「入社後を考えて就活すべきと思うが」と言った所で、何処でも良いから有名企業に潜り込みたい一心の就活生からは、「兎に角、就職しない事には話にならない」、と返されるのが落ちと思う。
学生の不安を煽るだけで、何の具体的な解決策を示す事の出来ないマスコミも悪いし、更には彼らの不安に付け込み、何の効果もないセミナーでマネタイズを図る不心得な大人が多いのも事実である。
しかしながら、企業への入社は社会人としての始まりに過ぎず、本当の人生はここからスタートすると言っても良い。仮に、回りが羨む超一流企業に入社出来たからといって、そのまま順風満帆な人生が送れる保証等、何処にもない。
一度冷静になって、就活に臨むスタンスを熟慮すべきであろう。
大企業のぬるま湯生活に飽きたらず、退社して起業した者や、財閥系総合商社から子会社に経営者として出向中の友人が何名かいる。
時折、話題に出るのが大企業社員の人材の劣化である。
具体的に言ってしまえば下記の様な感じであろうか。
5% 優秀で何処でも通用する。
15% 優秀な5%との組み合わせで、それなりに会社に貢献可能。
「まあ優秀」と言った所。
60% 言われた事を素直にやるだけ。早い話、派遣社員で代替可能。
20% 殆ど使えない。使う為に苦労する位なら自分でやった方が早い。
誤解のない様にに言っておくと、これは飽く迄、営業・企画と言った基幹部門の社員に就いてであり、事務職は念頭に置いていない。
冷徹に考えれば、最下位の20%は世の中が雇用調整に寛容になれば、直ちに馘首されるであろう、リストラ予備軍である。
次の60% は、経営者としては出来れば「非正規社員」に代替したいと考えている層である。従って、会社生活が居心地の良い物であるとは決して思えない。
最下層の20%の様な馘首はないにしても、「同一職種、同一賃金」の流れの中で、今後非正規社員と同じ待遇に甘んじる事となる可能性が極めて高い。
何と、どうも近い将来、80%が入社時思い描いたバラ色の夢とは真逆の、暗澹とした会社生活を送りそうである。
鶏口となるも牛後となるなかれが軽んじられ、猫も杓子も「寄らば大樹の陰」に走り過ぎたと思う。高度成長時代はとっくにピリオドを打ったと言うのにである。
志望企業の選定に際しては、規模、知名度等に重点を置く事無く(こんなもの、所詮本人や親の見栄にしか過ぎない)、自分のやりたい事をやらせてくれる企業を本命にすべきである。
そして、企業のトップと何度でも面談し、企業の目指す方向を確認すると共に自分の夢を説明すべきである。
お互いが納得出来れば入社すれば良い。
言うまでもなく、入社後は最上位の5%入りを目指し努力すべきである。それしか、若者が自分の未来を切り開くすべはない筈である。
時代が大きく変わったと言うのに、30年前と同じ価値観で就活に望むのは奇異であり、滑稽である。
山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役