本当の就職難対策とは - 小林秀行

アゴラ編集部

トヨタの新しい新卒の雇用方針が話題になっている。そのニュースとは、2012年4月入社の新卒採用から、大学・大学院を卒業して3年以内の既卒者 を、新卒扱いとして採用すると発表したこと。日本企業では「新卒」という看板の価値は異常なまでに高い。そしてそれこそが、就職活動の早期化や無意味な大 学の留年を引き起こしてしまっている原因だ。こうした問題に政府や日本経団連は産業界に要請を出しており、今回トヨタはその要請に沿って採用するに至ったのだ。


「卒業3年以内は新卒扱い」というのはいかがなものか。私はこれが、周囲の人を見て良くない方向に作用するのではないかと感じている。その代 表例として、「大手病」学生の存在があげられる。大手病とは、ブランドや安全ばかりを重視し、大企業しか受けない状態のこと。自分の欲求ばかりが先走り身 の丈にあわない企業ばかり狙い、そして不採用を繰り返す。今回の雇用方針は、このモラトリアム期間をむやみやたらに伸ばすだけではなかろうか。一部の学生 のことと思われるかもしれないが、実は優秀大学ほどこの傾向はあまりに多い。

就職難の早期改善は急務であることは間違いない。就職氷河期のというのも数値を見れば明らかだ。しかしながら本当に職がないというわけではな いだろう。農業、介護、中小企業など、まだまだ働き手が足りなくて困っている産業はたくさんある。本当に必要なのはこうした雇用のミスマッチの是正であ る。新卒期間を延ばしたところで雇用の受け皿が広くなるわけではなく、就職できない学生がただ単に後回しになるだけだ。こう考えれば、先日の新規就農者へ の100万円の支給制度のほうがよほど評価できる。

私はこの制度が就職難への対応策というより、むしろ再チャレンジ文化を作るための政策色が強いように感じる。再チャレンジ制度も同じく大きな 課題になっており、同日のニュースにも雇用の安全網のスリム化への見直しが行われたばかり。何にせよ、より良い雇用制度ができるよう皆で議論していかなけ ればならない。
(小林秀行 神戸大学経営学部 忽那ゼミ卒業生)

コメント

  1. armedlovepower より:

    >「大手病」学生の存在

    彼らは何も悪気があってそうしているのではなく、それだけが正義だと幼少から親から学校からそしてマスコミから、各方面のエライ人たちから、そして厳しい現実の社会から、今まで教えられて育ったからには、どんなに批判の矛先を突きつけられようと、決して聞き入れることなどないと思います。

    一番の問題は、彼ら若者には、自分の人生で、自分の実現したい’夢’が無い事だと思います。(これは若者に限ったことではないですが)

    生まれてこのかた、ただひたすら全体(組織)の意思に合わせる訓練を受け、あらゆる行動が自分の上位者のイイナリで、ただひたすら過去の事例を記憶させられる教育を受け、自分で新しいことを考える機会や未知の領域への成長のための機会を奪われ続けていれば、未来に向けた発想や想像力といった人間として最も大事な’夢’を作り上げる力を全く持たないそして魅力もセンスもないロボット人間ばかりになり、やがて統一されたロボット達はみんなして同じ大学や大手企業を目指す事しか、頭の中に選択肢はありません。

    とうぜんそんな人材は企業もあまり採用したがらず、もちろん優秀な人材の供給が途絶えた(人材がこない)企業は衰退の一途という、これまでの社会システムの成果が、今の状況にその末路として現実化しております。

    私の考える解決策は、あらたな社会制度やシステムなどの別の依存対象への乗り換えといった、これまでと同じような他人まかせな行動ではなく、個々人の自立が先だと思います。