次のエピソードをお読みください。
ある年のクリスマスのことです。
表参道のカルティエのお店の前で、カップルが問答しています。
男「いいじゃん、ドンキで買えば。」
女「嫌!ここで買って。」
男「向こうで買えば5万は安いよ。それで正月の旅行奮発しようよ。」
女「絶対に嫌!ここで買って欲しいの。おねがい!」
話は平行線です。何故でしょうか?それは、あげたいものと貰いたいものが違うからです。
男は「カルティエの指輪」をあげたいのです。指輪はどこで買おうと同じモノです。
それに対して女が貰いたいのは「クリスマスの日に大好きな彼氏に、表参道のカルティエショップで指輪を買って貰うという体験」なのです。
この話は、マーケティングの先生「藤村正宏さん」の著書からの抜粋です。
この話に登場する女性にとって、クリスマスや表参道のカルティエショップというシチュエーションは、5万円以上の価値があるということです。そして、人はモノだけを見て購買を決定している訳ではなく、モノを売るには、体験(ストーリー)をイメージさせることが有効ということです。ホワイトデーも、単にモノを渡すのではなく、ストーリーを意識するときっと喜ばれます。高価なものでなくてもいいと思います(笑)
私はこの考え方に10年前に出会いました。正に目から鱗でした。私がずっと携わって来たサービス業は、モノを売っているわけではありません。世の中に数多あるサービスの中から、自分のサービスを選んでもらう為にはどうすれば良いのか?
そのヒントがこの中にあります。
モノ自体の品質、サービス業で言うならサービスの内容はもちろん重要です。しかし、それ以上にそのサービスを受けたらどんなに楽しい時間を過ごせるか、具体的にイメージしてもらうことが、意思決定を後押しします。「伝え方」にこだわることが、成功につながると思います。チラシやホームページ、セールストークに「お店側の言いたいこと」ではなく、「お客様の知りたいこと」を意識して入れ込めば、何かが変わるかも知れません。
かく言う私も、今日書いた内容を意識してブログを書いてますが、言うは易く行うは難しですね(笑)もっと腕を磨きます。
恩田聖敬
恩田 聖敬(おんだ・さとし)
1978年(昭和53年)岐阜県生まれ。京都大学大学院卒業後、2004年複合レジャー施設「JJ CLUB 100」を運営するネクストジャパンに入社。2009年には取締役就任。その後グループ会社であるアドアーズの常務取締役として全国のゲームセンター店舗を回り、希望退職を実施し、大規模な改革を行う。親会社のJトラストでM&A等を担当した後、14年4月に岐阜フットボールクラブの代表取締役社長に就任。サービス業の経験と、会社管理の経験をフルに活かし、サッカービジネスにエンターテイメントの要素を導入も、社長就任と同時にALS(筋委縮性側索硬化症)を発症。病を公表後も社長業を続投したが、15年11月末の公式リーグ最終戦を以って病の進行により、止む無く社長を辞任。
この記事は、岐阜フットボールクラブ前社長、恩田聖敬氏のブログ「片道切符社長のその後の目的地は? 」2016年3月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。