各都道府県の労働局が集計した、来春卒業予定の高校生の就職内定率(9月末現在)が発表され始めました。いずれも30%台から40%台であり、極めて低調です。
山形県 高校生37.1%
茨城県 高校生37.5%
長野県 高校生42.2%
大分県 高校生44.1%
鹿児島県 高校生37.2%
記者クラブメディアは、就職内定率低迷の原因を「景気の悪化で求人数が減ったため」としていますが、肝心な部分が抜け落ちた欠陥報道だと思います。
私は以前の記事に書いたとおり、8年前から自社で新卒採用業務に携わっています。
新卒採用業務を始めた当初、自社には創業家出身者以外に大卒以上の学歴を持った社員がおらず、高卒が多すぎて人員構成上バランスが悪い状態でした。
そこで私は、大学生や大学院生の新卒採用を自社で初めて行うことを決めました。
その結果、30名規模の会社で大学卒12名、大学院卒1名となり、いびつな人員構成は解消されました。
今後は、しばらく止めていた高卒者の新卒採用も復活させる必要があります。しかしながら、そこには壁が立ちはだかっています。
簡単に言うと、高校生を採用する場合、企業側の負担が大卒者の採用とは比べ物にならないくらい大きいのです。
具体的な採用スケジュール(群馬県の場合)は以下の通りです。
1.卒業前年の5月下旬から6月上旬にハローワーク主催の企業向け説明会に参加
2.6月20日からハローワークに求人票を提出可能
3.7月1日からハローワークが内容を「審査」した求人票を各高校に提出可能(注1)
4.7月20日頃から三者面談や会社見学が始まる
5.8月上旬から各高校では「選考会議」が始まる(注2)
6.9月5日から各高校が企業側に採用関係書類を送付
7.9月16日から採用試験が解禁(注3)
(注1)求人票提出は郵送も認められているが、担当教諭に手渡ししないと、高校生の目に入らないように放置される場合が多い。
(注2)「選考会議」は「誰をどの会社に応募させるか」を決める、教諭たちによる談合。
(注3)高校生は複数の会社の採用試験を同時期に受けることは禁止されている。不採用通知が来ない限り、2社目を受験できない。
大卒者を募集する場合、Webを中心とした採用媒体を通して、学生が自由に採用試験に応募することができます。
高校生を採用するためには、頻繁に各高校の進路指導教諭に挨拶に行き、個人的に仲良くなっておかないと、学生に自社を紹介してもらうことはまず無理です(就職氷河期を除く)。
中小企業の場合、採用担当者が何人もいることは稀であり、他の業務と兼務していることがほとんどです。
費用対効果を考えれば、高校生の新卒採用に取り組むことのできる会社は少ないですし、「選考会議」に象徴される前時代的な談合システムには付き合っていられません。
高校生の募集に、当事者ではないハローワークが介入するのも意味不明です。
「高校生の内定は1人1社」などという申し合わせを廃止し、大学生と同様の自由応募を解禁するべきです。
そうすれば、高校生が希望の職に就ける可能性は高まるものと私は確信しています。
(長井利尚 株式会社長井精機取締役 twitter)
コメント
御社が新卒一斉採用を止めて、既卒者を採れば、何も問題ないのではないでしょうか。高卒でも、既卒者の採用には、何ら規制はないでしょう。
また、「大卒以上」と「高卒」とで、バランスを取らなくてはならないという考え方も、理解に苦しみます。それなら、男女のバランスはどうなっているのでしょうか。出身地方や血液型のバランスは?
全くおっしゃる通りです。
この高校生を採用する厳しい取り決めが高校生を守るため、という理由で未だに続いているのが理解できないところです。もしかすると、昔はこの規制が有効だったのかもしれませんが、今は明らかに時代錯誤で、高校生の就職を妨げています。
高校を卒業して就職先が見つからなかった人たちはどうやって職を探すか、ハローワークかタウンワークなどの求人誌で探すのですから、結局自由採用でなければ、高校生自身が報われません。
最近では大学全入時代になり、なかなか高校生の就職については語られることが無くなってきたので、こういう記事は大変貴重です。
ありがとうございました、勉強になります。
>agora_inoue氏
>既卒者を採れば、何も問題ない
長井さんは自分の会社が高卒を採用できないことを嘆いているのでなく、新卒の就職難を心配されている。高卒の就職難の原因に不合理きわまる制度、手続き、慣習があることを問題提起されているのです。
私も今日初めて高卒の就職難にこのような障害があることを知りました。マスコミはこの問題をもっと報道すべきですね。ハローワークは事業仕分けで廃止すべきです。
そもそも、学校とういう存在が保湿が必要ほど、からからになっています。。
稼ぐ力がない、集客の苦労をもっともしらいない、いや。対極にある存在である。教師がめちゃくちゃにしている。。正直、、間違ったら方向性に子供も教師も努力している。。
オープン化への逆行。
戦後のレジームをどうしてものこしたい。
自分達の形を残したい、しかし、
現実は、どんどん便利になる。
逆行はできない、、しかし、
電気とガスは止まらず。
実感できない危機感。
実感できる危機感として、高校の就職問題がある。