ドイツの現状 ~ 再生エネ普及と火力危機 --- 石川 和男

アゴラ

昨日の時事通信ネット記事は、“再生可能エネルギーの先進国”であるドイツにおいて、大手電力会社の経営が危機的状況に陥っていると報じている。『補助金の後押しを受けた再生可能エネルギーによる電力普及で電力市価が下落し、大手が保有する火力発電所の収益が悪化している。各社は火力発電所の閉鎖を急ピッチで進めているが、業績改善への道筋は見えない』とのこと。


 ドイツでは、2000年から再生エネの固定価格買取制度が始まり、それ以来順調に再生エネの導入が拡大してきた。下の資料1の通り、11年には発電量に占める再生エネ比率が2割を超えるようになった。日本ではこれまで、次のような幾度かの制度変遷を経ながら、再生エネの導入は順調に増えてきている。

(1)新エネを導入する事業者への補助金制度(1997年~)
(2)電気事業者に一定量(価格は固定せず)の再生エネ由来電気の調達を義務付ける「RPS制度」(03年4月~12年6月)
(3)電気事業者に固定価格で再生エネ(500kW未満の太陽光)由来電気の調達を義務付ける「余剰電力買取制度」(09年11月~)
(4)電気事業者に固定価格で再生エネ(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)由来電気の調達を義務付けるFIT制度(12年7月~)

 下の資料2を見るとわかるが、再生エネ発電量については、RPS制度の施行により03年以降で年平均伸び率が8%であったものが、その後の余剰電力買取制度やFIT制度の施行により、年平均伸び率13%にまで上昇してきている。

 経済産業省の試算によると、再生エネ発電量に関して今後の年平均伸び率が13%程度であると仮定すれば、今後10年間で再生エネ発電量は12年度比で3.4倍に拡大する。日本での再生エネ発電量の総発電量に占める割合は12年度実績ベースで、水力を含めれば約10%、水力を除けば1.6%程度でしかなく、現時点ではそれほど大きな負荷を電力市場に及ぼしているわけではないとの楽観論もあろう。


 日本のFIT制度など再生エネ施策は、ドイツの再生エネ施策を大いに参酌して策定されてきた。そう考えると、冒頭で書いたドイツの電力市場で起こっている現実は、将来の日本で起こらないとも限らない。決して他人事ではないのだ。
 
<資料1>

(出所:経済産業省資料

<資料2>

(出所:経済産業省資料


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2014年3月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。