子どもを投票所に連れてってはダメ? 公職選挙法の抜本改正求む

本山 勝寛

5歳と2歳の子どもたちを連れて参院選の投票をしてきた。帰宅後、ツイッターのタイムラインを見ていたら、「中学生の子どもと一緒に投票所に行ったら、入場を断られた」、「小4の子どもを連れて行ってもだいじょうぶだった」というツイートを読んだ。私は子どもが大きくなっても一緒に投票所に行って、家族で政治について考える機会にしようと思っていたので、投票における子供の同伴についてどんなルールがあるのか気になり、調べてみた。公職選挙法を読んでみると、第58条に以下の条文がある。


「選挙人、投票所の事務に従事する者、投票所を監視する職権を有する者又は当該警察官でなければ、投票所に入ることができない。ただし、選挙人の同伴する幼児その他の選挙人とともに投票所に入ることについてやむを得ない事情がある者として投票管理者が認めたものについては、この限りでない。」

つまり、幼児であれば同伴が許される場合があるが、ある程度成長した子どもは連れて行ってはいけないということだ。その判断の権限は投票管理者にあるようだが、「選挙人の同伴する幼児その他の選挙人とともに投票所に入ることについてやむを得ない事情がある者」の定義が曖昧で、小学生でも入場が許されているケースがあるようなので、有権者としては分かりにくいルールだ。

もちろん、法律に定められているなら、法に則って運営されるべきではあるが、そもそも現在の公職選挙法が、将来の選挙権利者である子どもに対して政治に関心を持ってもらい、将来の投票を促すという思想がまったくないことに違和感を覚える。

若年層の投票率の低さの原因は若者自身にもあることは確かだが、子どもが政治に関心を持たないように仕向けてきた社会の制度にもあるように思う。ネット選挙解禁で話題になったが、そもそも未成年は公職選挙法で選挙運動が禁止されており、候補者のツイートをリツイートすることすらも許されていないことが話題になった。未成年といえども、18,19歳であれば、政治リテラシーを最も高めるべき大学生であったり、立派に働いて納税している社会人だ。彼らが良いと思った候補者についてツイートすることすら禁止することが、本当によい制度なのだろうか?それでいて、若者の投票率が低いなどと嘆くのは明らかに矛盾している。

私は、諸外国の約9割がそうであるように、選挙権は18歳までに引き下げるべきであると思う。高校卒業し大学生や社会人になれば「成人」としての覚悟を持ってもらい、その分の権利を与えるのが当然だ。既に国民投票法でも投票権18歳以上は定められているのだから、全ての選挙権においてもそうあるべきだろう。

そのうえで、未成年の選挙運動や、親の投票への同伴も、政治に関心をもってもらい、将来の選挙権行使を準備するという観点から認める方向で公選法を改正した方がよい。もちろん、未成年を本人の意思に反して政治活動に利用するようなことは制限されるべきであるが、そういった常識を超えたケースを規制すればよいだけで、すべての選挙運動を禁止することが日本の社会のためになるとは思わない。

日本の未来と、若年層が政治に関心を持てるようにするために、ぜひとも公職選挙法の抜本改正に取り組んでいただきたい。

学びのエバンジェリスト
本山勝寛
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「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。