世界同時株安の中で小さな希望の蕾を見つけた

藤沢 数希

この一週間、株式市場は大きく下落し、基軸通貨のドルも激しく売り浴びせられた。日本国政府はお約束の為替介入をして、お約束のように国民のお金のいくらかを市場参加者に施した。日銀が国民のお金で株のETFを買っているとの噂だ。市場参加者は、こういった大きなクジラが市場で泳ぎだすたびに、周りに飛び散る黄金の雫を集めている。量的緩和により、大量の金融資産を抱え込み、世界最大のヘッジファンドと呼ばれる米国のFRBが管理するドルという名前の通貨が下げどまらない。ヨーロッパでは、イギリスで暴動が起こり、ギリシャやスペインは財政破綻し、イタリアも破綻の一派手前で死線を彷徨っている。日本では相変わらずの猛暑の中、電力会社は綱渡りをするかのように、電力供給を続けている。日本国民の大切なお金を不必要で余分な化石燃料に交換しながらも。韓国と北朝鮮はまた銃撃戦をはじめた。空が今にも落ちてきそうな不機嫌な世界の中で、それでも筆者はいくつかの希望の蕾をみつけることができた。


ひとつ目は、北海道の泊原発が再稼働に成功したことだ。正確には、定期点検中に実際に発電しながらテストをしていたのであるが、それが止まらず、通常の営業運転に移行する。現在、被災地の東北は今にも計画停電が始まりそうな深刻な電力不足に見舞われているが、節電と老朽化した火力発電所の復活で電力供給力に余裕が出てきた東京電力と、原発の再稼働に漕ぎ着けた北海道電力が、東北電力に電力を融通することができるだろう。被災地の方に、また不自由な思いをさせなくてすむ可能性がわずかばかり高まった。筆者はホっと胸をなでおろした。

そしてふたつ目が、放射能に対する恐怖心を国民に撒き散らし、原発の再稼働に反対していた、孫正義氏が、おそらく反原発運動から身を引きそうなことだ。筆者は、先日の孫正義と堀義人の対談を見ていた。孫正義氏は、反原発運動や自然エネルギーといったものにすっかり飽きてしまっていることを見逃さなかった。おそらく最初に当たった「専門家」が非常に偏った人たちで、初動を大きく誤り、ここまで突き進んでしまったのだろう。誰にでも過ちはある。そして偉大な企業家は、自らの過ちを認める度量も持ち合わせているものだ。国民が孫正義氏に今望んでいることは、ソーラーで電気代を釣り上げ、社会の弱い立場の人々を困窮させることではない。国民が孫正義氏に望んでいることは、iPhoneの通信速度の遅さや、電波の範囲が狭いことを、少しずつ地道に改善することだ。

みっつ目は、国民から支持されなくなり、党内でも完全に孤立し、それでも人気を取り戻そうと、思いつきで国の根幹に関わる政策に対して次々と不適切な発言をし、日本国政府を混乱させ、国際的な信用を毀損させ続けた、菅直人首相がとうとう辞任するというニュースである。彼は日本国民にとって、その利益よりもはるかに害の方が大きい人物なので、彼の辞任は日本国民全員が心から喜ぶべきことである、と筆者は思う。

暗いニュースが世界を駆け巡った一週間だったが、筆者は、小さな希望の蕾を見つけた。草木は上になかなか伸びない時こそ、見えないところで根を下に下にと伸ばしているのだ。日本国民は、こんなことで負けることはない。菅直人や孫正義が日本国民に課した過酷なストレステストに、今、国民は合格しようとしている。