給付金増で男の育休は増えるか?

本山 勝寛

先日、育児休業給付金の増額を検討する旨を田村厚労相が発表したという報道があった。現状は休業前の平均賃金の5割(上限月21万4650円)が最長1年間支給される。多くの人が勘違いをしているようだが、財源の大半は雇用保険で、国の負担は現状で7%弱と少ない。つまり、本人と企業が半分ずつ折半していることになる。報道によると、これを6割ほどに上げることが検討されており、田村大臣は「男性の育休取得が低いのは、給付が低いのも一つの理由と推測できる」と述べたとのこと。


私は以前から、男の育休取得を増やすためには、給付金増額が必要と訴えてきたので、今回のことについてまずは歓迎したい。つい先日も、昨年の男性の育休取得率が1.89%と一昨年の2.63%から減少したという発表があった。これだけイクメンブームがあっても増加しないのは、一般的に日本ではまだ夫の方が給与が高いため、妻が取得した方が経済的に合理的だからだ。また、妻が専業主婦または産休育休中の取得でも大いに意味があるのだが、その場合は夫婦ともに給料がなくなるので、5割の給付金だけでは生活できない。男性の育休取得が低いうえに、取得期間がだいたい1、2週間と短いのもそこに一つの要因がある。給付金を大幅に増やせば、男性の取得率だけでなく、これまで極端に短かった取得期間も伸びることになるだろう。

ただ、今回検討されている方向性にはやや懸念がある。報道によると、男女関係なく給付金を6割に増額する方向とのこと。男性の取得率を上げることが目的ならば、給付金増額は男性の取得に限ってよいと思う。男女平等の原則に反するという批判もあろうが、家庭単位で見れば夫がもらおうが妻がもらおうが同じだ。母子家庭の場合は男性が取得した場合と同じにすればよい。さらに、給与の6割でも足らないので8割くらいに増額したほうがよい。男性の育休取得率が約80%と高いスウェーデンでは給付率が8割だ。

財源の問題もあるが、給付率8割でも、男に限れば当面は取得率2%弱なので大きな額にはならない。逆に取得率約9割の女性も増額ということになると、総額はかなり増えることになるので、雇用保険料を増やすか税負担するしかない。非正規雇用者がまだ育休を取得しにくい現状にあり、専業主婦も対象外になるので、これはよくない。

繰り返すが、税負担を極力おさえて男性の取得率増加を狙うなら、給付金増額は男性とひとり親に限り、給付率は8割を提案したい。そうすれば、日本の社会も大きく変わるだろう。

学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。