公務員は相対評価にすべきか、絶対評価にすべきか --- 城 繁幸

アゴラ編集部

7日の読売新聞(夕刊)に、維新の会の大阪府、市職員条例案についてコメントした。結構重要な話なので、ここで総括しておこう。


まず維新案についてだが、評価方法は評価分布の指定による相対評価。つまり、S(5%)、A(20%)、B(60%)、C(10%)、D(5%)の5段階ごとに評価をつけられる割合があらかじめ指定されたもので、これ自体は民間企業でもポピュラーな方法だ。

ただし、この方法にはデメリットもある。単純に予算管理の必要から分布を決めているだけの話であり、そんな評価分布通りに成績をつけられる部署なんてほとんど存在しない。評価者が相当気合を入れないと、現場は相当ギスギスしたものとなるだろう。

一方、役所側の考えているプランでは、相対評価ではなく絶対評価を行うとする。各人の成果なんて、組織のトップが白黒つけたり、ましてや割合を決めたりできるわけがない。あくまで現場の管理職が絶対評価で行くべきだ、というのはまごうことなき正論である。

ただし、昨年末賞与で一般職員2万871人のうち、C・D評価がたった9人しかいないという超大盤振る舞いをしているお役所が言っても、説得力はゼロである。そんなもん絶対評価でもなんでもなくて、もはや査定放棄といっていい。

という具合に、ここだけ見れば、維新案で良いかなという気もする。(民間企業はそれでやっているわけだし)

ただし、問題なのは、維新側が2回連続D評価の職員に対する分限免職の適用を視野に入れていることだ。極論すると、上位一割に入る人材であっても、そういう層の多く集まる部署に配属されてしまうと分限免職の危機に直面するということだ。これは導入前にも導入後にも揉めに揉めるだろう。

というわけで、個人的には、

・あらかじめ各部署ごとに予算の総枠を決めた上で絶対評価をさせる
・評価者の研修にウェイトを置く

のが望ましいと考える。
予算の枠を設けておけば、全員高評価にしたところで原資の額は変わらず、各人の貰いが減るだけの話だ。別にそれならそれで構わないが、本当に高い成果をあげている職員や貢献していない職員に対しては、それなりの評価をつけたいと評価者なら考えるだろうし、まずはそういう風に研修で叩きこむのが筋である。

もしくは、分限免職だけを当面外しつつ、評価分布による相対評価の導入でも良いだろう。少なくとも民間レベルには追い付けるはずだ。

一応、維新案ベースの条例案(※編集部注:2012年2月18日の毎日新聞大阪朝刊)で押し切るようだが、維新の会は以下の論点は評価制度とは別に考えた方がいい。

・総額での人件費カット
・問題職員の分限免職

これらはこれで重要なポイントだと理解するが、それを評価制度にねじ込んで一挙解決というのは、経験上さらなる摩擦と余分な手間を生む結果に終わるはずだ。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2012年2月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。