僕がフローレンスというNPOを立ち上げてから、13年経ちました。
最初は子どもが熱を出した時に、誰も預かってくれないことで失業したお母さんを、なんとか助けたい、というところから始まりました。
結果として、日本で初めて共済・訪問型病児保育を始め、それが広がり、現在は日本最大の病児保育団体となりました。さらに、待機児童問題をなんとかしたい、と思い小規模保育を始めたのですが、今では小規模認可保育所という国の制度にもなり、全国1655箇所に広がりました。重い障害のある子を受け入れる保育園が全然ないことから、障害児保育園も始め、法改正へと繋がっていきました。
社員数400人。収入規模も13億円と、NPOの中では大規模になってきています。しかし、これで良いのかな、と自分の中で違和感が膨らんできました。
確かに自分達は、ゼロからそれなりに大きくなった。自分達のサービスも広がった。しかし、それで良いのか。それで本当に社会が「変わった」のか。
児童虐待は数を増し、ほぼ毎日どこかで子どもが虐待で死んでいる計算になります。子どもの貧困率は右肩上がり。障害児支援はまだまだインフラが足りず、いじめで命を絶つ子どもたちのニュースも、まだなくなってはくれていません。
まだまだ自分達の力は、全然足りない。インパクトには程遠い。このまま5年先、10年先には、おそらく規模は3倍だったり5倍だったりになっているだろう。けれど、それでは全く不十分で、日本全体の課題を解決することには、到底届かない、ということが分かったのです。
そこで出会ったのが、「コレクティブ・インパクト」というアメリカで提唱された考え方。確かにアメリカではTeach for America 等の予算数百億規模のメガNPOがごろごろ活躍しています。しかし、それで公教育の衰退が止まったのか、というと、そこまでのインパクトは与えられていません。彼らは単一の団体の成果を“Isolated Impact”(孤立したインパクト)とし、偉大ではあるが「足りない」と考えます。
複数の組織が、政府や行政、企業も巻き込みながら、数百万という人々を助けていくような、枠を超えた集合的なインパクト(Collective Impact)を与えていかねばならない、と議論と実践が次のフェーズに移行していたのです。
我々、日本のNPO・ソーシャルビジネスも、その次元に進まなくてはいけないのではないか。個別の団体で必死こいて頑張りながらも、しかしガチに社会課題の解決に向けて、企業や行政を巻き込みながら、桁ひとつ違うインパクトを出していかないといけないのではないか。
そうした問題意識をもとに、仲間たちと一緒に「新公益連盟」(http://www1.shinkoren.org/)を立ち上げました。
どこかの経済団体と名前が似ているのは、気のせいですw
でも、ノリはそれに近く、新しい公益の形を、我々で体現していこうよ、と。
新公益連盟(略して新公連)は、社会起業家/社会事業家と行政・企業の生態系をつくります。そこで自由で創造的なコラボレーションが生まれるように。(経営者合宿やイベントの開催)
また、新公連は社会事業家が相互に学び合う、トレーニングの機会を提供します。さらには、現場でイノベーションを起こしている人々同士でビジョンを生みだし、それを政治や行政に対して政策提言していきます。
我々は群として、社会変革の起点となっていきます。連帯に前向きな企業や経済団体、行政や自治体の皆さん。ぜひ、共に未来の日本を創っていきましょう。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2016年6月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。