9月30日に日銀は国債買入をオファーした。対象は国庫短期証券と残存5年超10年以下、10年超25年以下、25年超。このうち残存5年超10年以下の買入予定額を4100億円とし前回の4300億円から200億円減額した。
日銀は9月21日の金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策を導入し、今後の金融政策の調節目標をマネタリーベースから長短金利 に変更した。短期金利については、日銀当座預金のうち政策金利残高かかるマイナス0.1%が目標となり、長期金利(10年国債の利回り)については概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行うとした。
買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。買入対象については引き続き幅広い銘柄とし、平均残存期間の定めは廃止するとした。
あくまで80兆円は目処であり、増減の可能性はある。これはつまり減ることもあるということであり、平均残存期間の定めは廃止することで、長いものを一定量買う必要はなくなった。目先については、超長期ゾーンの買入を減額することで、イールドカーブをコントロールし、スティープニング(より長い金利を高くすること)を狙った政策と捉えられた。
市場では月末の夕方、つまり9月30日の5時に公表される「当面の長期国債買入れの運営について」で、超長期債の減額があるだろうと予想していた。ところがそれを待たずに日銀は残存5年超10年以下の国債の買入をいきなり減額するという手段に出た。この日の10年国債の利回りはマイナス0.090%に低下していた。そして数日前にはマイナス0.095%にまとまった売りが入るなどしていた。
日銀の長期金利の操作目標についてはある程度の幅があると予想されており、市場はそのレンジを見定めようとしていた。その下限がマイナス0.1%であろうとの認識であったが、それが日銀が国債の買い入れを減額することで裏付けられた格好となった。しかし、なぜ夕方の「当面の長期国債買入れの運営について」にて減額を示して、10月から実施とするのではなく9月中に実施したのであろうか(このため、当面の長期国債買入れの運営についてで、残存5年超10年以下は前回、つまり当日減額された買入の金額からは修正はされない数字となっており、少し紛らわしいものとなっていた)。
10月4日には10年国債の入札も控えており、タイミングからも9月30日当日の国債買入で減額を示す必要性があったのか。それとも日銀が得意とするところのサプライズを狙ったのかはわからない。少なくともこれで長期金利の誘導目標の下限は示されたことは確かである。
ちなみに超長期債の買入については、10年超25年以下が一回あたり2000億円から1900億円に、25年超が1200億円から1100億円に減額される。ほかの年限での修正はなく(5年超10年債は9月30日にすでに減額済み)、これは見方を変えればテーパリングということになるが、市場はあまり動揺は示していない。日銀にとってはしてやったりといったところなのかもしれない。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年10月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。