池田先生は尊敬しており、仲良しでもあるのですが、なぜかNTTがらみの話になると意見が真っ向から対立します。しかし、同じアゴラの執筆者が、ガチンコで意見を闘わすのは極めて健全だし、相手が池田先生なら、「事実」と「論理」をベースに議論できるので、私としても楽しい仕事です。
今回の池田先生の論旨は、大略下記のように受け取られます。
1)日本ではiPadがソフトバンクのみからSIMロック付で売り出されることになった。
2)これは、ソフトバンクの電波が入りにくい場所で使うことの多いユーザーにとっては、嬉しいことではなく、こういうユーザーは「被害者」だ。
3)ソフトバンクが自らの利益を守る為にこういう形に持っていったのは自由だが、それなら、NTTのアクセス回線についてNTTが自らの利益を守ろうとするのにも文句は言えない筈だ。(「天下国家の為」等と称して、アクセス回線の議論をするのはやめろ。)
しかし、この論理は、常日頃は論旨明快な池田先生とは思えない程に破綻しています。
先ず、池田先生は、「端末価格と通信料が同じなら、自分は電波のつながりやすいドコモからiPadを買うだろうし、そういう人は松本さんの言う2-3%よりはるかに多くの数に上るはずだ」と言われていますが、それは当然のことです。しかし、本質的な問題は、「ドコモでは端末価格と通信料をソフトバンクとは同じには出来なかった(そのような決断は出来なかった?)」ということなのです。もしこれが出来たのなら、Apple社としても、ドコモにも販売権を渡すことを真剣に検討したと思われます。
今、ソフトバンクからSIMロック付のiPadの3Gモデルを買うと、端末代が58,320円(月額割賦代金2,430円 x 24ヶ月)プラス 通信料(フラットレートで月々3,225円、24ヶ月で77,400円)、合計で24ヶ月を通しての負担額は135,720円になります。
iPadを自社だけで扱いたいソフトバンクは、必死でギリギリの計算をして、このような値段を設定しました。Apple社は「フムフム、ここまで思い切った通信料価格を出してくれるのなら、顧客層は相当広がるだろうし、一社に販路を絞っても、結果としては最大の売り上げが達成出来るだろう」と踏んでくれたのではないかと思われます。
結果として、「どうしてもドコモ」という人達にとっては、今回のApple社の決定は不幸のことだったかもしれませんが、「iPadは使いたいが、月々あまり大きな金額は払えない」と思っていた人達は幸せだったでしょう。
経済学者の池田先生にこのようなお話をするのは大変失礼ではありますが、最も大切な「価格のファクター」が全く入っていない今回のような先生の議論に、簡単に感心してしまわれる読者の方もおられるようなので、一つ喩え話をさせてください。
或るアパレルメーカーが、新しいデザインのブルゾンを思い切った安値で売り出しました。流通コストを絞り込むために、色は、黒とグレーの2色にしました。前のデザインのものには、これに、赤、青、黄色、ピンクの4色を加えた6色があったのに、今回は色の選択肢が絞られてしまったのです。どうしても赤が欲しかった私は怒り狂いましたが、どうにもならないので、やむなく高い値段でこれまでのデザインのものを買いました。つまり、私は、このアパレルメーカーの今回の決定の「被害者」だったのです。しかし、今回、このすばらしいデザインのブルゾンが思いがけず安く買えて喜んだ人も多かったのです。
池田先生も、まさか「経産省は、『不幸な顧客』を作らないために、全てのデザインのブルゾンに同じ数の色の選択肢を用意せねばならないと、このアパレルメーカーを指導するべきだった」とはおっしゃらないでしょう。各メーカーは、みんな等しく、「どうすれば最大多数のユーザーからの支持が得られるか」を必死で考え、色々に商品を企画し、流通政策や価格政策を考えるのですから、こういうことは当然民間企業の自由な競争に任されるべきことです。
