総務省『周波数オークションに関する懇談会』が実施した「中間論点整理」に対する意見募集の結果が、9月30日に公表されている。小さい字がぎっしり詰まった不親切な資料だが、注意深く読むと興味深いことがわかる。
意見を提出したのは通信事業者12社、放送事業者16社、メーカー1社、その他企業4社と個人86名であった。個人の意見数が飛びぬけて多いのは、いわゆる「韓流」に偏ったテレビ放送に対する不満を表明する意見が多く出たためだが、それ以外にも「新たな国庫収入となる」「競争ある市場が国民の便益に資する」といった前向きの意見が提出されている。代表的なものを紹介しよう。
- 国民の財産は本来平等に使用されるべきである所、現状ではテレビ局などは電波を格安で使用し、新規参入もままならない不平等な状況になっていると思います。オークションという開かれた形で、新たな事業者にも参入のチャンスが与えられ、税収も大幅に増えて利点だらけに見えます。
- 電波は国民共有の有限稀少な資源であり、国民全体のために活用されなければならないはずなのに、現状この50年間特定企業のみの利潤追求に使用されている問題を解決しなければならない。
- 当該制度はイノベーションの推進 、国際競争力の強化等、日本の未来の中長期的な発展に於いて重要な役割を担っていると考えます。
意見募集は周波数オークション制度への賛否を問うものではないため、提出された意見に賛成・反対が明記されているわけではない。しかし、上に紹介したような意見を賛成に分類すると、個人86名のうち70名が賛成意見を表明し多数派となった。周波数オークションの導入は民意になり始めたのかもしれない。
通信事業者の中に2社、オークションに賛成する方向での意見を提出した企業がある。ケイ・オプティコムは次のように書いている。
オークション実施にあたり、落札額が際限なく高騰することを防ぐ目的として、例えば、落札事業者に対して、事前に定めた接続料でMVNOへ開放することを義務付ける施策等の導入が考えられます。また、周波数の死蔵を防ぐ目的として、落札後一定期間内に適切なサービスを提供しない場合、国が免許を取り上げられるようなルールを導入することも重要と考えます。
これらの施策は、結果的にモバイル市場への参入事業者を増やし、サービス競争の活性化にも寄与するため、非常に有意義であると考えます。
もう一社は、Wireless City Planningであった。同社は「オークションの対象もしくは非対象とする帯域の扱いとして、次の観点より、放送帯域と通信帯域は区別することなく同等の扱いとするべきであると考えます。」として、放送帯域も対象とすべきと主張している。
NTT西日本に対抗して関西地域で光ネットビジネスを展開している、ケイ・オプティコムが賛成意見を出したことは興味深い。今後、周波数オークションが実施された際には入札に参加する可能性があるからだ。
前報で、KDDI総研から特集記事が出たことを紹介したが、潮目は変わり始めた。明日10月18日には、第3回目のウラ懇談会が生放送される。
山田肇 - 東洋大学経済学部