松本氏のアゴラ記事、産業の国際競争力の高め方を拝読。深く共鳴する。
野田政権の看板政策は財政破綻回避の為の消費税増税である。基本的にはこの政策は支持する。しかしながら、増税は経済の疲弊と言う副作用を伴う為、抜本解決とは成り得ず、破綻時期を先送りする効果しかない。
従って、今回松本氏が提言する様な国際競争力向上の如き産業・経済政策と併行して実行されねばならないと考えるのである。
良い機会なので、松本氏には遠く及ばないものの思案を述べてみたい。
先ず第一は正しい現状認識である。
一月のアゴラ記事、今回の白川日銀総裁講演内容から日本再生のシナリオを考えてみるで説明しているが、下記の点はしっかり押さえる必要があると思う。
講演内容を読んで印象的な箇所は、日本のここ10年(2000-2010年)の就業者当たりの成長率は先進国で一番高く、総合と一人当たりが逆に一番低いという点である。早い話、高校を卒業したばかりの若者から、定年まじかのお父さん迄、「日本の、現役世代は先進国で一番頑張っているのである」。
最近、経済界では暗い話が多いが、、日本の、現役世代が先進国で一番頑張っているのも今一方の事実である。
一方、産業の国際競争力は斑模様である。
トヨタの如き、世界市場で実績を上げている企業の国際競争力は当然の事ながら高い。
それに比べ、農業の如き規制と補助金頭漬けの産業は、弱いと言うか、最早産業の体を成していない。
地域独占に保護された電力会社の脆弱性は、今回の3.11を契機に一気に露見した。
護送船団方式に守られた金融も、日本の競争力の足を引っ張っているのは確実である。
活躍を期待したい通信業界も、長らく続いた一社独占体制の「電電公社」が撒き散らした害毒を一掃するには未だ時間が必要である。
既に、百点満点で99点を取っているトヨタに100点を求めるよりは、0点(或いはマイナス百点)の農業に、例え30点でも取って貰った方が効率は遥かに良い。
その為には、先ず市場を開く事である。
何も難しい事ではない。現在訪米中の野田首相がオバマ大統領に対し、農産物の市場開放を伴う、TPP加盟を確約すれば良いだけの話である。
農業関係者は、そんな事をすれば国内農業が壊滅すると文句を言うであろうが、これしきで駄目になる様な産業であれば、保護に値しない。
電力に就いては、再度経産省官僚OB、古賀氏のTweetを下記参照する。
@kogashigeaki 今晩の報道ステーションに少しだけですが、ビデオでコメントします。東電の事業計画。何故株主と銀行を守るのか?本来責任を取るべき者を守って、いきなり国民に負担を求める。さらに、事故の最大の責任者である経産省が東電を自分のものにして、事実上の天下りを派遣する。焼け太りの極致だ。
東電の国有化は電力産業の農業化になりかねない。極めて危険な兆候と思う。
そして、東電に限らず、国内電力会社の「地域独占」に終止符を打ち、「発電」、「送電」、「配電」毎に自由で透明性の高い電力市場を創出し、各参入企業を競合させねばならない。
何故なら、競争する事によってしか「競争力」の向上は有り得ないと思うからである。
私が、徹底的に、何故「天下り」を許してはいけないのか? と主張するのも、根底にあるのはこの考え方である。
天下りを受け入れる様な団体は、企業であれ、政府系の団体であれ、徹底して自由で透明性の高い競争を嫌う。好むのは当然の事ながら、政府に依る意味不明な「規制」である。
繰り返しとなるが、「消費税増税」は飽く迄「財政破綻」に至る時間稼ぎに過ぎず、その間に、国内産業の競争力を高め、その為の一丁目一番地たる「規制緩和」に取り組むべきと思うのである。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役