数日前に中国シャドーバンキングについて、昨日も中韓蜜月時代という内容で書かせていただき、同様のトピが続いてしまいますが、この話題は今後、もっと大きく取り上げられる可能性があると感じますのでこの問題が日本にどう影響し、どう対応すればよいのか考えてみたいと思います。
6月30日の日経新聞にアメリカ投資家、ジム・チェイノス氏の中国経済の悲観論が紹介されています。かなりの極論を述べているようにも感じるのですが、私は思わずうなずいてしまうほどでしたのでやはり、何らかの経済的ショックはやってくるとみるべきです。
経済史を紐解いても一国の経済が絵に描いたように右肩上がりに上り詰めることは100%ないと断言してよいかと思います。日本の経済史でも近代に入ってから国を揺るがすような大規模な不況は数多く経験しています。アメリカでも主なものだけでも30年代大不況や2008年のリーマン・ショック、欧州もEUというシステムが出来てから欧州危機を経験し今だその病状からの回復過程にあります。アジア諸国でも韓国などを襲った97年のアジア危機は韓国人にしてみれば忘れられない悲劇でした。
一方、なぜ中国はこれほどまでにうまく機能しているのか、といえば共産主義であることが理由のひとつにあげられます。共産主義経済、特に計画経済の場合、経済が黎明期から中産階級が富を分かち合いはじめる初期段階では資本主義より高く早く経済発展します。これは歴史的にも裏づけされており、たとえばソ連は1930年の世界大不況の際でも高い経済成長率を保つことが出来たことで当時一躍脚光を浴びたのです。
但し、その高い経済成長率の裏側には搾取という共産主義の典型的副作用が癌のごとく国家経済を蝕んでいったのです。ここを持ちこたえるには軍備増強を伴う地球儀レベルでの支配力の強化しかないわけです。この結果、第二次世界大戦を経て冷戦時代の突入、東欧を含めたソ連経済の影響を力で示し続けたわけです。
さて、先述のチェイノス氏が指摘しているのは中国は日本のバブル時代と同じである、ということですが、私はむしろソ連と同じ道を歩んでいる、と見ています。ならば、今後、中華思想を背景にした膨張主義が跋扈する可能性はあります。
それともうひとつ、今の中国の銀行システムは国家という心臓を中心に回っているのだから倒産しないという神話が果たして本当なのか、という疑問です。今の高利回りを謳った理財商品において誰が損失負担者か不明瞭であるならば将来不慮の事態が生じた時、起こりえるのは不幸を被る個人マネーと「飛ばし」と「損失補てん」で企業の本当の状態がわからなくなる企業体質であるといえましょう。
そうはいえども中国は大きな市場であることには変わりありません。ならばどうするか、という点ですが、私ならアセットライトによる投資でいつでも撤退、ないし、全損になっても会社の屋台骨が揺らがないようなリスクヘッジをすることだと思います。アセットライトですから資産を中国国内に持たず、日本のノウハウを提供し、マネージメントフィーで儲けるスタイルに変えることは一つのアイディアではないかと思います。
誰も未来のことはわかりません。しかし、何が起きてもびっくりしない対策を練ることは企業や投資家にとっては当たり前すぎるほどの行動です。保険を買わない車を運転している気持ちを想像してみれば私の主張する言葉の意味がわかってもらえるかと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年7月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。