールダウンさせた。その根拠として他施設との競合回避や事業採算性を挙げるが、そもそも本計画最大の強みである「中野駅から徒歩1分」という圧倒的な立地優位性が議論から完全に抜け落ちている。

しかしながら、区から口頭での説明はあるが、7000人規模では競合してしまうという証拠となる資料が全く出てこない。2年前まで推し進めていたアリーナのサイズでは駄目だという証拠が。

また、ここで声を大にして指摘せねばならないのは、縮小された「3,000人規模」のホールでは、中野の街に対する経済波及効果が絶望的に薄いという冷厳な事実である。

区が再整備の理由として掲げる「にぎわいの創出」だが、サンプラザ閉館前後の現実と照らし合わせれば明らかな矛盾がある。稼働当時から、地域経済への大きな波及効果がなかったことは一般質問でも度々指摘してきた通りだ。

昨年の決算特別委員会総括質疑でも、産業振興課長は「中野駅周辺商店街や経済団体などへのヒアリングによると、総じてサンプラザのコンサートやイベント開催だけでは、中野駅周辺の消費行動に直結していなかったことが分かっている」と答弁している。

原因は明白である。3,000人規模のホールで興行されるコンテンツの客層は、いわゆる「推し活」などの特定かつ限定的な層に偏りがちだ。彼らは限られた予算の中でファングッズの購入に全額を費やしてしまうため、周辺の飲食店や商店街にまでお金が落ちることはなく、経済波及効果は極めて限定的で、ほとんどゼロに近いと言っても過言ではない。

かつてのサンプラザと同等レベルの3,000人規模に固執し、中身の戦略も描かないままであれば、何度イベントを開こうとも周辺商店街は一向に潤わず、生み出される「にぎわい」など空疎な幻に終わる。

北海道のエスコンフィールドのように、大都市から球団を誘致するほどの「他から奪い取る」ような攻めの気概がなく、競合を恐れて3,000人規模という小さく守りに入った枠組みにしがみつくようでは、中野の未来を切り拓くことなど到底できない。

どんな層をターゲットにし、どうやって街全体の消費に繋げるのかという「魂」の要件をすっぽり抜け落としたまま事業者に丸投げして、一体どうして周辺が潤う優れた提案が出てくるというのか。

3. 「ひどいプロポーザル」を防ぐため、今すぐ立ち止まる決断を

再整備事業計画に対して各議員が納得できていないのは、区が「この街をどのような姿にしたいのか」、そして「そのためにプロポーザルで何を絶対要件とするのか」という根本的なビジョンを描けていないからに他ならない。

区は「中野駅周辺再開発のラストピース」と呼ぶが、ただ箱モノができれば良いわけではない。要件すら定まっていない現在の生煮えの報告には、ワクワクする要素が全くなく、3,000人規模がもたらす経済波及効果の薄さへの危機感もなく、まちづくり事業者へ中野のブランディング戦略を丸投げしているに等しい。

はっきり申し上げまして、これほど生煮え、いや材料も揃っていない状況で、令和9年2月に再整備計画として改定されるなどということは、到底信じられない。誰もが納得のいかない、要件すら固まっていない計画からスタートするプロポーザルが、さらにひどい代物になるのは目に見えている。

だからこそ強く提案する。まずは「中野の街を今後どのようにしたいのか」「プロポーザルで事業者に何を絶対条件として求めるのか」という要件定義の議論を基本から遡って始めるべきであり、令和9年2月というスケジュールありきで突き進むのを一度立ち止まり、計画の改定時期を遅らせるべきである。

なお、もしスケジュールが変更となる場合は、自民党が提案している「中野ブロードウェイの建て替え、もしくは大規模修繕」に向けて、中野サンプラザ・旧区役所の土地建物を活用することも必要であることを付記しておく。

中野サンプラザ・中野ブロードウェイの一体的な再整備に関する提案
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