おとといの日韓条約の記事がいまだにアゴラでトップなので、補足しておこう。金慶珠というのはホリプロに所属して反日言論でワイドショーを盛り上げる芸人らしいから、まじめに相手にする価値はないが、このように彼らが平気で嘘をつくのは、その悲惨な歴史に原因がある。
日韓条約はもともと必要のない条約で、戦後賠償でも謝罪でもない。植民地に対して賠償や謝罪をした旧宗主国はない。これは朴政権の危機を救済するための経済援助であり、8億ドル(無償3億ドル・有償2億ドル・民間3億ドル)は当時の韓国の国家予算の2.3倍だった。
朝鮮半島は伝統的に中国の一部で、14世紀に始まった李氏朝鮮国は中国の冊封国として、500年以上にわたって軍事的支配と徴税体制に組み込まれてきた。そこでは中国の科挙制度が丸ごとコピーされ、儒学原理主義の極端なエリート支配が続けられた。
もともと科挙官僚(士大夫)というのは中国の割拠的な政治を皇帝によって統一するために各地方に送り込まれた地方政治家で、その数も全国で3000人程度と極端に少なく、日常的な行政は各地方の豪族が行なっていた。ところが朝鮮はそのシステムを小国にそのまま輸入したため、官僚機構が巨大化し、末期には国民の過半数が公務員になった。
科挙は広大な中国を少数のエリートが支配する「最小国家」システムなので、朝鮮でそれを地方の末端まで拡大すると、腐敗が蔓延するのは当然だった。士大夫は厳格な試験で選抜されたが、朝鮮の両班は世襲になり、賄賂や売官が横行し、国家は全面的な統制経済になった(今の北朝鮮はそれを受け継いでいる)。
これは丸山眞男の分析した日本の統治機構とは対照的だ。日本では、自然な「こころ」に従って政治が行なわれるので、外的な規範や強制があまり必要とされない。君主や官僚の命令も弱く、ボトムアップで意思決定が行なわれる。儒学は日本的にも輸入されたが、日本人にあわない教義は無視され、科挙制度も実施されなかった。
この違いは、つねに中国の軍事的脅威にさらされてきた朝鮮半島と、それとほぼ無縁だった日本の環境の違いによるところが大きい。世界的にどっちが普通かといえば、韓国のほうが普通に近い。今の中東よりはましだが、「日帝36年」とか「抗日60年戦争」とかいう嘘を教育やマスコミで教え続けないと、この人工的な政治秩序は維持できないのだ。
ただ日本の植民地支配が韓国に恩恵を与えたというのも間違いだ。いかにインフラ整備をしてもらおうと、他民族の言語や名前で生活させられることは屈辱であり、朝鮮籍などで二等国民として扱われ、日本でも被差別部落に集められた朝鮮人は、心から日本に同化することはなかった。日本人が彼らのプライドを傷つけたことには反省が必要だ。
しかし今の朴槿恵政権は、国内的にも対外的にも破綻に瀕しており、長く続くとは思えない。大して重要な国でもないので、軍政以来の「開発独裁」が終わり、まともな対話のできる政治体制になるまで、ほっておけばいい。