スプリント買収の成功を祈る

山田 肇

ソフトバンクがスプリントを買収する方向で協議に入ったと報道された。ボーダフォンをはじめ各国キャリアは他国に進出し、多国籍化している。これに対して、ドコモが挑戦し失敗したこともあり、日本のキャリアは内向きだった。ソフトバンクの挑戦が成功することを祈る。

克服すべき課題は、日本に比べ加入者一人あたりの事業収入(ARPU)が少ないこと。ソフトバンクのARPUは4300円。これに対してスプリントは、全体の30%弱にあたる1367万人のプリペイド型加入者が足を引っ張り、3880円に留まっている(1ドル80円で換算)。しかも、後払いの加入者数は減少傾向で、プリペイド型加入者が増え続けている。これからは、後払い加入者(ARPU4582円)の割合を増やしていく必要がある。ソフトバンクが提供する「多様なコンテンツを組み合わせた通信サービス」の価値が問われる。


一方、イーアクセスの買収については「後出しじゃんけん」との批判が絶えない。このことはすでに記事にしたが、改めて、総務省が公表している開設指針(免許人選定のよりどころ)を元に説明したい。問題は次の条件である。

申請者が法人又は団体である場合にあっては、申請者により議決権の三分の一以上を保有される者、申請者の議決権を三分の一以上保有する者及び申請者の議決権を三分の一以上保有する者により議決権の三分の一以上を保有される者(申請者を除く。)(申請者と地域ごとに連携する者を除く。)が、本開設指針に係る開設計画の認定の申請を行っていないこと

選定を有利にするためダミー会社を動員して複数社から免許を申請するのを排除するよう設けられたのが、上の条件である。もし、イーアクセスの買収が700MHz帯免許人の決定以前だったら、この条件により排除された。これが「後出しじゃんけん」批判の根拠である。電波部は免許人を選定し直すべきだ。

山田肇 -東洋大学経済学部-