都知事候補の家入事務所で感じたこと ~ 選挙とは「祭り」である --- 渡辺 龍太

アゴラ

私は、マスコミでは泡沫扱いされている、家入かずまさんの選挙に貢献するために、選挙事務所に行ってボランティアスタッフとして時々働いています。そこで、家入陣営の内情を見ると、想像以上に従来の選挙とは全く違う事が行われていました。

例えば、家入さんは街頭演説の代わりにツイキャスという、若者が中心に利用しているネット中継を使って毎晩若者に対してメッセージを送っています。また、この中継システムは、個々の視聴者の発言が画面に表示される仕組みになっています。なので、家入さんも、他の視聴者もツイキャスを見ている人が何を思っているかがリアルタイムに分かります。


確かに、物理的な距離感は従来型の街頭演説の方が近いかもしれません。しかし、コミュニケーションという意味での距離感は圧倒的にネットの方が近いと言えるでしょう。まちがいなく、間近で演説を聞くより、ネットで家入さんに話しかけたりする方が、政治への参加意識を感じると思います。

他にも、家入陣営の事務所は24時間オープンで、常にネットで中継されています。そこに家入さんがいれば、気軽に本人と話せる事も多いです。また、そこにはDJブースが置かれていたり、家入さんと支持者がピースサインで記念写真を撮影したものなどが壁一面に貼られていたりします。そんな感じで家入さんは、決して「家入先生」というような政治家先生という感じではなく、時にはボランティアスタッフや、ふらっと事務所に来た支持者と冗談を言い合うような気さくな雰囲気です。

最初、私はツイキャスでの街頭演説やDJブースを事務所に置いたり、あまりに家入さんがフランクに支持者と接する事に対し、必要以上に若者に媚びている様な気がしました。なので、初めて事務所に踏み入れた時には、ちょっと「微妙だな」という印象でした。しかし、家入陣営の選挙プランナーの松田馨さんの話を聞いて、考え方が変わりました。

松田さんは、選挙は見ているだけでなく、参加した方が100倍面白いというのです。そして、ポスターを貼るとか、事務所に来て話を聞いて、その事を周りの知り合いに話すとか、とにかく何らかの形で選挙活動に参加する事を勧めています。そして、選挙自体の事を、祭りであるというような言い方もしていました。確かに、そう言われてみたら、私自身、実際に事務所に行き、選挙活動に参加する事を楽しんでいました。

ここで、「まつり」のWikipediaの解説の一部を見てみましょう。

「まつり」という言葉は「祀る」の名詞形で、本来は神を祀ること、またはその儀式を指すものである。この意味では、個人がそういった儀式に参加することも「まつり」であり、現在でも地鎮祭、祈願祭などの祭がそれにあたる。

日本は古代において、祭祀を司る者と政治を司る者が一致した祭政一致の体制であったため、政治のことを政(まつりごと)とも呼ぶ。

(中略)

しかし宗教への関心の薄れなどから、祭祀に伴う賑やかな行事の方のみについて「祭」と認識される場合もあり、元から祭祀と関係なく行われる賑やかな催事、イベントについて「祭」と称されることもある。

これを読むと、家入陣営はネットなどの最新ツールを駆使しているので、新しい選挙を行っているように見えます。しかし、もっと深く観察すると、そうでは無いのかもしれない気がしてきます。ネットという新しい技術を駆使する事によって、「宗教色の薄れた誰でも参加できるイベント(祭り)」+「そのイベントを司る政治家(家入さん)」=「まつりごと」という構図で、宗教色は無いものの昔の日本の「まつりごと」立ち返る様な選挙を行なっているとも言えるのではないでしょうか。

そう考えれば、家入さんの事務所に祭りには不可欠な音楽が流れていたりするのも納得ですし、ネット経由や直接事務所に来る支持者が真面目な話をしながらも遊びに来ている様な雰囲気なのも当たり前なのかもしれません。なので、何となく政治に興味があるというような人は、家入さんの事務所に来てみたり、ツイキャスで何か書き込んでみると良いと思います。そうすれば、「まつりごと」の面白さにハマる人が大半なんじゃないかという気がしています。

渡辺 龍太
WORLD REVIEW編集長
主にジャーナリスト・ラジオMCなどを行なっている
著書「思わず人に言いたくなる伝染病の話(長崎出版)」
連絡先:ryota7974アットマークgmail.com
Twitter @wr_ryota
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