米9月消費者信頼感が予想より上昇、金融危機以前の水準を回復

米9月消費者信頼感指数、米9月マークイット・サービス業PMI速報値、米7月S&P/ケースシラー住宅価格指数をおさらいしていきます。

米9月消費者信頼感指数は104.1となり、市場予想の99を上回った。前月の101.8(101.1から上方修正)を超え、2007年8月以来と金融危機以前の高水準を達成。内訳をみると、見通し指数が87.8と前月の86.1から上昇し、少なくとも2015年9月以来のレベルに到達した。現況指数も128.5と、前月の125.3を超え景気回復サイクルで最高となる。

発表元であるカンファレンス・ボードのリン・フランコ経済指標ディレクターは、結果に対し「消費者信頼感指数は2ヵ月連続で上昇し、景気後退以来で最高を記録した」と評価する。現況指数をめぐっては労働市場を挙げつつ、見通し指数は「所得が上向いたもののビジネス環境は幾分中立的」と指摘。全体的に「消費者は緩やかな景気拡大を予想している」と結んだ。

消費者信頼感指数、リセッション前の平均値103.5も超える快挙。

(作成:カンファレンス・ボードよりMy Big Apple NY)

今回は現状の労働市場に対し「職が豊富」から「職探しが困難」を引いたDIは、6.3だった。前月の4.0を含め3ヵ月連続で続きプラス圏を維持し、2007年7月以来の高水準を達成した。以下は、結果の詳細。

ビジネス環境については、「良い」と「悪い」が低下
「良い」27.4%→前月の30.3%から低下、前年同月は28.1%
「悪い」16.2%→前月の18.2%から低下、前年同月は16.4%

労働市場については「豊富」が上昇し「困難」が低下、DIは3ヵ月連続でプラス
「職が豊富」27.9%→前月の26.8%から上昇、前年同月は18.1%
「あまり職が豊富ではない」50.5%→前月の50.4%から低下、前年同月は50.3%
「職探しが困難」21.6%→前月の22.8%から上昇、前年同月は24.9%

6ヵ月先のビジネス環境への見方は「良くなる」と「悪化する」が低下、後者は1年前の水準を漸く下回った。
「良くなる」16.5%→前月の17.6%から低下、前年同月は14.9%
「悪化する」10.2%→前月の11.4%から低下、前年同月は10.4%

6ヵ月先の労働市場への見方は「増加」が上昇し「減少」が低下したが、「減少」が12ヵ月連続で「増加」を上回る
「雇用が増加する」15.1%→前月の14.4%から上昇、前年同月は14.9%
「雇用が減少する」17.0%→前月の17.5%から低下、前年同月は15.9%

6ヵ月先の所得への見方は「増加」と「減少」が低下
「増加する」17.1%→前月の18.5%から低下、前年同月は13.1%
「減少する」10.73%→前月の11.0%から低下、前年同月は9.9%
「変わらない」72.6%→前月の70.5%から低下、前年同月は71.4%

購入見通しは、全て低下した。米9月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値と整合的である。自動車は11.4%と前月の12.3%から低下、住宅も前月の主5.1%と前月の6.9%を下回る。主要機器も49.2%と、前月の50.9%以下だった。

――消費者信頼感指数は予想外に急伸し、リセッション前の平均値を超えていきました。米8月雇用統計は芳しくなかったものの、米連邦公開市場委員会(FOMC)が据え置きを決定し金利上昇に歯止めが掛かったことを好感した可能性があります。ただし自動車や住宅など購入見通しは慎重寄りに傾いており、ヘッドラインが示すほど消費者のマインドはバラ色と言えないようです。

▽米9月マークイット製造業PMI速報値、前月から改善

米9月マークイット・サービス業PMI速報値は51.9となり、市場予想の51.2を上回った。前月の51.0も超え、7ヵ月ぶりの分岐点割れを回避している。総合指数も52.0と、前月の51.5を超えた。

クリス・ウィリアムソン主席エコノミストは、結果を受けて「サービス業は成長拡大を示すも見通しには慎重とまちまちなシグナルを点灯させた」と振り返る。特に雇用の鈍化について「米9月雇用統計・非農業部門就労者数が前月比12.0万人増程度を示す」と指摘。米7~9月期国内総生産(GDP)は「1%増程度にとどまる」との見方を維持した。

▽米7月S&P/ケースシラー住宅価格指数、2ヵ月連続で伸び鈍化

米7月S&P/ケースシラー住宅価格指数(季節調整前、20都市別)は前年同月比5.02%上昇の183.57となり、市場予想の5.10%を下回った。前月の5.11%(5.13%から下方修正)にも届かず。5%台の伸びを維持し3年3ヵ月連続でプラス圏を保ったものの、2015年8月以来の低い伸びにとどまる。季節調整済み・20都市別の前月比は0.01%の低下と、前月(0.07%の低下から0.01%の低下に修正)を含め4ヵ月連続で低下。市場予想の±0%に届かなかった。

季調済みの前月比では、上昇した都市が12となり前月の11から増えた。トップは3ヵ月連続でオレゴン州ポートランドで0.66%、2位はコロラド州デンバーで0.53%、3位はアリゾナ州フェニックスで0.48%となる。ワースト1位は常連の感があるイリノイ州シカゴで0.51%の低下と2ヵ月連続で低下、ジョージア州アトランタも2ヵ月連続で2位の0.58%の低下、3位も前月通りニューヨーク州NYで0.39%低下した。

――米連邦住宅金融局(FHFA)が発表する米7月住宅価格指数と同じく住宅価格の下落を示しました。新築住宅販売件数や中古住宅販売件数が前月から下振れしたように、購入動向が弱まっていることを反映。米9月消費者信頼感指数でも購入見通しが低下しており、住宅価格が再び力強く上昇するかは疑問が残ります。

(カバー写真:Paul Stein/Flickr )


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年9月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。