ところで、話を元に戻すと、どうしてもドコモの回線でiPadを使いたいという人の為には、ドコモさんには「イーモバイル並みの『ポケットWiFi』を売り出す」という手が残されています。イーモバイルの「ポケットWiFi」は、毎月5,480円を払って24ヶ月使うことを約束すれば、持ち帰り0円で取得できますが、iPadのWiFiオンリーバージョンを48,000円で買ってこれと組み合わせて使うと、24ヶ月の支払い総額は180,320円となり、ソフトバンクの3G付iPadと買った場合と比べて24ヶ月で44,600円の逆ザヤとなります。ですから、誰もこういう使い方をする人はいないでしょう。
しかし、もしこれがイーモバイルの「ポケットWiFi」ではなくて、ドコモの「ポケットWiFi」だったとしたらどうでしょうか? ドコモならどんなところでもつながる可能性が高いので、中には「44,600円程度の逆ザヤなら払ってもいいよ」という人もいるかもしれませんね。(池田先生は如何ですか?)ちなみに、私が以前に2-3%と申し上げたのは、こういう人達、つまり、「とにかく現状では自宅にソフトバンクの電波が入らないので、ドコモの通信料がソフトバンクより相当に高かったとしても、ドコモから買う」というような人達のことを念頭においてのことです。
さて、これでSIMロックの方の話は終わりにして、「光の道」の話の方に移ります。
ここでの池田先生の論旨には、私は二つの点で合意できません。
第一に、池田先生は、「携帯端末機の小売市場」という「競争原理が普通に働く分野」と、普通の会社が競争に参入することは不可能な「通信インフラ」の分野を、全く同様に扱おうとしておられます。
携帯端末機の市場では、一度として独占禁止法への抵触が懸念されるような商品は生まれたことがありませんが、通信インフラの世界は、そもそも、かつては国営の独占企業が全てを支配していた世界であり、各国とも色々な非対称規制などを導入して、ここに人工的に競争を持ち込もうとしてきたのです。
近年、市場原理に委ねるべき分野の比率が、計画経済的手法を使った方が合理的と判断される分野に比べて高まりつつあるのは事実のようですが、かといって、後者がなくなったわけではありません。道路、電力、ガス、上下水道などは明らかに後者に属しますし、通信についても、「アンテナを取り付ける鉄塔」や「管路に這わせる銅線や光ケーブル」については、後者に属すると私は考えています。
「端末やサービスは、出来ればネットワークとインテグレートした方がユーザーの為になるが、物理的なアクセス回線は、上部構造とインテグレートしない方がユーザーの為になる」と私が考えるのは、その方が自分の会社にとって都合がよいからではなく、
1)物理的アクセス回線については、敷設できる会社が極めて限られている(独占に近くなる)
2)だから、上部構造をアクセス回線にインテグレートすると、トータルサービスがこの数少ない会社に支配されてしまい、ユーザーの選択肢が狭まる。
3)アクセス回線と上部構造を分けても、ユーザーにとってデメリットはない
4)逆に、アクセス回線を上部構造とインテグレートしてみても、ユーザーにとって特にメリットはない
等の理由によります。
次に、今回の池田先生のコラムを読むと、何となく、「日頃せこい商売にうつつを抜かしている下々のものは、偉そうに天下国家を論じるな」と言っておられるかのように読み取れますが、これにも合意出来ません。
坂本龍馬は、何とかして日本人同士が血を流し合う内戦を避けようと、最後まで努力し、その為に武力倒幕派の薩長に警戒されることになったわけですが、元はといえば、長州に英国製の武器を売って多くの血が流される原因を作った張本人です。しかし、そのことをもって、「彼が平和主義を標榜するなどおこがましい」という人はいるでしょうか?
