電波は土地に例えるとわかりやすい

山田 肇

周波数オークションについてこのところ記事を何本か書いてきたが、「わかりにくい」という意見がまだ来る。そこで、電波を土地に例えて基本的な事項を説明しよう。

電波の用途区分が複雑すぎるとは
農地法において、農地とは「耕作の目的に供される土地」とされていますが、農地で育てる作物は所有者が自由に決められます。電波法では用途が319にも区分され、ここはニンジン用の農地、ここは大根用の農地というように、電波部が細かく作物の種類(電波の用途)まで指定します。「種まきは3月下旬の10日間で、農薬の散布は…」というように役所に指示されることはありませんが、電波の場合には140にも及ぶ無線設備規則に関係する告示への準拠が強制されています。

比較審査とオークションの違いは
空き地ができたとき、次の利用者はどのようにして決めるのでしょうか。希望者を並べ「資金はあるか」「建物はいつ出来上がるか」「賃貸条件は」など一つひとつを審査し、もっとも高く評価された希望者にタダで利用させようというのが比較審査方式です。これに対して、いくらでその土地を購入したいか入札させ、最も高額のものに権利を与えるのがオークション方式です。


比較審査が談合と言われるのはなぜか
デパート業者を集め、銀座は三越だけ、日本橋は高島屋だけというように役所が営業場所を指定することはありえません。電波の場合には「ウィルコムの救済で苦労をかけたから次はソフトバンクに免許を出す」という方針のもとに、ソフトバンクが最も高く評価されるように比較審査基準が作られたりする上、他の事業者は自社が次に選ばれるようにと、それを見て見ぬふりしています。どうしてもある業者に土地を利用させるため「既に持っているビルの入居率」を比較審査基準にするというようなことがあるでしょうか。

なぜプラチナバンドというのか
土地に銀座の一等地と山間僻地があるように、電波にも経済的価値の高い周波数と低い周波数があります。比較審査方式では両方ともタダで手渡されますが、オークションにすれば経済的価値の高い周波数には高額がつくことになります。

オークションは新規参入者に不利では
江戸時代から続くそば屋は土地を実質的にタダで利用しています。これに対して、新たにそば屋を始めるものは店舗を借りるか買う必要があり、不利な条件からスタートします。ほとんどすべてのビジネスで新規参入者は不利ですが、それを承知で挑戦するのが創業者精神です。

談合は業界に悪影響を与えているか
談合体質が批判されることが多い建設業界は海外への進出が遅れています。同様に、海外で大きな事業を営む携帯事業者は存在しませんし、日本企業を合計しても携帯電話機器の世界シェアはわずかです。談合体質は競争力に悪影響を与えています。

山田肇 - 東洋大学経済学部

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