米1−3月家計資産、株安も不動産上昇で過去最高

米不動産

米連邦準備制度理事会(FRB)は9日、1−3月期家計資産報告(旧・資金循環報告)を発表した。資料によると、家計・非営利団体の純資産は88 兆870億ドルだった。人民元切り下げを引き金とした世界同時株安が襲った影響から、4年ぶりに減少した2015年の7−9月期の85兆690億ドル(修正値)で底打ちし、前期に続き過去最高を更新している。

家計・非営利機関の資産のうち、特に金融資産(貯蓄、株式、投資信託、債券、年金、保険などを含む)は前期比2995億ドル増の71兆781億ドルだった。ただし、株式は市場価値ベースで1601億ドル減の23兆2151億ドル(直接、間接保有含む)となっている。投資信託も74億ドル減の4兆3774億ドルと、株式と合わせ減少に転じた。S&P500は年初の世界同時株安を背景に2月、2015年5月につけた最高値から約10%急落し調整入り局面を迎えていた。

・非営利機関の預金残高は10兆8536億ドルと、過去最高を更新した。年金資産は21兆802億ドルと2015年7−9月期に減少してから順調に増加し、最高を記録している。

家計部門の不動産資産は、住宅価格の需要および値上がりを背景に前期比4775億ドル増の22兆5241億ドルとなり、全体を支えた。住宅ローンが219億ドル減の9兆5106億ドルのところ、ホーム・エクィティ(住宅の評価額から住宅ローンの残債を差し引いた価値)は少なくとも13兆ドル付近と弾き出せる。不動産価値の57.8%を占め、2015年10−12月期の56.9%を超え景気回復サイクルで最高を更新した。

国内債務は、前期比年率4.8%増の45兆6881億ドルだった。少なくとも2010年以来で最大を記録した2015年10−12月期の8.8%増から伸びを半減させた。詳細は、以下の通り。家計の債務は2.7%増の14兆3160億ドルとなり、増加トレンドを維持。そのうち、消費者信用は6.1%増の3兆5881億ドルと2010年7−9月期以来、21期連続で増加。3月に新車販売台数が過去最高を更新した2015年から鈍化したとはいえ自動車ローンが引き続き支えたほか、学生ローンも寄与している。住宅ローンは1.6%増の9兆45241億ドルと、好調な住宅指標が示すように4期連続で増加した。非金融セクターの企業は2011年1−3月期以来、21期連続で増加し4.8%増の13兆314億ドルとなる。連邦政府は4.6%増の15兆3407億ドルと、2010年1−3月期以来の高水準だった前月の18.5%増から減速。州・地方政府は増加トレンドを5期に伸ばし、2.2%増の3兆ドルだった。

家計債務は可処分所得に対し105.7%と、前期の106.7%から低下した。家計及び非営利団体を合わせた場合も2015年10−12月期の104.6%を下回り104.1%だった。2007年のピーク時にあたる135%から大幅に低下した水準を保つ

――家計債務に占める割合は低水準でホーム・エクィティに比較的厚みがあるため、家計に消費ののりしろがあるということになります。米景気には好材料ながら、経済指標では鮮明になっているかというと力不足の感は否めず。下半期に加速する期待がある半面、新車販売台数が2015年ペースから鈍化気味で、順風満帆とは言えません。

また、家計ではなく個人ベースでみた可処分所得に占める返済負担の割合が上昇している点も気掛かりです。

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(作成:FRBよりMy Big Apple NY)

米4月卸売在庫までに発表された米経済指標は悲観論を払拭させ、上半期の成長率がそれほど悪くなかった可能性を点灯させるものの、個人消費がけん引して成長を押し上げるかには疑問が残ります。

(カバー写真:Sherwood CC/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年6月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。