日本経済新聞社の26~28日の世論調査で、内閣支持率が62%と今月9~11日の調査より4ポイント上昇した。60%台に乗せたのは2014年9月の内閣改造直後の調査以来。不支持率は5ポイント低下の27%だった。
日経は「安倍晋三首相が閉会式に出席したリオデジャネイロ五輪が盛り上がり、4年後の東京五輪への期待が政権の追い風になった可能性がある」と分析している。
だが、もっと大きな背景は「中国の相次ぐ領海侵入に対する国民の不安の強まり」と見るべきだ。そこから集団的自衛権を重視し安保体制に配慮する安倍首相への期待と依存度が強まっていると見るのが妥当だろう。
国民は、中国と戦争状態になることを望んではいない。だが、中国公船が毎日のように尖閣領域に侵入してキナ臭い状態が続き、東シナ海で中国と自衛隊が偶発的な戦闘状態に入る可能性が高まっていることを不安視している。
産経を除くと、日経を含め大手メディアはそのことへの配慮が不足し、そうした紙面を作っていない。「あまり中国を挑発するような紙面構成は望ましくない。冷静さが大切だ」と慎重かつ地味な紙面作りに腐心している。
だが、既に読者はその先を行っていると見るべきだろう。中国政府と中国軍がそうした行動をとっているからだ。
ネット上では「中国との交戦必至」「そうなる習近平政権や中国政府の事情」「もし戦闘となったら」といった記事やブログが増加しており(かくいう当ブログもその一つだが)、大手メディアよりもそちらに目をやる読者が増えているということだ。言い換えれば、大手メディアは読者のニーズに対応していない。
それはともかく、日経調査では、(日中戦争を望んでいない)読者が最近の中国の行動に腹を立てている。(日本政府は)中国に「もっと強い姿勢で臨むべきだ」が55%に上り、「もっと対話を重視すべきだ」(33%)を大きく上回った。
「強い姿勢で臨むべきだ」は内閣支持層で62%、自民党支持層も63%。さすがに民進党支持層や公明党支持層は「もっと対話を重視すべきだ」の方が多いが、無党派層では「もっと強い姿勢で」が47%で「対話重視」の40%を上回っている。
あまり国民がナショナリスティックになって戦闘姿勢が強まるのは望ましいことではないが、政府の「対中友好、協調姿勢」と国民の間にミゾ、温度差が広がっているのは確かなようだ。
それは日韓関係にも表れる。日本側が求めるソウルの日本大使館前に置かれた慰安婦を象徴する少女像の移転について、韓国は昨年末の慰安婦合意で「解決への努力」を約束したが、具体的な動きはみられない。それなのに日本は関係改善を促すため、元慰安婦を支援する韓国の財団に10億円を出すことを決めた。
少女像移転が進まない中での資金拠出に「反対」が49%と「賛成」の37%を上回った。内閣支持層、自民党支持層とも「反対」が52%と過半数を占め、無党派層も「反対」48%、「賛成」30%と批判的な見方が多い。
日本政府は先ごろ、緊急時に韓国に通貨を融通する通貨交換協定の再開に向けた協議の開始でも合意した。
韓国は李明博・前大統領時代に「日本に通貨を融通してもらう必要はない」と突っぱねた経緯があり、日本の財務省や金融関係者の心象が悪化。「通貨の融通などしてあげる必要はない」との声が日本側関係者の間に強まっていた。
簡単に再開してあげるのだとすれば、なんともお人好し。「だから、韓国は日本を甘くみて、舐めてかかるのだ」という不満の声が広がっている。
中国は9月上旬に中国・杭州で開く20カ国・地域(G20)首脳会議を開く経緯もあり、最近の対日侵略は下火になっている。
だが、それは一時的と見るべきだろう。日本の軍事的な防衛姿勢にスキが出れば、今後もすかさず侵略行為を始めるに違いない。
それへの対応を怠らず、軍事的な対応力を着実に拡充していかねばならない。韓国にも甘い姿勢は見せない。
今回の日経調査はそうした国民の意識を反映している。その意味では日経のアンケート調査は質問は今までよりも踏み込んだ良い内容になっていると評価する。