また、彼は、海援隊の船が尾張藩の船と衝突事故を起こした時には、英国仕込みの巧みな交渉術で莫大な補償金を支払わせています。一介のカンパニーである亀山社中が生き残っていく為には、当然そういう能力も必要とされたのでした。しかし、そのことをもって、「自分達の利益を守る為に法外な補償金を取り立てるような奴が、偉そうに天下国家を論じるな」という人はいないと思います。
生き馬の目を抜く実業の世界を生き抜いていくためには、それなりに厳しい生き方をしていかなければなりません。だからと言って、「そんな奴は天下国家のことを考えてはならない」ということには、全くならないと思います。それどころか、「厳しい競争の世界をしたたかに生き抜いていけないようなひ弱な人達には、天下国家のことは任せられないのではないか」と考える方が、むしろ真っ当なのではないでしょうか?
コメント
iPadに関しては最終的な決定権はApple側にあったのでしょうから、SBの責任を問うのは確かに酷ですね。日本におけるiPadのサービス請負権のオークションにSBが勝ったということなのでしょう。どちらかと言うと、「全世界でSIMロックはかけない」と言っていたのに、日本ではSIMロック付きでサービスを提供することにしたAppleが非難されるべきでしょう。
「光の道」に関してはFTTHインフラをNTTから切り離し、NTTやSBが対等な立場でサービスのみで競争出来るようにすべきという点までは同意します。しかしNTTとSBが競争すべきなのと同様に、FTTHと無線というインフラも競争させるべきなのではないでしょうか?FTTHとNTTは切り離すべきと主張しているのに、FTTHと無線の競争に関してはFTTHに特別な恩恵を与えようと主張するのはダブルスタンダードだと感じます。FTTHと無線も対等な立場で競わせるべきです。
本題と逸れますが、歴史的事実が間違って記録されるといけませんので、コメントします。 海援隊の件です。私は、海援隊の船と衝突したのは、紀伊藩の船だったと記憶しています。のちの龍馬暗殺は、この賠償を恨んで、紀伊藩が刺客を送り込んだという説(私は支持しませんが)があるくらいですから、紀伊藩のためにも、尾張藩のためにも正確を期したほうがいいと思います。 なお、私に間違えがあったら、ご指摘ください。
余談ですが、幕府は当時鎖国をていたので、万国公法など批准しているわけないのですが、それを盾に莫大な補償金を支払わせてしまうのですから、面白いですね。
SIMロックの決定権がApple側にせよ、SB側から「SIMロックにしないと販売しない」等の交渉なしでSIMロックを選択するとは思えません。
また、SIMロックにしないと端末価格は上がると松本氏はおっしゃっています。では、iPadはSIMロックを外すといくら上がりますか? USのアップルストアでも、WiFiと3Gで3万4万も価格は変わっていませんが?
正直、48ヶ月じゃないと0円解約できないわかりにくい契約であったり、それも5月13日のプレスリリースで突然変更したり(28日以前の契約はダメ)、消費者を騙すような料金設定をする会社の方が、「iPadを自社だけで扱いたいソフトバンクは、必死でギリギリの計算をして、このような値段を設定しました。」と言っても、信用できると思いますか?
