東京五輪のエンブレムが再公募されるそうや。ワシも応募しよかな。まあ、見てくれ(図1)。これが採用の場合、収益は全額、アゴラに寄贈させてもらう。富士山に沈む落日と廃墟が点在する山手線の内側、つまり2030年頃の東京の姿を予想するというのがデザインの趣旨や。どや、クールやろ。
別に特定の人物の肖像を盗用しているわけではない。どうしても人間の顔に見える人は、どこぞでカウンセリングを受けることを推奨する。え、「TOKYO」のKが抜けているって。うっかりしておったわ。組織委員会と協議の上、必要なら修正しよう。
さて今回の盗用騒ぎ、まことにケッタイな展開や。エンブレムが発表されるや、スペイン、ベルギー、韓国方面(順不同)から「パクリ」の声が上がった。つきつめて考えるなら(ヘリクツ思考ですわ)、「どこが本当のパクられ元か」、から議論が始まるはずや。必ずしも、最初に公表されたものとは限らんから、話はやっかいや。
それから、スペイン、ベルギー、韓国のデザイナー同士は、相互にパクられた可能性は考えないんやろか。特にベルギーはん。相手がオリンピックのエンブレムやったら大騒ぎするが、マイナーな展覧会なんぞに類似デザインがあっても知らん顔というのは、勝手な話と違うかな。
直線と円弧だけのデザイン。それも線は垂直と水平だけ、さらに日の丸は必ず入れる。こんな制約を自らに課したら、類似作が世界中からてんこ盛りに出てくるのは目に見えていたはずや。Jリーグのロゴが似ているという声もある。
そやから、佐野はん本人もJOCも、こういう路線で行くなら、初めから盗用呼ばわりは覚悟をしたうえで、対策を準備しておく必要があった。確かに、佐野はんは脇が甘い。
例のトートバッグ事件でも、あくまで写真を元にしたデザインなんやから(写真そのものではない)、事前に連絡して、きちんとクレジットを出して使わせて貰っておけば、何の問題もなかったと思う。「どうしても、あなたの写真で作品を作りたい」と言えば、たいていのカメラマンはノーとは言わんで。
「空港でのエンブレム実施例写真」の問題は、内部資料の不注意な流失という話で、これも「外には出さないで」と事前に言っておけば済んでたはずや。要は、普通のデザイン事務所が普通にやる仕事をせんかったという話。ボケナスデザイナーとボケナス事務所のボケナス仕事。
もっとも、優秀なデザインをするような人間は、岡本太郎画伯の例を出すまでも無く、ボケナス人間系が多い。そのことだけで佐野はんにデザイナー失格の烙印を押すのは不当やと思う。
だいたい公募作品なんやから、基本的な責任はチェックする側にあるはずや。パクリやと思ったら、採用せんかったらええだけの話。意匠著作権チェックのプロを使わんかった、JOCが圧倒的に悪い。
素人判断と責任者の不在による公募採用の大失態。国立競技場問題と全く同じ構図や。しかも、大会を象徴するようなド真ん中の話で2連発。これがJOCの現状や。ウンザリする事やが、今後、五輪実施計画の細部を作り込んで行く過程で、大小のトラブルの頻発は避けられんやろう。
やはり、ワシが前の記事で書いたように、開催辞退が一番ええ解決やと思う。「今の私たち日本人には、まともにオリンピックを運用する能力がありません。残念ながら開催を辞退します。JOCも解散して、最低10年間は五輪出場を自粛します。お・も・て・な・し・で・き・ま・せ・ん」
実はこれが、スポーツ界にとっても一番、傷の小さい解決やとも思える。このまま進んで五輪記録を更新する大赤字を出したら、ほとんどの国民がスポーツ自体を憎むようになりかねんがな。結局、世界一の財政赤字国(つまり究極のボケナス国家)が、オリンピックなどやろうとするのが間違っているんやが、それをやってしまうのがボケナス人のボケナス人たるところや。
エンブレムの話に戻ろう。次の採用作品は、全然別のひねった路線で行かんと、また同じ事がおこる。単純なデザインほどリスクが大きい。
新エンブレムが発表になった瞬間から、世界中のブチキレ人が世界中の画像を探して、「パクリや、パクリや」と言い出すに決まっている。その類似性が、今回以上にビンゴだったら、エライことや。再々公募というわけにもいかんから、近年まれに見るエンブレムのない五輪になる。
これは、競技に興味のないワシらにも笑い事ではすまん。JOCに落ちる予定の膨大なエンブレム使用料が消えるということは、さらに財政負担が増えることを意味する。まあ、それまでこの国に、財政らしきものが存在すればの話やがな。
そこでや。ワシらしくない話やが、ひとつ前向きの提案をしたい。新エンブレムは、五輪マーク自体を下敷きにしたデザインにする。日の丸を加えてもいい。これなら、過去の類似デザインのデータは、合法的なものである限りIOCに揃っているはずやから、容易に回避できる。一方、無断で五輪マークを使っているヤツが、わざわざ文句を言ってくることは絶対にない。
若干のIOCとの折衝が必要やとも思うが、バッハはんかて、これ以上、著作権トラブルが頻発して、五輪自体のイメージを泥まみれにされるのは避けたいやろうから、最終的には助けてくれると思う。
というわけで、この路線でワシも、少しマジでエンブレムのデザインをしてみるつもりや。もちろん、ここで公表は出来ん。応募するつもりやからな。採用になったら収益は……考えておく。
今日はこれぐらいにしといたるわ。
涼しくなると、元気一杯アホをしたくなる山城良雄