総務省が電波政策について二つ意見を募集した。一つは周波数再編アクションプランで、もう一つはホワイトスペース運用調整の仕組みである。いずれにも、用途ごとに異なる技術・異なる周波数を割当てる、専用無線の考え方が散見される。
アクションプランでは、400MHz帯について「新幹線におけるインターネット環境のブロードバンド化を図るため、平成27年の実用化を目標として、400MHz帯の割当てを1MHz幅程度に拡大するよう技術的検討を進める」との方針を示している。ホワイトスペースでは、エリア放送(エリアワンセグ放送)を「現在でも広く普及しているワンセグ対応携帯電話等での受信が可能である」と評価し、今後、普及していくとしている。また、災害対応ロボット等にもホワイトスペースを利用するとの方針が示されている。いずれについても専用無線化が図られる。
新幹線内でインターネットを利用するには、①新幹線内のWiFiアクセスポイントに接続し、アクセスポイントから先は400MHz帯で接続する方法と、②3G/LTEを用いて利用者が直接インターネットに接続する方法、の二種類がある。LTEの普及とともに利用者は②を選択し始めており、予定の平成27年(2015年)には、①による利用は激減する可能性が高い。市場動向を見据えれば、400MHz帯の追加割当は不要である。
エリア放送はiPhoneでは受信できず、またわが国だけのサービスであって、海外展開の見込みもない。一方、3G/LTEでは動画配信サービスが広く利用され始めており、エリア放送の内容(コンテンツ)を動画配信すれば、ワンセグ対応携帯電話等だけでなく、 iPhoneでも受信できるようになる。したがって、地域に特化した放送を提供するという意義はあるにしても、特別な技術と特別な周波数を用いるエリア放送を継続する理由はない。
災害対応ロボット等も汎用無線を利用できる。汎用無線は輻輳すると利用できないとの反論が予想されるが、複数の3G/LTE(汎用無線)に契約し、その場でつながる事業者を選択して通信する仕組みは、すでに簡易中継システムとして放送局等でも利用されている。移動通信ではプライオリティ制御も可能で、緊急時には災害対応ロボット等を優先すればよい。
このように、三つの事例は3G/LTEによってサービス可能である。汎用無線を最大限利用し、専用周波数はできる限り削減しよう。それが電波の有効利用を進める道である。
山田 肇 -東洋大学経済学部-