素直に、「SBは会社の利益の為にSIMロック版しか販売したくないとApple側に交渉し、そのようになりました」と言われるほうが、「営利企業だしね」と納得できますが、SIMロック解除がユーザーの為にならない等、いろいろ理由付けしていてコレは失笑としか言えないです。
尾張藩ではなく、紀伊藩です。間違えました。すみません。
ひ弱なのも困りますけど、ならず者はそれ以上に困ります。
選挙の専門家が政治家になって困るように、せこい商売の専門家に、そのせこい商売の延長線上で国家を語られても困るのです。
国家を語るというのは、我々の(もちろん日本人の)利益を語ることであって、誰かの利益を語ることではないのです。
bakawebさんへ
Twitterでの同様の質問にも既にそのように答えていますが、勿論ソフトバンクは、アップル社に対して「こういうことをして拡販を計るから、何とか我社だけの扱いにしてくれ」と頼んだはずです。(私は直接の担当で無いので詳細は知りませんが。)それは当然のことです。
何故か携帯端末の話になると、SIMロックとか技術がらみの話が出てきて複雑になりますが、「独占販売権」を巡る交渉はどんな分野でも日常茶飯事で行われていることであり、それが「悪い事」であるという話も聞いたことはありません。
このことをもってアップル社を非難するのも全くの見当はずれです。「新しく売り出すブルゾンの色を何色にするかをメーカーが決めてしまうのは怪しからん」というのと同じ話ですから。
裏蓋を開けてSIMカードを入れ替えるなど、本来は誰もやりたいことではありませんから、現状に不満を持っておられる方々にとって一番よいのは、ドコモさんが思い切ってパケ放題の値段を下げたiPad専用の「ポケットWiFi」を売り出されることではないでしょうか? これならアップル社の了解なしにでも出来るはずですから。
disequilibriumさんへ
私が言わんとしていることを全くご理解していただけていないようで残念です。
国家のことを語るのは、勿論私企業の利益を語ることではありません。しかし、「日頃私企業を営んでいる人は、国家のことを語るべきでない」というのは誤りです。「日頃商売のことばかりを考えているような奴は、国家の利益など考えるわけが無い(必ず裏がある筈だ)」という先入観を持つことも、何とも浅い人間観です。人間というものは、本来もっと大きく、とらえどころの無いものです。
人にはそれぞれ癖があり、従って商売のやり方にも色々なスタイルがあります。それについての好き嫌いはあるでしょう。しかし、そのスタイルが嫌いだからと言って、「ならず者」と決め付けるのは間違っているし、フェアでもありません。
松下幸之助さんが、国家のことを考えなかったと言う人は今は皆無でしょうが、当初はその風貌と大阪弁故に、「関西の商売人が何を言う」と見下されていました。池田勇人首相でさえ、フランスの大統領からは「トランジスターの商人」と蔑まれました。
もう一つ重要なことを言い忘れました。
国家政策について、一つの提言がなされたら、先ずはその「内容」について真っ向から議論すべきです。「そこにはこんな思惑が潜んでいるのではないか?」とか「周囲の力関係はどうなっているか?」とかいう問題にすぐ興味が行きがちですが、それはあくまで周辺の話であり、一番重要なのはその提言の「内容」だからです。
今回原口大臣が提唱した「光の道」にいち早く呼応し、実現の為の具体案まで出してきているのが、NTTに対抗することを前面に出して通信事業に進出してきたソフトバンクなのですから、色々な憶測が出るのは当然です。しかし、これは本来は本末転倒の話です。
ソフトバンクが新事業の計数分析までしたのは、そこまでやらなければ、提言にはなりえず、具体的な提言が無ければ何も前に進まないからです。ソフトバンクはNTTに接続料を払っており、その料金の算定根拠については、不満足ながらある程度の情報を得ています。これに色々な推測を加えたものをベースに事業計画のようなものを作っているのですから、不安が無いといえば嘘になります。
一番重要なことは、NTTが、明確に提示された政府の「国策案」に対して本気で取り組むことです。ソフトバンクが提出した「叩き台」をベースに、NTTは自分達の把握している数字に基づいて、堂々と自分達の見解を開陳すべきです。
結局のところ、最後は「信用」に行き着くのではないでしょうか?
坂本龍馬が未だに根強い人気を誇るのは、彼が生涯に渡って清廉潔白だったからでは無く、最後に己を賭してでも国を守ろうとしたからだと思います。同様に、ソフトバンクがSIMロックで自らの身を守りつつ一方で国家を論じるのも問題ありません。後はそれを我々が信じられるか否かでは無いでしょうか?
