26日に「金融政策決定会合における主な意見(2017年6月15、16日開催分)」が公表された。このなかで「金融政策運営に関する意見」について確認してみたい。
「物価の伸びが鈍い背景には、人々の将来不安や適合的期待形成などやや構造的な要因もある。ごく短期間で「物価安定の目標」を達成することは容易でなく」(主に意見より)
2013年4月に「量的・質的緩和」の導入を決定した際には、日銀は「消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と明確に表明していた。それが2年でできなかったことを日銀自ら証明した格好だが、その言い訳として上記の文言が果たしてふさわしいものといえるであろうか。言い訳にしか聞こえないのだが。
「2%の「物価安定の目標」の達成には未だ距離があるが、「量的・質的金融緩和」は、雇用の改善、消費の継続的な増加、財政状況の改善という成果を上げている。」(主に意見より)
これについては2013年4月に黒田総裁が波及経路として次ぎのような説明がなされていた。
「物価安定目標の早期実現を約束し、次元の違う金融緩和を継続することにより、市場や経済主体の期待を抜本的に転換する効果が考えられます。先ほどお話ししたデフレ期待の払拭です。予想物価上昇率が上昇すれば、現実の物価に影響を与えるだけでなく、実質金利の低下などを通じて民間需要を刺激することも期待できます」(2013年4月12日の黒田日銀総裁の講演より)
予想物価上昇率は上昇せず、現実の物価に影響を与えられていないにも関わらず、どのような経路によって「雇用の改善、消費の継続的な増加、財政状況の改善」という結果が出ているのか。たしかに実質金利の低下による効果がなかったとはいえないものの、金融政策以外の要因、たとえば世界的なリスクの後退などによる海外初の要因が大きく影響していたとはいえまいか。
「2%「物価安定の目標」は、消費者物価指数の上方バイアス、金融政策の対応余地、グローバル・スタンダードの観点から堅持することが重要である」(主に意見より)
日米の消費者物価指数の過去推移などみてみると、基準となりそうな物価水準は明確に異なっている。2006年の量的緩和解除の条件に消費者物価指数のゼロ近傍というのがあったが、それは日本特有の消費者物価指数の水準を意識したものであったはず。グローバル・スタンダードを持ち込む必要があったのかも再確認する必要はあるのではなかろうか。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。