指先で操作する新しいコンピューター。それがタブレット端末です。このタブレットが世界のコンピューティングを変えようとしています。
現在タブレット端末の市場はiPadが圧倒的なシェアを持っています。SamsungがGalaxy Noteシリーズでチャレンジしたスマートフォン市場と同様に、世界市場を二分してやろうという意欲を見せている状況です。
今朝の日経新聞(2012年9月27日)第三面に、iPadに代表されるタブレット端末の市場が拡大し、企業ユースも加速しているという記事がでています。遅ればせながらMicrosoftも死力を尽くしてAppleとSamsung(with Google)の二強に割ってはいろうとしていること、日本市場にも来月参入するなどの詳細が載っています。先日Google自身もNexus 7という、若干小型の自社ブランドタブレットを投入し、この業界は本当に活気づいています。ノートパソコンを軸に成長してきた携帯型コンピューター市場は、2016年には全世界で出荷台数7億超に膨らむとの予測の中で、タブレットはその過半数を占めるようになると想定されているそうです。
MSの取組みは来月以降の成果を見なければなんともいえませんが、現在Appleの王座を奪取するチャレンジャーとして最有力なのは先述の通りSamsungです。彼らはAppleとは違ってペン入力を強く推す戦略をとってiPad(そしてiPhone 5)との差別化を訴えています。
同じ今朝の日経新聞には「人類の歴史上、創作はペンが引き出してきた」というSamsungのコメントが載っていますが、僕はこの主張が彼らの足を引っ張る、と思います。なぜなら、冒頭に書いたように、タブレットとは指先を使って操作する端末だからです。
コンピューターはマウスとキーボードを使って操作する、GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)が生まれてから一般消費者でも使いこなせる、ユーザーフレンドリーのツールへと進化しました。その後、PalmなどのPDAメーカーがマウスをペン(型のスタイラス)に置き換えるインターフェイスを投入しましたが、スタイラスをなくしがちだったり、他の操作をしようとしたときにスタイラス自体が邪魔になったりすることで、結果的にはそれほど普及せず終わりました。スティーブ・ジョブズがスタイラスを完全否定することで生まれたiPhone、そしてiPadに挑戦するために、Samsungは過去の亡霊をもう一度蘇らせようとしていますが、これは必ず失敗すると僕は考えます。これからのコンピューティングは、NUI全盛時代になるし、ならなければいけないからです。NUIとはナチュラルユーザーインターフェイスのことです。iPone/iPadにおいては指を使って直接タッチすることですし、Googleが開発しているゴーグル型情報端末では、視線を使って操作するNUIです。医療技術の世界では脳波を使って操作する義手などの開発が進んでおり、テクノロジーの視点でいえば、これからのハイテク商品はすべてNUI対応に進んで行かなければならないといえるでしょう。
指先を使うNUIで世界を席巻したAppleはさらに、Siriに相当の資金を投じて、音声によるNUIを次世代の最有力インターフェイスと押し上げようとしています。コンピューティング、というよりコンピューター制御とクラウドによって高度にネットワーク化されていく世界中のハイテク機器やインフラは、NUIによって誰にでも使いやすい環境へと進化していきます。いまさらペンで入力させようというSamsungの行為は、言ってみればノート型端末にしか通じない部分最適であって、木を見て森を見ない選択だと僕は思っています。
– 小川浩( @ogawakazuhiro )