「光の道」に関して、仰る通り今はボールはNTT側にあると思います。
>裏蓋を開けてSIMカードを入れ替えるなど、本来は誰もやりたいことではありませんから
瑣末な事で恐縮ですが、裏蓋を開けさせないような文化を創ってきた当事者であるキャリア側の「手前味噌」な発言かと思われます。
アジアではプリペイドSIMが圧倒的に多いので、安い端末、安い料金の為に、ユーザーは喜んで裏蓋を開けてSIMを入れ替えしています。欧州でもそういう事はかなりあるのではないでしょうか。
いかがでしょうか。
>松本徹三氏
申し訳ありません。販売契約に関しては、bobbob1978氏がApple側とおっしゃったので、そんなわけはないという意味でした。
独占販売権に関してはその通りで、まったく悪い話ではありません。
私は単純に、48ヶ月目のみのゼロ金解約という分かりにくい契約体系を出しておきながら、「必死でギリギリの計算をして、このような値段を設定しました。」などど言われても、まったく信用できませんという事です。
逆にお伺いしたいのですが、このような契約を隠すように販売していて「ユーザーの為にギリギリ頑張ってます」と言われて、信用できますか?
数店舗を回って聞いてみましたが、この件をはっきりと伝える方はいませんでした。そもそも解約時のペナルティに関して詳しく説明する方もいません。さらっと言って終わりです。こちらから聞くと「そうですね」程度です。しかも、プレスリリース発表後でもです。
ですから、先に書いたとおり「SBの利益の為にやってます」と言われるほうが納得できると言っているのです。SIMロックも光の道も、オブラートのように「ユーザーの為」と言われているのがおかしいと感じます。
bobby2009さん、
横レスで恐縮ですが、他のスレを含めbobby2009さんの問題意識には敬服しますが、
どうもこの種の機器の開発をご存じないようですので、御参考まで。
>>裏蓋を開けてSIMカードを入れ替えるなど、
>>本来は誰もやりたいことではありませんから
> 瑣末な事で恐縮ですが、裏蓋を開けさせないような文化を
> 創ってきた当事者であるキャリア側の「手前味噌」な発言
> かと思われます。
iPadのSIMが容易に入れ替えられないならば(自分は実物を見ていないので、
詳細を知りませんが)、それはAppleがやったことですよ。
オペレータに対して、SIMを入れ替えられないように囲い込みができるように
する代わりに、通話料の一部払い戻しを要求する。Appleのビジネスプランです。
※松本さんは答えないでしょう。
契約条件の詳細は当然confidentialですので。
なぜなら、そんな機構デザインは、製品開発の当初に決まっているからです。
客先が要求して変更する性質のものではありません。(当然、使用者が入れ替え
できない方が、軽量、防滴、衝撃全ての面で有利になります。)
なぜこのようなことを確信的に言えるかというと、かつてあった端末の軽量化
競争、これで電池が容易に入れ替えられないようになったのと同様だからです。
電池を入れ替えられませんが、軽量○×gの端末です、こういうオペレータへの訴求
が、かつてあったんですよ。
少なくとも、そんな変更は金型の大変更が必要で、初期ロットで100万台以上
作るような場合、時間を無視しても億単位の支出です。
bobby2009さんへ
これは反論ではなく、補足説明です。
SIMカードの文化は、国ごとに通信事業者が別で、国境を越えるごとに事業者を変えなければならなかった欧州の特殊事情が生んだ文化でした。これがGSM規格として世界中に広がったのです。これに対し、米国、韓国、日本(KDDI)がリードしたCDMAや日本独自のPDCではそのような文化は生まれませんでした。
欧州では、今はいちいち国境を越えるたびにSIMカードを入れ替える人はいません。域内のローミングチャージを一律に下げたからです。ところが、欧州の事業者は域内でのローミングチャージの値下げによる収益源をカバーするために域外のチャージを逆に上げてしまいました。この問題を何とかするべくGSMAなどで議論をしていますが、なかなか進展していません。
