改めて問う中途採用 ~人材は即製には育たない~ --- 中尾 英明

アゴラ

私は新卒、中途問わず、経営者の方々に対して採用や教育についてコンサルティングを行っておりますが、最近、その中で中途採用について、みなさんの認識が少し違っているのでは? と感じることがあります。そのため、今回は「経営戦略から考える現在の中途採用」をテーマに進めていきたいと思います。

景況の上向き感もあり、中途採用を実施し、売上を伸ばしていくかはどの経営者も考えるべきことだと思います。私自身のこれまでの経験から考えを述べていきたいと思います。


1. 中途採用に関する認識の誤り

経営者の方々と話をしていて認識が少し違っているな、と感じるのは中途の人材を採用するまでのスケジュール感と採用した後にその方が成果を出すまでのスケジュール感です。

採用するまでのスケジュールについては、募集を出せば1~2ヶ月というスケジュールで、比較的すぐに人材は見つかるだろうと考えている方が少なくありません。しかしながら、そのスケジュール感では、焦って欠員補充のように採用してしまうことになります。それは決して良い結果にはならないと思います。

しっかり求める人材像を考え、お会いし、見極めるにはやはり最低でも半年は見ることが必要だと思います。

次に中途の人材を採用してからその方が評価に値する結果を出すまでのスケジュール感についてです。

これは業界や商材、またその方のご経験にもよりますが、やはり採用する側である経営者の方々は、まあ3ヶ月~どんなに遅くても半年といったスケジュール感で結果を出してくれるだろうと考えがちです。

以前は中途採用=即戦力、と考えましたし、今でも勿論、そういう人材は存在しますが、今は新卒採用の全体的なレベル低下にともなって、中途採用のレベル低下も否めません。また、中途で採用した人材は即戦力ゆえ、あまり教育がいらなかった訳ですが、中途採用のレベル低下にともなって、今後は中途で採用した人材の教育も視野に入れるべきかもしれません。よってその成果も少し長期的な目で見るべきであると考えます。

例えば、営業の場合でしたらお客様とも信頼関係を作っていく必要がありますし、将来的にマネジメントを行っていく人材の採用でしたら、社内でしっかりと人間関係も作る必要がありますから、やはり時間が必要です。

それらを鑑みると、やはり中途の人材と言えども、経営者が期待している成果を出すには1年ぐらいの期間を見なければならないのではないでしょうか?

といったお話をしますと、上記のような手間がかからない優秀な人材を中途採用すればいい、と考えると思いますが、現在、そういった人材がなかなか採用出来ない、といった背景もそこには存在する訳です。

アゴラ掲載「中途採用=即戦力採用ではない

2. 3年後の経営計画を達成するためには、今、中途採用が必要

ですから、中途採用といえども募集を開始してから採用し、成果を出すまでには極端な話、3年前後の時間がかかる、ということになります。経営者の方や事業責任者の方でしたら、向こう3年間の中期経営計画を立てられると思います。そこから必要な人材を算出されることがあると思いますが、上記のスケジュールを考えると3年後の経営計画に貢献できる人材の確保の為には、今、中途採用を行うべきという判断が必要になってきます。

また新卒の人材で言えば、募集から入社するまでに最長で16ヶ月(大学3年生の12月~広報活動を開始)、入社後、しっかりとした成果を出すのに1年半と考えるとやはり3年かかります。つまり3年後の中期経営計画を考えた上で、必要な人材のバランス(中途、新卒)を逆算し、今、そのためのアプローチを始めることが、経営者に求められていると思います。

皆さんの会社の中途採用計画はどのようにされていますか?

以上、何かのご参考になれば、幸いです。

中尾 英明
クレスコ株式会社 代表取締役

66年東京浅草生まれ。株式会社リクルート入社。 新卒・中途採用のコンサルティング営業に従事。350社以上のクライアントを抱える。96年日本における採用コンサルティング・アウトソーシングの先駆けとなるレジェンダ・コーポレーション株式会社の立ち上げに参画し、取締役に就任。自分の仕事観を更に具現化すべく、09年4月、クレスコ株式会社を設立。 人事にまつわる経営者の目線と実務者の目線の両方を熟知した上での各種講演、コンサルティング等に全国を飛び回る。