参議院選挙も公示から1週間が過ぎた。炎天下が続き、夏を感じる一方で、選挙中だと感じる機会は、ほとんどない。争点という争点も示せぬままに、政治へのあきらめか、無関心からか、今回はこれまで以上に投票率が下がると言われている。
思い出すのが、森元首相の「まだ決めていない人が、そのまま寝てしまってくれればいい」との発言だ。こうした政治家の本音は、今も昔も同じではないだろうか。「無党派層は、寝てろ」と言われ、当時の有権者たちは怒った。しかし今回の選挙を見ると、有権者が関心を持たない様にと争点も明らかにする事なく、与党圧勝などと報道する手法は、怒りを買う事もなく、まさに、狙った通りに低投票率になりそうだ。
有権者からは、これだけ政治不信の中では、「誰にも期待できない」「信用できない」という理由から、無投票を形にする事で、「政治家に有権者が関心を持てないと、不信任を示す」という言葉を聞く事がある。これが、どこまで本音で言っているのか、本当に政治状況を認識しているのか、はたまた単に選挙に行くのが面倒なだけかは、分からない。しかし、投票に行かない事で低投票率になったとしても、政治家が、自分たちに不信任を突きつけられたと感じ、社会が変わる可能性は、皆無に等しい。
投票に行かない事は、簡単だが、投票に行かない事は、間接的に、「その人になってもらわなければならない」と必ず投票に行く人たちの既得権を守る事になる。単純化して言えば、「有権者が投票に行かないで損をするのは、政治家ではなく、有権者自身だ」という事だ。逆に言えば、「有権者が投票に行かないで徳をするのは、既得権の人たち」という事になる。
先日、講演を行った際にも、「入れたい候補者がいない時にどうすればいいか」と質問がでた。だから投票に行かないという人も多いのではないかと思う。こうした方々に常に話をするのは、「政治というのは、「Best(ベスト)」を選ぶものではなく、むしろ、その時々にリアルタイムで「Better(ベター)」を選択する事が大事だ」という事だ。どの選挙区であったとしても、ほとんどの有権者にとって、理想の候補者がいるというケースは、まずないのが現実だ。もう一つの選択肢に「自分が立候補する」という選択肢はあるが、多くの人に取っては、まだまだハードルが高く、現状、立候補している候補者の中から、より「Better(ベター)」な候補者を選択するという作業になるのだ。
では、これまで政治に関わりや関心を持たなかった人たちが、こうした「Better(ベター)」をどう判断すればいいのかが、次の課題になる。
こうした中、一つの参考として、ご提示したいのが、「国会議員質問力評価」や「国会議員の活動データ」だ。政党や政治家が信用も期待もできない時代であるならなおさら、こうしたデータや評価を活用しながら、有権者自らが投票行動によって政治を変えようと、「有権者党」を結党してみるのはどうだろうか。
公示日の前日の7月3日に、ジャーナリストの田原総一朗さんを会長に「万年野党(政策監視会議)」(特定非営利活動法人申請中)を設立した。この団体の前身である「政策監視会議」で行った国会議員の質問力評価である「国会議員の通信簿」や、「国会議員の活動データを集積する会」で行った質問回数や議員立法発議数、質問主意所提出数などの評価を、今回このコラムを書くにあたり、見やすい様にと単純化し、総合的に1つにまとめ、6月27日時点の参議院議員のランキングを作成してみた。
議員の質問力については、15点満点でつけており、今回の参議院議員のランキングでは、総合評価の最高は13.33点、最低は4.50点、評価を受けた議員の平均は10.77点だった。データについては、質問回数の最高は128回、全議員平均は22.21回、議員立法発議の最高は19件、全議員平均は2.78件、質問趣意書の最高は99件、全議員平均は12.45件だった。質問回数、議員立法、質問趣意書ともに最低はゼロであり、任期の間、そのどれをも行っていない議員が数多くいる。
国会議員質問力評価については、国会議員自らが政党を超えて、日頃、議会で見ている他議員の質問内容を評価したもの、同様にカウンターパートとなる省庁の官僚たちが質問内容を評価したもの、さらに議員自らが、自分のベスト質問と言える10分間の質問サンプルを選んでもらい、政策専門家がそのサンプル動画を見て内容を評価したものである。
今回のランキングは、その国会質問力評価から参議院議員を抽出し、さらに最低2人以上から評価されている議員に限ってランキングとした。なお、今回の参院選での改選議員は、表中、黄緑色で塗った議員である。
表を見てもらえると分かる通り、国会議員による評価が13.33と最も高かった中西健治議員(みんな)がそのまま総合1位となった。2位には、宇都隆史議員(自民)、大門実紀史議員(共産)、林芳正議員(自民)が並んでおり、以降、5位が山下芳生議員(共産)、6位が西田昌司議員(自民)、7位には、大河原雅子議員(民主)、風間直樹議員(民主)、熊谷大議員(自民)、佐藤正久議員(自民)、白眞勲議員(民主)、藤末健三議員(民主)、森まさこ議員(自民)、蓮舫議員(自民)と並んだ。
1位となった中西議員は、活動データでも国会質問80回、議員立法4件、質問趣意書19件と3つのデータ全てで☆を獲得し、☆☆☆にランクされている。とくに質問回数が多い議員でありながら、質問内容でも評価されている事には大きな価値ある。同様に、質問回数が多く☆がついている、2位の山下議員(質問回数102回)、大門議員(同93回)、6位の西田議員(同30回)、7位の佐藤議員(同51回)、森議員(同40回)についても、回数だけでなく、その質問の質自体についてもレベルの高い議員だと言える。
議会には、こうしたいわゆる政府のチェック機能としての質問と共に、立法府としての提案についても同時に役割が求められる。その面では、今回の総合評価で上位にいながら、数多くの議員立法を発議している、佐藤議員、林議員、森議員、中西議員、大河原議員らは、その両面において、仕事をしてきたと評価できる。
今回のランキングに入った議員の内訳を見ると、民主が38%、自民が28%、みんなが13%、公明が8%、共産が5%、維新、生活、改革は1人ずつとなった。また、世代別に見ると、40代と50代がそれぞれ38%と高く、次いで60代が13%、30代は5%だった。
今回は、話を単純化するために、総合評価でのランキングを中心に話をしたが、同じ評価でも、国会議員から評価される事と、官僚から評価される事、専門家に評価される事では、それぞれ意味合いが異なる。万年野党で公表しているそれぞれの評価を見比べてみると、一方で評価が高く、一方の評価が低い議員などもおり、単純にこうした評価の平均を取る事では、評価し得ない価値もある。こうした部分も含めて、今回提示したデータや評価なども参考にしながら、政党に依存するのではなく、自らの価値観とそれを裏付けるデータ・評価を用いながら、有権者自ら政治を変革する最初の選挙にとしてもらいたいと思う。
我々も、さらに創意と工夫を重ねながら、さらに質の高いデータを提供できる様にしていくが、そのためにも感想やご意見もいただければと思う。
高橋 亮平