アジア諸国ではローミングチャージが高いこと、プリペッド端末が圧倒的に多いこと、中古品市場が大きいこと、の三つの理由でSIMカードの抜き差しが日常茶飯事になっています。(プリペッドでは、一定の通信量がSIMカードの中に入ってしまっているケースも多いようです。)日本でも、ソフトバンクを中心にプリペッド端末は売られていますが、マイナーな存在です。
bakawebさんへ
勿論、必死で計算をします。勿論それは損をするリスクを回避しつつ販売を最大化する為、つまり自社の存続と繁栄のためです。しかし、販売を最大化するためには、「顧客の利益」を考えることが必須です。最終的に何を買うかを決めるのは顧客ですから、自ら顧客の立場に立って必死で考えなければ、政策を間違えることになります。
こんなことは自由主義経済の常識なのに、携帯電話の話になると、何故か「怪しかる、怪しからぬ」の話になるのは少し変な話です。しかし、それは、十数年前の時点で、「長期利用を前提に端末価格の相当部分を通信事業者が負担する」というやり方を誰かが考え出し、これが「顧客の支持を受けて」定着したからでしょう。
このやり方には法制上の疑念もあったため、2007年の時点で総務省が「指導」を入れましたが、情況はあまり変わっていません。ソフトバンクは、後発事業者であるが故にこの方式は不利で、4年前から「割賦方式」という「法制上の疑念のないやり方」を導入していますが、他社との競合上「二方式を並存」させざるを得ず、これが店頭での説明をややこしくしているのは事実です。
もう一言。iPhoneの場合は、Steve Jobbsの美学ゆえに、機体にはビスがありません。故に、SIMカードはおろか、電池の交換さえママならぬのが現実です。(メカマニアでなければ出来ません。)
また、一般論から言えば、「SIMカードを物理的に交換する」等というやり方は、技術的には恐ろしく古めかしいやり方です。「事業者間の協定」と「無線でソフトを書き換える技術」を組み合わせれば、カードの交換などは不要になりますから、将来はこういう形になるでしょう。
SIMカード方式というものに、聞きかじりで何かの幻想を持っておられる方は、歴史的背景や、プリペッド方式の事、ローミングの事、等々、事実関係をもう一度おさらいしていただくことをお勧めします。
iPhoneでは、SIMカードの交換はとても簡単のようですけど。
http://support.apple.com/kb/HT1438?viewlocale=ja_JP&locale=ja_JP 「iPhone の修理の前に SIM カードを取り出す」
>松本徹三氏
説明がややこしいというより、単純に「この2つの契約だと、ゼロ円で解約できるのは48ヶ月かかりますよね?」という質問をしないと、「4年間使い続ける必要があります」とは言わないという事です。
裏を返せば、必死で計算してゼロ円でないと解約しない率も出し、ユーザーに分からないように4年間同じ機種を使い続けさせるように仕向けることで、iPhoneという黒船を売ろうとしているわけですよね。もちろん月額も安いわけで、契約内容が悪いというわけではありません。企業ですから、自社の存続と繁栄のためにやっていて何も問題はありません。
ただ、そのような企業が一方で「顧客の利益」と言われても説得力を感じないという事です。言っている事と実態が違うのですから。顧客の利益というなら、月額が安いだけではなく、ゼロ円解約までは長期になる事も言うべきです。特にiPhoneという機種であれば4年は非常に長いのですから。それは言わないですよね。(他県の知り合いにも店頭で聞いてみましたが、聞かずに言う店員はいませんでした。)
ですので、変にオブラートに隠さずに、この度のコメントのように「自社の存続と繁栄のためです」と言われるほうが、至極納得できます。
hitoshiy19さん、iPadがmicro SIMだという事は存じております。松本氏のコメントは、iPadだけでなく日本における携帯文化を含めて述べたものと理解しました。
松本さん、SIMカードに関する補足説明を有難うございます。SIMカード交換文化の根源にあるのは、クロスボーダーによる利便性もさる事ながら、キャリアからの自由の担保という精神的な面も無視できないと考えています。自分の端末で使うキャリアの変更を、キャリアの都合に依存した方法で行う事は、、必ずしも消費者の利益になるとはいえません。
