軽減税率に対し、経済学者のほぼ全員、テレビ東京WBSの全コメンテーター、アゴラに寄稿する多くの識者が反対している。導入済みのヨーロッパ各国では、失敗だったとの評価が大勢だ。
経済企画庁OBの小峰隆夫法政大教授は、週刊東洋経済11/28号「経済を見る眼」にて、軽減税率は「低所得者用の財源を取上げて高所得者にも配る」政策で、「開いた口がふさがらない」とまで書いている。
にも関わらず、公明党が軽減税率の広範囲での導入を強弁するのは、「世論調査で国民の大半が賛成しているから」だ。
「軽減税率を導入してもしなくても、あなたの税負担以外の社会のことは何も変りません。税負担が多いのと少ないのと、どちらが良いですか?」と聞かれれば、誰でも「少ない方が良いです」と答えるに決っている。私だってそうだ。
しかし現実には、軽減税率を導入すると、高所得者ほど得をし、税収が減って社会保障が手薄になり、商店も税務署も手間が増え、軽減税率を求める業界が商売より政治活動に熱心になる。
日本人をバカにしてはいけない。中身をちゃんと説明すれば、経済学者と同様に、軽減税率にほぼ全員が反対するだろう。中身を説明せずに目前の負担軽減だけを言うから賛成しているに過ぎない。
マスコミは、「高所得者ほど得をし、税収が減って社会保障が手薄になり、商店も税務署も手間が増え、軽減税率を求める業界が商売より政治活動に熱心になる制度の導入に賛成しますか?」と聞いて欲しい。
言論サイト「アゴラ」を主宰する池田信夫氏の「安倍首相の聖断で軽減税率はやめられる」に全面的に賛同する。日本の明るい未来のために、新国立競技場のザハ設計が安倍首相の聖断で白紙撤回されたのと同様になって欲しい。
ザハ設計のキールアーチは地上に長大橋を建設する土木工事と同じで、かつ資材を船で運べる水上ではなく、根本的に巨額を要するという事実が、ネットの力で国民の間に広まり、見直しの機運が短期に盛上った。
同様に、軽減税率が極めて悪質な制度だという事実が国民の間に広まれば、安倍首相も聖断できる。
軽減税率の財源の上限は4000億円と言われ、1人4000円のプリペイドカードを配り、全飲食料品を対象に購入時に軽減税率2%分が引かれる案が浮上してきた。そんなことをするなら、国民全員へ4000円ずつ配る方が単純で、カード作成等の無用なコストも生じない。
もっと思い切った提案をしよう。
4000億円を使うなら、新生児全員へプレゼントしよう。年に100万人として1人40万円となる。軽減税率よりはるかに気の利いた使い方で、高齢者も若者も、高所得者も低所得者も賛成するのではないだろうか。
軽減税率という災いを転じ、少子化に歯止めをかける政策という福を為したい。
阿部 等・(株)ライトレール・代表取締役社長