ロンドンブーツ1号2号の田村淳氏が、リスクを承知で政治や選挙について発信し続けるのはなぜか。選挙ドットコムへの企画に何が足りないのか。90分に及んだ企画会議の後編では、選挙ドットコムが考えた企画がメッタ斬りに…。
(インタビュー前編はこちら)
>>ロンブー田村淳が政治や選挙について投稿する理由・1
>>ロンブー田村淳が政治や選挙について投稿する理由・2
選挙に行く奴らのアイデアは響かない!
——選挙や政治への関心が薄い人に、もっと選挙に興味関心を持ってもらいたいというのが私たちのテーマなんです。今のところ、こんな企画を考えているんですが……。
田村淳氏
「えっと。『選挙に行きたくなるセリフコンテスト』、賞金付き。若者向けネット番組の制作。投票済み用紙でお笑いイベントが無料になる選挙割……。うーん、悪いけど、これじゃ人は来ませんね。ここにあがってるやつ、どれもこれも響かないですよw」
——響かないですか…。
田村淳氏
「だってこれってどれもこれも、すでに選挙に行く意識があって、政治にもすごく関心がある人たちの案ですから。選挙に行ってる人が考える対策って、どれももともと政治に関心のある人にしか届かないものが多い。もっともっとぶっとんだ企画じゃないと、選挙に対して本当になんの興味もないような人に関心を持ってもらうのは無理ですよ。例えばどうだろう、西野カナさんが選挙の歌を作ったら、とか……いや、これも全然駄目だな。僕も結局、既に『選挙に行く人』だから、こういうアイデアになっちゃうんですよね(苦笑)」
——耳が痛いです(苦笑)。こういうメディアを運営していると、やはり「まったく選挙に関心がない人」の感覚が遠くなっていくので。どういう視点が大切だと思いますか?
田村淳氏
「言い方は悪いけど、ある種の”醜態”を受け入れていくしかないと思うんですよね。例えばそこら辺の、『政党ってナニ?』っていう意識の高校生をかき集めて、10分限定で政治についてディスカッションさせてみる。ちょっと前だったら、甘利大臣の辞任が話題になってたじゃないですか。ああいう話題を放り込んで、『え、甘利ってなんて読むの』『甘いといえばおしるこって意外と甘くないよね…』ってどんどん脱線していく様子をそのままコンテンツとして見せちゃう。政治や選挙に一切興味ない人たちと政治に無理やり接点作ったらどうなるのか、みたいなありのままの現実を見た方が、色んな人が『やべえ、僕はどうなんだろう』って自問できるんじゃないかな。そういう番組だったら僕がMCやりたい(笑)」
——なるほど!私たちはどうしても、無関心な有権者と政治の間に、語り口の易しい政治家とか”知識人”的な人たちを挟んで、「わかりやすく教えますよ」という姿勢を作ってしまうんですが、それがそもそも間違いだということですね。
田村淳氏
「ただ間口を広げて、『おいでおいで』ってやっても、結局意識高い人しか来ないんですよ。だってそこに興味ない人から見たら、間口が広かろうが狭かろうが関係ないじゃないですか。それで、意識高い人だけでまた世界を作っちゃって、本当に無関心な層が置いてけぼりになるでしょ。特に今、18歳選挙権の施行が近づいているから、若者に”優しく”することで選挙に来てもらおうって思ってる政治家なんかもたくさんいると思うんですけど、歩み寄りすぎるのはよくないのかなと。選挙ドットコムさんの企画は全部歩み寄り系ですよね。歩み寄るにしても、もっと本当に無関心な人たちでも接点を感じられるような情報発信をした方がいいと思う」
政治家はコミケでコスプレをしろ!
——例えばどんなことを発信すればいいでしょうか。
田村淳氏
「政治家の情報一覧で、『ワンピース』の好きなキャラクターは誰か、なんて項目が見られるとか。それで、集計したら◯◯党にはサンジ好きの政治家が多いことがわかりました、なんてことになったら面白いよね。そういう情報があったら、『僕はエースが好きだけど同じ趣味の人いるかな』とかちょっと探してみるかもしれないし」
——確かに、好きな映画とか音楽とか、趣味的な情報がわかると親近感を抱きやすいですね。選挙は共通点探し、とよく言いますが、同じ高校出身とか趣味が同じとか、何か一つでも共通点があると親近感がわきますよね。
田村淳氏
「そうなんだけど、音楽とか映画はイマイチかな。政治家側の『どう見られたいか』っていう意識が反映されすぎる。例えば好きな曲が『世界に一つだけの花』ばっかり、優等生ばかり選ぶみたいなことになっちゃうかもしれない(笑)。もっとどうでもいい、答えてもメリットもデメリットもあんまりないような質問の方がいいと思うんですよね」
——なるほど……そこでもやっぱり、『選挙行く側』の感覚で考えてしまっていました。
田村淳氏
「僕、石破茂さんに興味を持ったのは、あの人が趣味の鉄道の話をしているところをたまたまテレビで見たのがきっかけだったんですよ。その時に初めて『ああ、この人も人間だったんだ』って思った(笑)。で、そういうのが一般の有権者に、特に若者には伝わる。それがわかってない人の方が多いですよね。『今日は◯◯駅で演説してます!』なんてFacebookに書くよりは、コミケに行ってコスプレした写真でも上げる方が絶対にみんな注目するし、人となりを感じられるんだけど。選挙ドットコムさんから政治家側に、『こういうことをすれば若者にウケます!』って提案するくらいのこと、するべきなんじゃないですか」
——政治家と有権者をつなぐメディアとして、頑張ります!
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選挙ドットコム編集部
編集部より:この記事は、選挙ドットコム 2016年2月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は選挙ドットコムをご覧ください。