Airbnbは震災時に有効なインフラになる可能性

内藤 忍

熊本地震の発生後、Airbnb(エアビーアンドビー)が無料で泊まれる緊急宿泊場所の提供を開始しました。今回の地震で被災して、避難先を探している方は、こちらのサイトに掲載されている宿泊先に4月20日まで無料で泊まることができます(サービス料も無料になります)。

大規模な震災が発生した時に、何か自分に出来ないことは無いかと考えても、具体的にどんなアクションを取れば良いかは実は難しい選択です。

食糧や日常生活品を送っても、きちんと必要な人に必要なタイミングでデリバリーされるのかどうかわかりませんし、寄付金をしようと思っても、どの団体にすべきなのか、きちんとした知識を持って対応しなければ、単なる自己満足になってしまいます。

その点、不動産所有者が物件を被災した人に提供するというのは、避難所の生活などを映像で見ているせいか、極めて効果的で有効な貢献だと思えるのです。

AirBnBのこのような試みは、2012年にハリケーンサンディで、カリブ海と東海岸沿岸部一帯が被害を受けて、数千人の人が家を失った時、シエルさんという方がニューヨーク市内のロフトを無償提供し、それがきかっけで最終的にAirbnbのホスト1400人がハリケーンサンディによる被災者に家を開放し、食事を提供したそうです。

この体験を受けて、2013年から、災害があった時に避難先を求めている人々に対してAirbnbホストが、簡単に宿を提供できるような仕組みが整備されています。洪水や地震、ハリケーンといった世界中の大規模災害が発生すると、迅速に宿の提供が行われるのです。

日本国内では法律上は正式に認められていないAirBnBですが、法整備よりも現実の方が先に動いている。そんな印象を受けます。ネット上で提供者とサービスを必要としている人がマッチングされ、物件の詳細な情報もリアルタイムで表示されているため、極めて効率的に宿泊施設が配分されます。

願わくば、このような善意で行われているサービスを悪用する人がいないように祈るばかりです。そして、一刻も早く現地で被災した方の安心できる生活が取り戻されることを心から願っています。

東京でも将来、同様の事態が発生するかもしれません。東京で登録されている26000戸あるAirBnBの物件の平均稼働率は50%程度だそうです。ハイシーズンでなければ、10000戸以上の住宅が緊急時に提供できる可能性があります。

現状は物件を保有しているホストの善意によって実現していますが、災害時の有効な対策の1つとして、企業や自治体がサポートしても良いのではないかと思います。

※毎週金曜日に配信している「資産デザイン研究所メール」。資産を守り増やすためのヒントから、具体的な投資のアイディア、そしてグルメな情報まで、メールアドレスを登録するだけで無料でお届けします。

※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2016年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。