ロイターが、凄まじいばかりの韓国サムスンに依る日本人技術者の引き抜きを報じている。
韓国サムスングループが日本人技術者の引き抜き攻勢を強めている。巨額の赤字に苦しむ国内電機各社による事業縮小と人員削減。開発環境や処遇が悪化すれば優秀な技術者が自ら会社を離れても不思議はない。日本が先行する技術が人材とともに流出すれば、大きな競争力格差が生じかねず、逆境の今こそ持ち前の技術をビジネスに活かす人材戦略が必要だ。
ある技術者に提示されたサムスンの処遇はこうだ。役職は取締役。年収は6000万―1億円で、契約期間は3―5年。年収とは別に、転職に伴う契約金が数千万円支払われる。専属秘書と運転手付きの車が支給されるほか、30坪超の家具付きマンションが無償貸与される。日本への帰省費用、家族の韓国への招待等も会社が実費負担する。
企業が生き残る為には、「知恵比べ」、「アイデア勝負」、「スピード競争」を不断に続け、勝ち残って行くしかない。
家電メーカーの場合は優秀なエンジニアこそがこれらの源泉であり、それでなくても手強いライバルメーカーのサムスングループに引き抜かれていては話にならない。
更に言えば、今回の記事は韓国サムスングループに特化しているが、韓国のライバル企業がこれを指を咥えて傍観しているなど有り得ない。
台湾や中国企業も同様である。
尤も今回、シャープに対し10%の出資を決めた台湾・鴻海精密工業等は羽振りも随分と良い訳で日本人技術者の引き抜き等と言った、ちまちました事に興味はなく、シャープ「丸呑み」を考えているのかも知れない。
洗濯機器・家庭用冷蔵庫事業が、昨年、山洋電機から、中国、ハイアール・グループに売却されたのは記憶に新しい。
国内家電メーカーは、今や韓国、台湾、中国の草刈り場に堕してしまったのではないか?
それでは、どうすれば生き残りを図れるのであろうか?
ここまで事態が重篤化してしまっては、生産コストが格段に安い、ベトナムやこれからのミャンマー辺りに工場をダイナミックに移転するしか、方策は残されていない様に思う。
政府も日本政策投資銀行に依る支援を中小企業に限定せず、緊急、応急処置として国内家電メーカーにも対象を広げるべきと思う。
海外移転に依り国内に失業問題が生じるか、現状を放置して国内家電メーカーが馬糞の川流れの如く消失すると言う、無残な末路を回避すべきと思うのである。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役