松本氏が「消費者の為」といっても、それはあくまでキャリア側から見た合理性であり、消費者のそれと同じではない、という事をご理解ください。
また、SIMカード交換は現時点で進んだ技術といえませんが、業界側から見て進んだ技術が、常に消費者に指示されてきた訳ではない事は、ADSLで成長したヤフーBBが証明してると考えます。
disequilibriumさんが述べていますが、iPhoneのSIM交換は、普通の端末よりも(ある意味)簡単です。なぜなら裏蓋を開ける必要も、電池を外す必要もありません。但し、SIMを本体から抜き出すには、細いピンのような道具が必要です。購入時に付属していますが、私は事務用のクリップ(たいがいの会社で使っている)の先を伸ばして使っています。
http://qurl.com/fkr1g
>「事業者間の協定」と「無線でソフトを書き換える技術」を組み合わせれば、カードの交換などは不要になりますから、将来はこういう形になるでしょう。
再び瑣末な事で恐縮ですが、ドコモとソフトバンクの2社でキャリア間互換性のあるSIMフリー端末が増えると、端末の中古市場が生まれるでしょう。ゆえに、SIMカード(あるいはそれに似た方式)が将来も続くと考えます。
iPadのSIMロックについてです。現在流れている情報によると、ソフトバンクから販売されるiPad(3G版)は、国内ではソフトバンクだけ利用可能ですが、海外へ持ち出された場合、その国のSIMを入れて使用可能になるとの事です。たとえば日本で購入したiPadを米国人が米国へ持ち帰り、AT&TのSIMを入れれば使用できるらしい。
http://www.j-cast.com/2010/05/14066575.html
もしこれが正しいとすれば、ここからは推測なのですが、技術的に考えた場合、日本という場所とソフトバンクというキャリアを識別するよりも、ドコモとイーモバイルのネットワークだけを除外するように識別させる方が簡単なのではないかと予想します。
松本さんは社内情報を入手し得る立場かと思いますが、もし差し支えなければ、SIMロックのかけ方と、日本以外ではSIMフリーであるのか、についてコメント頂く事は可能でしょうか。
bobby2009さん、
横レスで水を差してばかりですいませんが、少なくとも周波数の違いから、元々E-mobileにはアクセスできないと思いますよ。(ポケットWIFIを使わない限り。)
ついでに松本さんが言いにくいと思うので想像を書くと、世界各国オペレータの(将来の変化まで含めた)保証はできないので、常識的には日本で非SBMかだけのチェックじゃないですか?
「申し訳ありません。販売契約に関しては、bobbob1978氏がApple側とおっしゃったので、そんなわけはないという意味でした。」
どうも誤解されているようなので一言。
私は販売契約に関して「Apple側が非難されるべきだ」と言っているのではありません。
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20413175,00.htm
ここに「米Appleは、1月に行われたiPadの発表会で、「iPadはすべてSIMロックフリーで提供する」と明言。」と書いてある通り、始めは「すべて」SIMロックフリーで提供すると表明していました。しかし結局は日本での販売に関してこの発言と矛盾する販売方法を行うことになりました。この二枚舌は非難されるべきではないかと言う意味で書いたのです。
Appleは守る気がないのなら「iPadはすべてSIMロックフリーで提供する」などと綺麗事を言うべきではなかった。
SIMロックという話が素人を巻き込んで話題になっていますが、同じ事をdocomoやauがやったとしたら、文句を言う人は少ないでしょう。
ひとえにSoftbankというキャリアは、同じW-CDMAを使っているdocomoと比べてエリア・品質(スピード)で圧倒的に劣ります。これは事実です。
携帯界の巨人には勝てません。docomoの3Gは世界一かも知れません。
