米大統領予備選にて驚くべき躍進を遂げる候補こそ、不動産王ドナルド・トランプ氏。フォーブス誌によると総資産46億ドル(約5150億円)に及ぶにも関わらず、白人の高卒男性をはじめネバダ州やアリゾナ州を獲得したようにヒスパニック層にまで支持を広げています。
格差社会に疲弊しきった怒れる市民こそ、反エスタブリッシュメントであるトランプ候補の支持基盤と説明されてきました。本当のところ、同候補の支持者は低所得者層の割合が高いのでしょうか?
信用力に視点を置いたウォレットハブの調査では、意外な結果が浮かび上がります。
信用力を測る上で、米国では信用スコアなるものを使用します。クレジットカードの支払い状況によって、計算。信用調査会社によって異なりますが、ここでは850点が最高点で720点以上がスーパープライムに位置づけられ、620~719点がプライム層で健全な信用力、620点以下がサブプライム層つまり低信用に振り分けられます。
トランプ候補の支持者の場合、620点以下は3位の20.5%でした。民主社会主義者を名乗り公立大学の無償化、米連邦準備制度理事会の監査法案を支持する民主党のバーニー・サンダース候補はというと、22.3%で2位に過ぎません。1位はというと・・。
クリントン候補で、25.7%を占めていたのです。
米大統領候補、それぞれの支持者の信用スコア別動向はこちら。
なぜクリントン候補の支持者がの間で、最も信用スコアが低くなってしまっているのでしょうか?
そもそも、クリントン候補は予備選で南部を総なめしたように黒人層の支持が厚い。夫であるビル・クリントン元大統領が築いた支持基盤であり、複雑な家庭環境や境遇に加え南部アーカンソー州の知事だったことも影響しているのでしょう。1998年には、女流小説家のトニ・モリソン氏がザ・ニューヨーカー誌にてクリントン元大統領を「白人であろうが、誰より黒い大統領(black president)」との称号を与えたほど。同元大統領が直近のインタビューで「全ての人種は混血である」と語り、自分こそ初代の黒人大統領だと強調することを忘れなかったのは、自身の影響力を駆使し妻ヒラリーを後方支援するためだったのでしょう。
黒人層の支持を受けてクリントン候補は南部を制したわけですが、その南部と言えばあまり豊かではありません。ワシントンD.C.が4万6502ドル、米軍基地を有するバージニア州、ウェストバージニア州がそれぞれ3万3958ドル、メリーランド州が3万6670ドルと押し上げる程度で、この3州と1地区を除けば南部の州平均は2万4921ドルへガクンと下がってしまいます。全米平均の2万8555ドルには、遠く及びません。
民主党予備選/党員集会で、クリントン候補が勝利した州は現時点で南部が多い(3月20日時点)。
(出所:Wikipedia)
夫ビルの恩恵で南部および黒人層のヒラリー候補支持が自然と厚くなり、同時に低信用の人々が多くなっているというカラクリになります。ちなみに黒人の知識層は、黒人層のクリントン支持を「無知によるもの」、「情報不足が原因」として分析。同じ黒人でも、中高所得者層はサンダース候補に傾倒しているようです。
(カバー写真:GotCredit/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年3月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。