小黒先生のアゴラ記事、10年後の財政赤字は65兆円超?を拝読。実感するのは、今更ながらであるが、お尻に火がついてしまった日本の債務問題である。
一方、昨日発表の産経新聞、フジテレビの合同世論調査結果は、相変わらず消費税増税に対し「反対」が「賛成」を上回ると言う、厳しい内容になっている。
産経新聞社とFNNの合同世論調査で、政府が提出した消費税増税関連法案に明記された平成27年度までに2段階で税率を10%に引き上げる方針について、反対が48・6%と賛成の44・7%を上回った。
調査を担当した人間に取っては当たり前の話であるが、調査に先立って「調査設計」が立案され、なるべく好ましい結果が出る様に、調査対象を絞り込んだり、或いは、設問の仕方を工夫する。
こういうやり方での反対50%と言うのは、実質反対70~80%を示しているのではないか?
それでは、一体何故国民はここまで頑なに反対し続けるのであろう?
その第一は、政府の説明不足であると思う。
このような状況において、野田総理は「政治生命」をかけ、税制改革法案を成立させようとしているが、もし同法案が不成立となった場合、今後10年間で日本財政はどうなるのか、考えてみよう。
野田首相は「不退転の決意」とか、「政治生命を賭して」以外、結局何も説明していないのではないか?このフレーズは飽く迄、「意気込み」に過ぎず、私も含めて、国民の大多数は野田氏が引退しようがしまいが何の興味もない。
知りたいのは、そして国民が理解せねばならないのは、「何故増税が必要なのか?」と「何故消費税でなければならないか?」と言う2点だけである。何故、国民に向かってきちんと説明しないのか不思議でしょうがない。
先ず、前者に就いては、辻先生の以前のアゴラ記事、財政の不都合な現実を参照して、数学の苦手な人にも判り易いA4一枚程度の資料を作成すれば良いのではないか?
次に、何故消費税でなければならないかである。
これも左程複雑な話とは思えない。
千葉県庁HP経由であるが、財務省HPよりの最新資料を参照する。
先ず気付くのは、日本は「法人税」が突出して高い事である。従って、国際水準に準拠して税率を下げる事はあっても、増税など決してやるべきではない。これ以上増税すれば企業がシンガポール等に逃避してしまうからである。
ピンポイントで現役世代、サラリーマンを直撃する事になる所得税増税も実質不可能である。それでなくともサラリーマンに認められる「控除」の中身は少なく、これ以上の不公平は許容されない。それに、そもそもサラリーマンは疲弊している。
従って、消去法から増税可能は「消費税」のみと言う事になる訳である。知っている人には当たり前の話かも知れないが、案外と知らない国民も多いのではないか?
アメリカから帰国後、野田首相は「不退転の決意」、「政治生命を賭して」と言った国民の耳にたこを増殖させるに至ったフレーズを封印し、今少し実質的な説明を誠意を持って繰り返しては如何であろうか?
橋下大阪市長の説明の中身に就いては、正直首を傾げる事もあるが、兎に角、少しでも国民に理解して貰おうと、ありとあらゆる手段で国民に説明し、説得を試みている。
そこが、橋下市長の人気の秘密と思う。これをポピュリズムと批判するのは容易いが、国民が少しも理解、賛同するに至っていないのに、何時までも「不退転の決意」、「政治生命を賭して」を繰り返すと言うのは、これはこれで、馬鹿か?怠慢か?と言う事になりはしないか?
説明不足と共に今一つ考えられる理由は、国民が支払った税金相当の行政サービスを受けていないと感じている点である。これも、野田首相はそうでない事をきちんと国民に説明する必要がある。
この財務省資料によれば、「税」と「社会保障」負担の総割合は日本が40%、一方ドイツが50%で僅か10%の違いしかない。
私は20代半ばでドイツに留学したが、その時感じたのは行政サービスが日本とは比べ物にならぬ程「安価」で「充実」している事である。
本当に「税」の払い甲斐のある国と感嘆した。
先ず、大学の授業料は半期(6ヶ月)で25マルク=2,500円であった。@400円/月に過ぎない。
何分30年以上も前の話であり、現在はどうかと調べた所、赤旗新聞の伝える所では、更に進化して、「無料化」に向け動いているとの事である。
ドイツで大学授業料廃止の動きが強まり、13日までにドイツ全16州のうち14州で廃止ないしは、これから廃止の方針を持つことになりました。2月にノルトラインウェストファーレン州議会が今年の冬学期(9月から翌年3月)から廃止を決めたのをはじめ、4月にはバーデン・ビュルテンベルク州で新たに与党となった90年連合・緑の党と社会民主党が2012年から廃止することを政策合意に盛り込みました。13日にはハンブルク特別市で同市の与党、社会民主党が12年冬学期からの廃止を決定し、ドイツの全16州のうち、大学授業料が残るのはバイエルン州とニーダーザクセン州の二つになりました。
確かに、@400円/月程度の授業料であればコストをかけて徴収するより、いっそ無料にした方が合理的な気がする。
一方、日本は国立大学でも随分高額である。
私の長女が4年前に地元の国立大学に入学したが、確か、入学金が26万円、半期の授業料が同様26万円で50万円以上を一括納付した記憶がある。無料のドイツとは偉い違いである。
学生寮も格安である。
私は、夜は大体友達と飲み歩いていて寝に帰るだけであったので、風呂とトイレが共有のシングルルームを借りていたが、家賃は@10マルク=1,000円/月であった。
食事も政府の補助が出ているので随分と安い。
私の通っていた学校ではメンザ(学生食堂)のメニューが松竹梅と3種類あり、価格は各々、@120円、@100円、@80円であった。
調べてみたら、今も大差ない。このブログによれば、値段は少し上がって、1.2~2ユーロ(120円~200円)といった所の様である。味は兎も角、ボリュームは下記を見て戴ければ充分であろう。
ドイツは天気の悪い日が多く、ほぼ毎日温水プールを利用したが、利用料金は何時間使っても@10円。
一方、私は横浜国際プールから歩いて7~8分の所に自宅があり、天気が悪くウオーキングが出来ない日は時々利用するが、2時間で700円である。正直高いなと思う。
大学が休みの時は、友人が良くドライブや小旅行に誘ってくれたが、日本の高速道路等とは出来が違うアウトバーンには、あの面倒極まりない料金所がない。何処まで走っても無料で、アウトバーンに勝手に乗り入れ、勝手に下りる。
私は、ちょくちょく出口を間違えるへまをやらかしたが、私の様な存在が予め考慮されており、直ぐに本線に戻れる設計となっている。日本ではこうは行かない。
そもそも、東京から関西迄高速を使って移動したら、高速料金だけでも軽く1万円は超える。
何でドイツでアウトバーンの無料化が出来て、片や日本はこんなに高額なのか?
更に鉄道も日本に比べればタダみたいなものである。
私の頃は確かユーロパスとか言ったが、25才以下で大学の学生証があれば200マルク=2万円で一年間有効なパスが購入出来た。今は、バーンカードと言うらしい。
元々、欧州の鉄道料金は1等で国内普通料金の半分から3分の1程度なので、バーンカード提示で更に半額になり信じられない程安くなる。矢張り、日本の鉄道は高過ぎるのである。
何故日本はドイツに比べ、こうも「税金の払い甲斐がない」のかの必然性であったり、今後改善に向けての具体的なシナリオを示す事が出来ない場合、中々消費税増税に向けての、国民の賛同を得る事が難しい気がするのである。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役