新聞協会の「お笑い」意見書

山田 肇

政府は経費削減の一環で新聞の定期購読数を減らしている。削減は『まことに遺憾』との意見書を、日本新聞協会は野田総理大臣に提出した。

意見書は言う。

新学習指導要領では、思考力、判断力、表現力等を育む観点から「新聞」の活用が明確に位置付けられています。国を挙げて言語活動の充実を推進しようとするなか、新聞の購読部数削減により、政府が率先して活字離れを助長しているかのようなメッセージを国民に与えてしまうことが懸念されます。

ネットを通じて大量のテキスト情報が受発信され、人々はそれを読み・理解し・利用しているが、しかし、紙に定着していなければ新聞協会は言語活動とは見做さないらしい。その論理では、電子版も活字離れを助長するということになるのだが。


意見書には次のようにも言う。

国民の生活や利益を守るべき公務員は、日本や世界の情勢のほか、民意を絶えず把握する必要があります。そのためにはより多くの職員が新聞を読み、情報収集を行うべきだと考えます。

米国連邦政府の情報を知りたい場合、連邦政府サイトで必要な情報を探し読み・理解し・利用するのと、日本の新聞をめくって記事を探すのと、どちらがよいのか。有能な記者もサイトの情報を記事にすべて盛り込むことはできないし、編集によって正確さが損なわれる恐れがある。一次情報にこそ価値があると僕は学生に教えてきたが、それは間違いだと新聞協会は言うのだろうか。

紙の新聞は衰退産業である。その衰退を止めたいという気持ちを表現したのだろう。しかし、毛嫌いすることなく、ネットに乗り出さない限り新聞に未来はない。

新聞には世論形成の大きな力が残っている。「民意」を作り上げることもできる。これを機に、新聞は「打倒野田」に動くのだろうか。

山田肇 -東洋大学経済学部-