恐らくiPhoneを持っている多くの人が元または現在もdocomoユーザで、iPhone・iPad予備軍の多くがdocomoユーザであるがため、あのリッチなdocomo回線でiPhone・iPadを使いたいと思うのは当然です。
ところが、松本さん書かれたとおりdocomoは結局Appleの要求するプランに応えられなかった。応えなかったのでしょう。
世界のiPadのデータの価格を見ると、日本円で3000円~5000円で無制限に使えることがAppleの要求。
応えたところが、販売を許可されただけ。アメリカでもAT&Tだけ。実質独占と同じ。あの価格はアメリカでは破格。
その価格を提供できたのはSBだけ。docomoはAppleの要求する価格では商売にならないと判断しただけ。Andoroidもあるし。
もしSBがSIMロックで販売できないと、docomoは体力勝負で値下げしSBをつぶし、1年後には答えは出ているでしょう。
そう言うのもあって、SBはiPhoneと同じように日本でiPadを普及させる(恐らく相当な販売目標を課せられているはず)ことを条件に日本限定SIMロックを勝ち取ったのでしょう。
Appleが考えは壮大です。SBの電波がいくら悪いとはいえ、AT&Tよりはマシなわけで、docomoとの差を理解するとは思えません。
ただ単にdocomoは価格を安くすること、ノルマを課せられることをいやがっただけでしょう。逆をやったますからね、いつもは。
長くなりましたが、松本さんの意見には同意です。
池田さんの意見や周りの騒ぎは、やっぱりSBに対する電波問題(エリアと回線品質・スピード)がすべての発端です。
今年は電波改善されるとのことですから、期待しています。
cafeathomeさんの言う「同じ事をdocomoやauがやったとしたら、文句を言う人は少ないでしょう」は、なるほどと感じました。ただ、その理由は少し違うと思います。ソフトバンクだったら、何か変わるかもしれないという「期待感」があるから、議論がここまで盛り上がるのではないでしょうか。
SIMロック議論が盛り上がっているもう一つの原因は、原口総務大臣なら変えてくれるかもしれないという、もうひとつの「期待感」があるのも少なからず影響していると思います。
bobby2009さん、
> cafeathomeさんの言う「同じ事をdocomoやauが
> やったとしたら、文句を言う人は少ないでしょう」は、
> なるほどと感じました。ただ、その理由は少し違うと
> 思います。ソフトバンクだったら、何か変わるかも
> しれないという「期待感」があるから、議論がここまで
> 盛り上がるのではないでしょうか。
自分は思うんですが、(他に指摘されている方もいるので自分独自の意見ではありませんが、)クレームをつける先を間違えられていないでしょうか?
iPhoneの場合、AT&TはAppleに対して通話料の割り戻しがあるということは、FTで報道されているので、事実かと思います。
つまり、Appleは端末販売の収益+AppStoreの収益「+通話料」をiPhoneで継続的に得る、MVNOの形態を取っています。
iPadの場合、AppleはAppStoreの利用者数が飛躍的に高いと踏み、通話料の割り戻しについては条件がゆるいか、ないのだと思いますが(現状信頼できる記事がない上に、松本さんは答えることができないでしょうから推測です)、これもAppleが決めたことです。御承知の通り、Acrobatの搭載を拒否しているのも、AppStoreの収益を失いたくない以外に解釈のしようがありません。
いずれにしても、このようなビジネスモデルの元で製品群を用意し、各国キャリアに対して提示しているのはAppleであり、(非常に丁寧にお答え頂いている松本さんには失礼な言い方ですが)、松本さんやSBMにはどうしようもないことではないでしょうか?(いやなら他からで出すだけ、と。)
なお、当初は出版社に対して「高圧的」と言われたamazon kindleに対して、iPadは救世主として非常に好意的に捉えられましたが、現在では収奪的ビジネスを行うのではないかと、非常に警戒されており、出版社の評判は地に落ちています。(FTには「iPad or not」のような感じの記事が多数あります。)
なぜか、iPhone・iPadに興味がある方は、ほとんどAppleの非難をされませんが。