なぜセンター試験でミスが発生するのか

山田 肇

昨日終了したセンター試験で、「公民」と「地理歴史」の問題冊子配布にミスが発生し、また、説明に時間がかかり過ぎて予定通り試験を開始できなかった会場が出た、と批判的な記事が多くの新聞に掲載されている。大学入試センターは15日夜に記者会見し、「多数の受験生の方にご迷惑をお掛けし、大変申し訳なくおわび申し上げます」と陳謝したが、トラブルを招いた責任については明言しなかったという。

今回のセンター試験は全国709会場で、55万人以上を対象に実施された。このうち4500名ほどが影響を受けたそうだ。なぜ、そのようなミスが起きるのだろうか。


その原因の一つは、実施主体である大学入試センターの秘密主義だ。毎日新聞が1月11日に『センター試験 受験生に「イエローカード」 不正の疑い、机の上に提示--14、15日』という記事を掲載した。それに対して、大学入試センターは「関係者以外の者は知り得ない情報である。……報道関係者の取材には……情報提供することのないようにお願いしたい。」という注意文書をわざわざ各試験会場(各大学)に配布している。これに象徴されるように、詳細は一切外に出さないというのが、大学入試センターの方針である。

『監督要領』という冊子がおよそ一月前に試験監督全員(大学教員)に配布され、事前に読み通すことになっている。冊子には、問題の配布や回収方法などから、「解答はじめ」といったセリフをどの時刻にどの順番に発するかまでもがくわしく記述されている。その通りに進めることで、全国の受験生が平等な条件で受験できるようにしようというわけだ。しかし、『監督要領』は206ページという分厚さのため、事前に全体を読んでくる試験監督は少ない。

この『監督要領』の冒頭には「センター試験実施関係者以外の手に渡らない」「目にすることのない」「業務以外の目的で使用しない」と書かれている。

英語のリスニング試験にはICプレイヤーが用いられている。導入初期には、試験後、ICプレイヤーを持ち帰ってもよかった。しかし、今は会場で回収され、「報道関係者による写真撮影も許可しない」ことになっている。

なぜ、これほどすべてを秘密にする必要があるのだろうか。試験の進め方を知っていれば、試験監督が手順をミスしたら、「おかしいのではないか」と受験生が声を出せたはずだ。そもそも、試験前の説明時間も短くできる。ICプレイヤーも持ち帰らせれば、高校などで操作を事前練習するのに利用できた。

今回のミスを受けて大学入試センターは改善策を検討することになっているが、『監督要領』に注意書きを追加、という策しか出てこないはずだ。携帯電話の不正利用防止などのために、毎年のように厚さを増していた『監督要領』は、さらに厚くなる。その結果、事前に読み通す試験監督の数はますます減り、新たなミスが発生するだろう。悪循環を断つには、情報化社会にそぐわない、大学入試センターの秘密主義を改める必要がある。

山田肇 - 東洋大学経済学部